舞台国カメルーン
赤道ギニア
あらすじ
中央アフリカに赤道ギニアという国がある。島側と大陸側に別れ、その島側に首都を持つ小国だ。一般にさほど名前の知られていないこの小国は旅行者の中では知る人ぞ知る「最強ワイロ王国」となっていた。余計な事を付け加えると赤道ギニアというネーミングの割りに赤道にはかすりもしていないという恐るべき国家だ。
カメルーンに到着し、ドゥアラから首都への空路潜入を計画し、それに併せワイロにも万全な対策を用いてこの「最強ワイロ王国」に挑むデューク東城、しかしそこに現れたのは予期しない強敵であった!!
果たして無事に赤道ギニアの首都マラボに潜入、そして脱出する事は出来るのか?
どうする!ゴルコサーティーワン!!
舞台マップ
第1章赤道ギニア・潜入作戦準備開始カメルーン
2005年9月15日カメルーンの地方都市のドゥアラに首都のヤウンデから到着した。カメルーン最大の都会であるこの都市を見たかった事もあるが、これとは別にもう一つ、重要な任務があった。
「赤道ギニア潜入」である。
ガボンから北上し続けてきた私には、ガボンから赤道ギニアの大陸側にはいり、そして首都マラボへ船なり飛行機なりで渡るという選択肢もあったが、ワイロ攻勢の噂を聞くにつれ、目的地は首都のマラボのあるビオコ島なので辟易するような大陸内の移動を避け、ガボンからカメルーンの首都ヤウンデに抜け、そしてここドゥアラへと任務初期の目的を達成すべくやってきたのだった。
ガボンで一度再会し、そして赤道ギニアの大陸側を陸路ぬけて来た「K氏(第6話アンゴラボーイ参照)」とヤウンデで再会した時に、彼はこう語っていた。
「移動距離は合計たったの200kmぐらいだったんですがその中で10箇所くらい検問があって荷物も4回完全に開封される念の入り様でしたよ!いちいち全部バッグを開けて中身を一つ一つチェックされましたよ!カメラを持っていたら確実にワイロを払わなければいけない所だったんですがこれをうまく隠したので何とか全部断りきれました。でも今迄経験した中では一番タチが悪かったですね...」
若干付け足しで説明するとこの「K」という男はこのプロフェショナルとは違い、「ワイロと戦いきれる男」でいままで全てのワイロを断り続けてきた男だ。既に120を超える国を7年間かけて周った彼には私の到底及ぶべくものもない程の経験が備わっていたが、その彼を持ってして「最悪」と言わせるその手法は「世界最高峰」と言っても過言ではないだろう...、登山なら世界最高峰にロマンを感じるかもしれないが「ワイロ」で世界最高峰なんてのは迷惑以外の何者でもない。
大陸側の移動を避けた、私自身の判断は正解だったであろう。首都のマラボに行くだけならこんな面倒な思いも出入国の一回ずつで済む事だろう。合計2回我慢すればいいだけだ。あの小さい国土で10回も嫌がらせをされてしまったら旅を楽しむ所では無くなってしまう!
