帰国後に記事を書いているため、実際のアップ日は2017.11.27となります。
あらすじ
南太平洋の「秘宝」、ポリネシアの魅力が凝縮したと言われるクックアイランドは、この辺りに良くある島国の一つに過ぎないただの箸休めの滞在の筈だった・・・
だが、ニュージーランドとの自由連合制を採り、国連加入せず、ここを承認している国家も僅か三十数か国という準国家といった方が適切なこのリゾート国家には、このプロフェッショナルの予期せぬ罠が仕掛けられていた・・・
「キャプテン・クックの亡霊」
彼の鋭い虎口から、果たして無事に脱出する事が出来るのか?
どうする?ゴルコ・サーティーワン!!
クック諸島概略
クック諸島
基礎データ(2017外務省HPより抜粋し一部加筆)
1.面積:約237平方キロメートル(鹿児島県徳之島とほぼ同じ)、ニュージーランドの北東約3,000キロメートル、フィジーとタヒチの間に位置し、15の島々より成る。
2.人口:約18,600人(2014年、アジア開発銀行)
3.首都:アバルア(ラロトンガ島)
4.民族:ポリネシア系(クック諸島マオリ族)81%、混血ポリネシア系15.4%
5.言語:クック諸島マオリ語、英語(共に公用語)
6.通貨:ニュージーランド・ドル。※クックアイランド・ドルもあり、硬貨はこちらも使用可能。紙幣は3ドル札があるがほぼお土産用
尚、今回の通貨に関しては実際レートではなく、私の引き出し手数料など考慮したうえで分かりやすく1ニュージーランドドル(以下NZ)=80円とします。
※クック諸島は国連に加盟しておらず、国家として承認していない国(30数か国程度が承認)も多いが、日本は、2011年3月25日、クック諸島を国家として承認しているので厳密なプロフェッショナル審査(単なる気分)の上、国家として計上しています。
第1章:タイムマシーンに乗って・・・
2017.11.05(日)
ニュージーランド
夜0時を回ってしばらくたってから寝たので、少し辛かったが朝05:30時には起き、06:10時にはチェックアウトする。如何にもビジネスホテルといった感じで気に入っていたキウィインターナショナルをこんなに早く後にしなければいけないのは残念と感じるが、フライトは待ってくれない。ホテルを出て通りを挟んだ所にスカイバスの停留所があるという非常に恵まれた立地条件が勿体無さを更に際立たせていた・・・
空港まで、途中で朝日が上がったが、何もこんな時間にホテルを出なくても・・・
ニュージーランド航空のセルフチェックインを済ませ、ロビーへと向かう。入国時に比べれば出国時はスムーズとは言わないまでもだいぶマシといった所だろうか?
次の目的地はクック諸島の首都アバルアのあるラロトンガ島だ。クック諸島と言えば人口は2万人に満たない小国だ。要はニュージーのように街を歩けばジャンクに当たるといった世界的なバーガーチェーンは望むべくもないだろう。
幸いにして出国ロビーにはバーキン(バーガーキング)があったので、そこで市内よりもやや高い(多分値段は変わらないけどセットで選べる物が限られているので)バリューミールを頼んで食べ、フリーWi-Fiでネットをしている内に出発の時間となった。
バーガーキング
空港のロビーと直結させず、歩いてタラップを登って乗るNZ46便は想像以上に混み合いほぼ満席だった。目的地のクック諸島がリゾート地と感じる瞬間だ。飛行機は予定通り08:10時にオークランドを離陸、ラロトンガまでは約4時間のフライトだ。
ラロトンガ行、NZ46便
クック諸島
2017.11.04(土)
時差の関係もあり、フライトは15時頃ラロトンガ国際空港へ到着。174ヶ国目の始まりだ。
オークウッドは曇りだったのにここはまたしても雨、雨を私がストーカーしてるのか?私が雨をストーカーしているのか?だんだん分からなくなって来たが、あまり良い兆候とは言えなかった。
ラロトンガ国際空港まで
簡単な入国審査をあっさりと終え、空港ロビーに出たら直ぐに職員である事を示すネームカードをつけた空港の女性スタッフが「どこに泊まるの」と声を掛けてくれる。「セントラル・モーテルだよ、迎えに来てくれるとメールもあったよ」と答えると、「あらそう、今来てないみたいだからあっちで座って待っててね」と案内される。
だが、徐々に掃けていく行く他の旅客を尻目に、中々迎えは現れない。セントラル・モーテルのある首都のアバルアまで4kmも無いから歩いても一時間はかからないが、すれ違いも怖いので再度空港スタッフに問い合わせると、「あらっ、それなら私が電話してあげるわよ」と親切に掛けてくれて、待合ロビーに出てから50分程度は待ったが無事に迎えと合流を果たす。
「いやぁ~、明日だと思ってたよ、実はオーナーとして1週間ばかり前に代わったばかりで申し受けも明日だと言ってたから勘違いしてたよ、ごめんね」
と素直なお爺さんに好感が持てたので、待たされた不満もたちどころに解消する。
途中で日曜なのですぐ閉まるからとスーパーに寄ってくれ、そこで水分を買い込み首都の中心部にあるモーテルへは16:00時に無事にチェックインを済ます。ロッジは2階建てで最初下の階を案内されたが『値段がもし同じで、今空いてたらでいいから』と2階をリクエストすると鍵束の中から「じゃあここで」と14号室が割り当てられた。さらに自転車借りようと『レンタサイクル屋を教えて』と聞くと、「そこに立てかけているのは使ってないから君の自由にして良いよ」とどこまでも親切だった。
セントラル・モーテルと借りた自転車。
ラロトンガ島は全長約32km、自転車で簡単に一周できる距離だ。初日にここまでセットアップ出来ればそれは最高の成果だった。
『今日はどうするかな・・・』
もう夕方に差し掛かってる。部屋で一通り荷物をバラし、街用にサブバックをセットし直している時、私はある違和感に気づいていた・・・
『待てよ・・・』
慌てて時計を見直す、私がオークウッドを出発したのは確か11/5日の筈なのに、今は11/4日を示している・・・
『???』
『そういえば確かオーナーは明日と思っていたと言っていたが・・・』
そう、日付変更線のいたずらか?NZ46便は過去に戻るタイムスリップでもあったのだ!!