ドゥアラに到着して早速フェリー(実際は貨物船)を探したが丁度前日に出発してしまったらしく長期戦は性に合わないのでフライトを決意する。滞在日数は2,3日もあれば充分だった。
ドゥアラーマラボ間はカメルーンの会社である「カメルーンエアラインズ(以下カムエアー)」とガボンの会社である「エアサービス」が就航していた。エアサービスは以前にガボンからサオトーメ&プリンシペにフライトした際に利用しており、行も帰りも3時間くらい遅れてしまうと言う体たらくであまり利用に気が進まなかった。カムエアーも良く遅れると噂はあったがどちらも遅れることに変わりはなさそうだし、それに料金はカムエアーの方が安かったので今回はカムエアーを利用する事になった。
それともう一つ、往復チケットを買うときは注意しなければいけない事がある。「ミニマムステイ」と呼ばれるもので、大体は最低1週間滞在しないと安くチケットが買えないという形になっている。ドゥアラーマラボ間も同様で一週間なら270?くらいだったがこの短い滞在では340?と70?近い差が現れていた。一週間滞在するべきかも検討したが、島国は大抵やることが無いし、それに宿泊費が高いとガイドブックにも書いてあったのでここは高くても仕方がないと諦めることにした。
往路9月14日、復路16日、2泊3日でチケットを押さえる。
日時は決まったから後は赤道ギニアの「ワイロ対策」の準備を入念にするだけだ。
私は「プロ」として通常心がける事は「雨の日の為に傘を持ち歩く」ように万端な準備をする事だが、今回は趣を異にしていた。敵は「ワイロ」だ。荷物検査対策を考え、また滞在日数も短いので小さいバックにさらに「最小限必要な物だけ厳選」して詰め込んでいく。幸い今泊まっている教会系のホテルは荷物預かりもしてくれるので大きなバックはここに置いて行けば良い。
一番気をつけるのは「お金」だ。今回は思い切って「トラベラーズチェック」を全額大きなバックの中に入れることにする。当然再発行に必要な「パーチャスレシート(購入控え)」は分けて手元に持つ。普段から分散こそしてはいても基本的には全額持ち続けるようにていた現金も今回ばかりは若し無くなっても何とか諦めのつく程度の額をこの大きなバッグの中に入れてしまう。さらに手持ちのお金を数箇所体に分けて、これは出入国検査時も隠し続けると言ったものや、小額紙幣を中心に「ワイロ時に使用用」等と言った物も準備する。これを日常使うお金や入国時の見せ金と分けて所持すると言う念の入れ様だった。
これで後は出発するだけだ...、赤道ギニアもこれで快適にやり過ごせるだろう...
第2章:予期せぬ“敵”
9月14日、出発は1600時だ。ドゥアラはタクシーの他に安価なバイクタクシーも一杯走っていいるが、ここはタクシーをホテルで調整してもらい。空港に向かうこととした。「赤道ギニア入国前」に精神を少しでも消耗させるような事は避けるべきだった。
空港には1400時に到着、国際路線は2時間前には空港に到着してチェックインを済ませてボーディングパス(搭乗券)を手に入れると言うのが定石だ。
しかし、なかなかチェックインカウンターは開かない。いつの間にか出発時間の1600時は過ぎてしまっていた。
「出発が遅れるのは予期していたから仕方が無い」
これは私の読んでいた事なので「驚くような事」では無かった。飛行機に乗車している時間は40分程度と短いので出発しさえすればすぐに到着するのだが、しかし余り出発が遅れてしまうと今度はマラボで大変な事になる。ただでさえ2泊3日の強行軍なのに、地理不案内のところに夜到着してそれからホテルを探すと言うのは中々に骨の折れる仕事である。空港タクシーも夜間料金で昼間の倍額以上はボッて来ることだろうしこちらは街に出て宿泊するしかないのでいくら料金が高くても利用せざるを得ない...、それに「赤道ギニア」の入国審査、こいつもちょっと厄介そうだ。外国人ということは一発で分かるし、「日本国籍」のパスポートは中央アフリカ諸国の役人にとっては「金の成る木」に見える事は間違いない。難癖をつけてきて「ワイロ請求」は常套手段だし、断るにしてもどのくらいの時間がかかるかは読みようが無い。
一番怖いのは拒否し続けて空港で入国拒否をされてしまう事だ。こうなったら私としても打つ手が無い。「正義」とやらが例えこちら側にあるとしたところで彼らには関係のないことだ。「彼らの気分」が彼らの正義であり、入国したいと考えてしまった以上は最初からこちらが劣勢である。
入国時刻の事を考え、ちょっと気を揉み始めて来た頃、既に時計は1800時を回っていた...
「随分と遅れる物だな、まあでも飛べばすぐだし、夜間到着はもう仕方ないのかな...」
と思い始めた頃、急に人の流れが出来始める。
「ようやくか...、しかし今から手続きして出発ならトータル4時間くらいは遅れるのだろうな、まあその辺りは仕方ないだろう...」
しかし、人の流れが少しおかしい、カウンターではなくカムエアーのオフィスの方に向かっている。これは何事かと思いつつもアナウンスはフランス語なので私には理解しようも無い、彼らの流れについていく事にする...
オフィスの中は現地人達の怒号で包まれていた!英語の分かるものを探し出し、そして事実を知り驚愕する。
「えっ??フライトキャンセルだって...!!」
一体全体どういうことなんだ??、この路線は週5便は飛んでいる筈だ。運行回数が多いと言う事は需要が見込まれており、彼らにとってもドル箱路線だろうに...、大体船を諦め料金の高い飛行機にしたのは「確実にそして迅速に目的地に到着する」事が目的だろうに...
それにフライトキャンセルなら帰国日も変更しなければいけなくなるしその手続きも必要だ。こいつは厄介な事となった...
人の怒号は中々に覚めやらず、銘々に思い思いの苦情をカムエアーのスタッフにぶつけている。中々割り込むタイミングが見つけられなかったが、それでもちょっと粘り、人が少しずつ諦めて帰り始めた頃を見計らって私もスタッフに陳情を述べようとして話しかけていった。
私にしても怒りたい気持ちはあったがここは冷静になるべきだ。怒っていい結果が得られる訳ではない。必要な事項を交渉すればそれで終わりだ。「フライトキャンセル」は「フライトキャンセル」、起こってしまったことは仕方が無い。まあ、通常の航空会社であれば出発時間が翌日にずれ込んでしまったら「代わりのホテルと次の出発までの食事」くらいは用意するだろう...
私はカウンターに手をかけて、徐に話し始める。幸運な事に彼は英語を理解した。
「フライトのキャンセルは分かった。仕方の無い事だ。しかしキャンセルによって発生した“損害”という物があるだろう、代わりのホテルへの宿泊と明日の出発までの食事を権利として要求する...、それに復路の日時も変えて欲しい、予定の滞在は2泊だ」
こちらの言い方は冷静で、言い分も当然のことを言ったまでだった。
「ホテルなんて準備はしない、乗客全部に対応したら幾ら掛かると思ってるんだ?そんな事はうちの航空会社ではやっていない、食事も同様だ!」
「はぅあっ...!?」
彼の対応は、カメルーン最大の航空会社、カムエアーの者としてはあまりに杜撰な物だった...
「日付の変更も明日だ、今日はもう出来ない...!!」
さらに彼は、投げやりに私に言葉を返してくる。
「あああ〜ん??今なんて答えやがったんだ???」
手前の都合でフライトをキャンセルさせやがっておいて何の保障もしないだとぅ...、私が航空券に支払った金額は340?、まあミニマムステイの条項があるからコイツはちょっと高いのだが通常の乗客であっても260ドルも支払っている。そもそもフライトしてたった30−40分の距離だ。この料金でも“高すぎる買い物”であることは明白だ。それに復路の日付の変更くらいここで出来なくてどうする...
しかし、ここで冷静さを欠くのにはまだ早すぎる。カムエアーとやらがいい加減な会社だと言う事は分かったが、このまま泣き寝入りする訳には行かない。若干語気は荒くなったが話を続ける。
「おいっ、あんたのいってる事は出鱈目だ。すこしは考えてくれ、こっちは既にいい金を払ってるんだ。便宜を図るのは会社として当然だろうが。それにな...」
私がまだ話している途中だった、彼は面倒くさそうに「そんな事は出来もしないししやしない」という表情を私に見せ、もうあっちへ行けとジェスチャーで示してきた。
「てってめえ〜!」
これには当然激怒してしまう。こちらの要求が呑めないにしても誠意のある対応をするべきだろう。それに彼は「フライトがキャンセルになって申し訳有りません」という常識的な一言すら未だ口にしてすらいなかった。
机を乱暴に叩き、私から遠ざかるようにし始めた彼に大声で食って掛かる。もう冷静さなどは必要ない。この私の「怒りに燃え滾るこの熱き血潮を静める」のはヤツの「誠意ある応対」しかなくなっていた。
英語で考え付く限り罵詈雑言を浴びせ始めると、彼は今度は完全に私を無視し、テーブルを挟んだ私が近づく度に私から逃げていく...
「もーう我慢の限界だ!」
胸倉でも掴んでやろうと意を決して飛び掛ろうとすると横から男が割り込んで私を制してきた。彼も英語が喋れる男だった。
「君が怒るもの無理は無い、でも冷静になってくれ、ここにいる皆ももう諦めているんだ...」
「ちっ...」
私は一度激怒したところに機先を制された形となり、気を削がれてしまったので、もう一度冷静になり考え直す。しょうがない、ホテルや食事は自腹だ、でも次のフライトの予定くらいは分かり次第電話連絡してもらえるだろう。
気を取り直し、メモに電話番号と宿泊しているホテルの記入をする。そしてスタッフの所にもう一度近づく。
「カムエアーが碌でもない会社だと言うのは良く分かった。ただ俺はいまさらこの航空会社をキャンセルするつもりもないし、まあ次の便に確実に俺を乗せるならそれで泣いてやる。ただ出発時刻ぐらいは俺に電話で知らせるようにしろ」
そう言って手にしたメモを渡す。彼は「仕方が無いな」という表情をして私のメモを見て、そしておもむろに机の上から新しいメモを取り出し私に何やら書いて渡してくる。
「出発時刻は明日の朝の8時には分かるだろう。だが客が多すぎて電話を一人一人駆けて対応する事は出来ない。この電話番号に掛けて確認しろ」
「...???」
「誰か教えて?」
「サービスっていったい何???」
これには怒る事も忘れ、呆れ果ててしまった...
しかし、それにしても...、一体なんだこのカムエアーという会社は...
オフィスから出てしょうがないので市内に戻ろうとするとポーターがやって来る。
「アンタ明日の便になったんだろう。お前さんの名前をここに書いてくれ。明日はビジネスクラスに乗れるように取り計らってあげるよ」
うーん、オフィスの役人よりもこの変哲の無いポーターの方が物の通りが物分りが言いというのはどういうこと何だろう。まあでもいい、折角だから「海外初ビジネスクラス」と洒落込んでやろうか...
「本当にいいのかい?」
私の問いかけに返ってきた答えは出鱈目な物だった。
「ああ、本当だよ、でも10000セーファー(約2000円)俺に払うんだ...」
「へっ...!」
もう一度考えてみよう。
フライトをキャンセルにしたのは誰がどう考えても“カムエアー側の過失”である。さらに言えば何の保障もせず、しかも次のフライトの時刻を客に電話して連絡するといった初歩的な感覚さえ持ち合わせていない。ただでさえフライトキャンセルによる金銭的な損害が私に発生していてその事も含めて激怒している私にした提案が「10000セーファー払わせる」というふざけ切った事なのか...
当然のことながらそんな提案は即時に却下する。
もうこんなドタバタは嫌だと思い、空港に入っていた「エアサービス」の方に行き便を確認すると日程が上手くつきそうも無かったし、それに今の応対を考えると「カムエアー」を完全にキャンセルしたところで「航空代金の払い戻し」などという常識的な要求は「夢のまた夢」であろう...、「カムエアー」を選択してしまった以上は、コイツと心中するより他は無くなってしまったらしい...
空港の外に出て今度はバイクタクシーをせこく値切って捕まえてホテルに戻る。
「赤道ギニア」という大敵と戦う前に先ず「カムエアーなんていう航空会社と戦う羽目」になろうとは...
しかしそれにしても何たる出鱈目か!
「ディスイズアフリカ!万歳だ!!」
第3章そして出発!
翌15日、朝早く起きる。電話でも掛けてみるかと考えはしたものの、そもそも仏語は分からないし若し朝出発するならこのまま行って待った方が安全だ。
バイクタクシーを飛ばし空港へ行く、20分ぐらいの距離だ。空港でオフィスへ行くと昨日の男のスタッフはおらず、女性のスタッフが一人、そこにいる。
出発時刻を確認すると1500時か2000時の便の2つが予定されているという答えだ。どっちの時間にしても空港で待つにはちょっと長いので街に戻らなければいけないし、街に戻るならちょっとのんびりしてゆっくりしてからでいいだろうと2000時にチケットを変更してくれと頼むと今度は簡単に受け付けてくれた答えてくれる。まあ尤もな事だ。復路の日時もここで変更する。当初の予定を1日遅らせた17日に変更、これで2泊の予定に戻った。
時間が早かったので一度また市内に戻る。取り敢えずは昼ごろまではネットカフェで時間でも潰せばいいだろう。1200時頃、ちょっとネットにも飽きてしまい2000時に一度チケットを変更したが1500時でも問題ないし、かえってこちらの便に乗れた方がマラボでもゆとりが出来ると考え始めていた。今まで忘れていたが、ここで一つ気付いた事があった。私の宿泊していた安宿の近くには「アクワパレスホテル」という高級ホテルがあり、そこには「カムエアー」のオフィスがあったのだ。ここで一度確認してみよう。
オフィスに入ると男がいて私の応対をする。この男は中々にいい男で好感が持て仕事振りもしっかりしていそうだ。
「2000時に変更したチケットを1500時に変えて欲しい」
と要求すると、彼は「分かった」とは答えたものの、やけに自信たっぷりとこう言ってきた。
「まあ聞いてくれ、1500時の便は間違いなくフライトキャンセルになる。2000時の便だけに今日はなるだろう」
「えぇ〜!!」
しかし朝2便と言っていたのにこうも簡単にキャンセルされるものなのか?彼に一応確認してみてくれと頼むとてきぱきと端末を操作する。ディスプレイでは確認出来なかったのか、携帯を取り出し空港に問い合わせて確認する。日本では当たり前の対応だがここはカメルーンだ、この対応の良さは驚くのに値するほど素晴らしいものであろう。空港とやり取りして、彼は私に笑顔で答えてくる
「俺の言ったとおりだよ!1500時のフライトはキャンセルだ。今日飛ぶのは2000時だけだぜ!!今日はキチンと飛ぶから安心して空港に行ってくれよ!!」
このスタッフは凄い奴だ!何と言う読みの鋭さ、フライトキャンセルなどという予期できない出来事を的確に予想してくるとは...
いやっ?待てよ!騙されている場合じゃない。社員でありながらフライトキャンセルは当たり前という事に慣れきってしまっているのも問題あるだろう。笑顔で自分の読みが当たったことを乗客に語っている場合でもないんじゃないのか?日本ならここは怒ってもいいポイントだろう!!しかし彼の満面の笑顔には参ってしまって怒る気も失せてしまった。
しかし、朝2便あった筈のフライトが午後には1便に減ってしまうとは...
これじゃあ単なる「確信犯」だろうが...
調べてもらった礼を言い、もう既にやることも無かったが仕方無しにネットカフェで時間を潰す事にした...
空港には少し早く1730に到着、昨日「ビジネスシート」を提案してきた男が目ざとく私を見つけて「ジュースでも奢ってくれよ」といってくる。何にもしないでたかってくるとは...仮にもドゥアラはカメルーン最大の国際空港であるのに...、この男の羞恥心というやつは、どうやら“母親の体内”に置き忘れて生まれてきてしまったらしい...、それにしてもイライラさせやがる...
2000時と聞いていたが結局ボーディングチケットを手にして中には入れたのは2030時、ようやく目にしたカムエアーは如何な物かと思って窓から私の乗る機体を眺めると、カムエアーの筈なのに「ユーゴスラビア・エアラインズ」ともうすでに無い国のペイントがそっくりそのまま残されている。しかしペイントすら変えていないと言うのは「整備不良」の可能性も大きいが大丈夫なのだろうか...??
結局出発したのは予定より一時間遅れた2100時であった。今迄の経緯を考えると私にとっては昨日の1600時から数えて実に29時間遅れの出発となった。
※機中から撮影したドゥアラ国際空港、大きくていかにもしっかりしてそうなのだが...
第4章ワイロ王国「恐怖の赤道ギニア」赤道ギニア
赤道ギニアの首都マラボには2130時に到着、飛行機から降りてイミグレへ向かう、小さいながらも新築の空港は見た目はしっかりとしてそうだが「器が良くても中身は最悪」を想像して対処するべきだろう。外見に騙されて油断などしてはいけない。ここは世界に冠たる「ワイロ最強王国」だった...
カウンターに並び、私の順番が来る。パスポートをガラス越しに手渡し、そして入国スタンプが押される。これから彼のとる行動は決まっている。私のパスポートはここで一時人質になるだろう!後は幾ら請求してくるかだ!!最初の1回目は当然拒絶してやる。2回目以降は相手を見て考えよう...
そして入国スタンプが押されたパスポートはそのまま...
私の手元に返される...??
係はジェスチャーで「次の所に行け」と示してくる...!!
「へっ...??」
「何か忘れているのでは...??」
そして次は税関だった、係が私を見る。ここを無料で通過出来る訳が無い!
「イミグレでは何も仕掛けてこなかったが、ここで一括ワイロ徴収か...、そっちは効率的なつもりだろうがアコギなやり口だな...」
そして背中にしょっていた小さいナップザックを下し、荷物検査のカウンターに置こうとする、見られて困るものは何も無い、まあ「世界最強といわれるお手並みを拝見」してやろう...
係が私に近寄ってくる、戦いはいよいよ目の前だ!良しとばかりに荷物を開けようとすると...
係は簡単に持っていたチョークで印をつける。
そしてジェスチャーで出口を指差し「そのまま行け」と伝えてきた!!!
「....????」
「うむぅう〜!空港では何も仕掛けてこないのか...!!これはこれで良い事だが、それにしてもあれだけ完璧に準備してきたのに...」
やけにあっさりと入国が果たせてしまい、かなり拍子抜けしてしまう事となった...
結局、赤道ギニアの首都マラボや1箇所訪れた地方の町では何も起こらなかった。ホテル代が他の国なら10ドルも出せば良いようなロークオリティーの宿ですら30ドルもしてしまうと言う物価の高さにこそちょっと泣かされたが、着いた翌日に「赤道ギニア国内旅行及び写真撮影許可証(写真に関しては撮影禁止地区も多く、注意された事も数度あった)」を40ドル出して取得した事も手伝い、伝え聞いて大陸側とは“雲泥の差”といってもいいくらいに何事も起こらなかった...
まあ通常の旅行では“何事も無いのが当たり前”だが“何事も無い事にビックリする”という場所に来ているというのは何ともやるせないような不思議な感覚だったが...
そして17日、カメルーンのドゥアラへ、出発の日がやってきた...!
第5章:予期せぬ敵、再び・・・
ドゥアラへのフライトは1700時、市内をひとしきり歩いて時間を潰し、余裕を持って空港に向かう。2時間以上前には到着
空港へ向かう途中、贅沢にタクシーで!
「前回の事もあるし、どうせ遅れるんだろう...、まあでも万が一予定時刻通りに出発したら間に合わなくなるからな...」
そう考えて、空港のチェックインカウンターに向かう、入口の警備員にチケットを見せる。警備員は私のチケットを眺め、ちょっと待てと示して他の男を呼んでくる。
「何かあったらしい、まあこっちの読み通りに遅れるんだろう...」
上役である男が私にこう言ってきた!
「ドゥアラへのフライトはキャンセルだ!明日また来い!!」
「へっ?そんなのってあり??」
まあでも仕方が無い、しかし2度もこんな出鱈目を...、そうだ!空港ならカムエアーのオフィスが有るだろう!!
私は彼にじゃあ「オフィスを案内してくれ、次の便の出発時刻も確認したいし、それに変更の手続きをしなければならない」と説明する。しかし彼の答えは芳しくないものだった...
「君には悪いがカムエアーのオフィスはここに入ってない、街にあるからそこで確認してくれ...あと、出発時間も空港では分からないからこれも街で確認してくいれ...」
うーむ!こういったことなら仕方が無い、しかし隣国の空港にオフィスすら設置していないとは...!それにしても次便の出発時刻くら空港に伝えておかなくてもいいのか??
空港を出て、街へ出てオフィスへ向かう、オフィスの前に立つと...??
「おっお休み...」
ドアの前に次の便の予定がA4の紙にマジックで書かれているだけだった...
まあ次の「出発可能性時刻」とやらが分かったのは“収穫”だが...、しかし、それにしても...
「俺のこの怒りの行き場がどこにもねえ〜!!」
また泊まりなおした宿でやるせなく飲んだコーラ風炭酸飲料
第6章:そしてドゥアラへ!
翌18日も空港に2時間前には到着、出発予定は1500時だ。
今度は意地になって歩いて行った、でも途中でヒッチしてもらえる幸運付だった!
1400時にチェックインカウンターが開き、ボーディングパスを入手する。いい案配だ!しかし、カムエアーの飛行機がここに到着している気配はない。
そのうちに出発予定時刻が過ぎていく...
またしてもかと思い始めた1600時過ぎにカムエアーが到着。ようやくだ。1630時に機内に入り、1730時に本当に出発!昨日の出発予定時刻から考えると実に24時間30分遅れのフライトであった...
※機中から撮影したマラボ国際空港、小さいけどキレイ...
飛び立った直後、見事な熱帯雨林、本で知っていたビールの「トラント・トロワ」があったのでつい・・・
カメルーン
カムエアーはカメルーン領内に入り、やがてドゥアラが近づいてくる。
ドゥアラに近づいてからとった景色
ドゥアラには1800時に到着、すぐに街へ向かい予約していた教会系の安宿へ行き、予約がずれた事を謝ってから今日のベッドを確保する。
ベッドの上で煙草に火をつけ、天井を眺めつつ、この今回の「赤道ギニア行」を振り返る...
流石は「ワイロ世界最高峰」を誇る赤道ギニア!私は予定を行きも帰りも狂わされたので初期の行動予定は台無しだ。その上出費も馬鹿になっていない。この「プロフェッショナル」をもこうも苦しめるとは...
赤道ギニアのその凄さをちょっと分析してみよう!
「ワイロ請求一つしてこなかった空港」
「許可証さえとれば何一つ問題なく行動できる事」等々...、
ん??赤道ギニアでは何も無いぞ!何でこんなに苦労したのか...??
「ハッ!!」
「そうか!すべては...」
「カムエアーだったのか...!!」
今なら私には「2002年の日韓ワールドカップでカメルーン代表の到着が遅れた訳」も良く分かる!!「カムエアー」あってこその仕業に違いない...
恐るべしは「カムエアー!」私にとっては「予期せぬ最大の敵」であった...
私は今回の旅をこう結論付ける。
「こんなクソ会社、2度と使ってなどやるものか!!」
そして「そう言えばもう乗る機会も無い」という事にも気付き、
「リベンジの機会すらない、一方的な敗戦であった」
という情けない結末を迎える事となった...
あとがき
今回の戦いをこうして記録に残したところで、こう思う
タイトルにこそ「ドッグファイト(空中戦)」とつけていたものの、実際は「空中を飛ぶ前の戦い」だけであり、今回のこのネーミングは「完全に名前倒れ」のものになってしまったと...