『なっ、なんて言うことだ・・・』
さっき日曜だと思っていたが、今日は土曜と言う事なのか?少し頭を落ち着けて考えてみよう。今日は11/4日、その11/4日というのは私は既にウェリントンで終わらせた一日だ。そしてオークウッドを出発したのは11/5日!
と、なると・・・
11/5日まで生き抜いたこの私が11/4日に何があっても死ぬことは無い。
と、言う事だ・・・
『お、おぉぉぉぉ~!』
今の私は”時をかける少女”・・・、もとい、”時をかける少年”・・・、ちょっと違う気もする。”時をかける中年?”・・・、響きは良くないがこんなものだろうか?
それに何だか少し若返ったようだ、ここ1、2年頭を悩ませてきた肩や首の痛みも少し和らいだ気がする・・・
もう少し考えるのなら、猛烈な勢いで地球を反時計回りに周れば、1周毎に1日戻れるからどんどん若返りも可能だろう。ただ、知性的な私の頭脳が、残念ながら現在の科学力では24時間以内に反時計回りに地球を1周するのは難しいので、そこまでの願いは叶わないと伝えている。だが、これもそう遠くない将来に実現されることなのだろう・・・
何れにしても11/4日を既に生き抜いてきた私には、今日11/4日の無敵と不死身は確保されているのだ。外が雨だろうが槍だろうがなんの関係も無い、私は自転車での島の一周を早速敢行することにしたのだ。
そしてこの時はまだこれがクックの仕掛けた罠だとは・・・
知る術もなかった・・・
第2章 トラベラーズ・ハイ
クック船長、18世紀の有名なこの探検家は私が説明するまでもないだろう。ここクック諸島も発見した彼の名に因んでいる。余談ながら有名な「掛け算九九」も命名の由来は航海術を極めたクック船長に敬意を表して付けられたという事だ。ただ、そんな彼が首都のある現地で「ヌク・テレ(浮く島)」と呼ばれたこのラロトンガ島を発見出来なかったというのは歴史の皮肉と言いうものなのだろうか?
島内の景色
出発したときは既に16:30時を過ぎていた。
雨の中、それも自転車というのは賢い選択とは言えないが、実はオークウッドで調べた天気予報では私の滞在する3日間の全てに雨マークがついていた。明日快晴となって楽に周れる保証などない。それにそもそも私は遊びや物見遊山でここにいるわけではない、観光しに来ているのだ。雨やスタート時間の遅さは言い訳にならない。ダイエットのためのシェイプアップベルトもしっかりと締め、雨が止んだ時のことも考えてモンスターもサブバックに入れてきているのだ!
島の1周が32km、となると休まず漕げばかかっても2時間程度だ。日没には間に合うだろう。
途中で見た海岸
たが、当初写真を撮りながらだったので、予想以上に時間がかかってしまっていた。
『このままでは日没までというのは厳しいのかな?』
朝からの移動と、自転車をこぎ続けた事で徐々に疲労が溜まっていた。そしてこの事が私の新しい扉を開いていく・・・
”トラベラーズ・ハイ”
ランナーにランナーズ・ハイがあるように、旅行を続けているとこうした状態になることは珍しくない。朝早く起きてずっと移動して来た結果、若返って不死身になるなど通常ではありえない体験をしている時なんてのは特にそうだ。体内に溢れ出す脳内麻薬のエイドリアンが私の無敵をさらに加速する・・・
疲労を1段階通り超え、ペダルを漕ぐ足にも力が入る。
今の私なら月にだって飛べるだろう・・・
ほぼ一周近くとなった空港沿い
後もう少しで1周といった所で日が完全に暮れていた。街灯の少ない、雨の降っているこのラロトンガで自転車のままでいると事故にあう危険もある。空港からモーテルに行く途中に見たお店を目にした私は、安全を考えてそこからは自転車を押して歩くことに切り替えた。
夜になって強くなってきた雨が容赦なく体を濡らす。上はゴアテックスのレインジャケットを着ていたが、下は普通のトレッキングパンツだった。靴はゴアテックス製だが、既に中は水浸しになっているので、却って水入りのバケツを履いて歩いているようなものだった。そして雨の中歩いた事によって体温も徐々に低下していく・・・
『そういえばお腹もすいてきたな・・・』
最初に寄ったのはピザ屋だった、早くシャワーを浴びたいと思って持ち帰りのペパロニを頼むと「40分かかるけどいいかい?」と聞かれたので、そんなにかかるなら諦めてマルガリータにするよと答えると、待ち時間は同じだよと。それはそうだ、ペパロニが40分でマルガリータが10分ならその差の30分は買い出しにかかる時間だ。そんな事も直ぐに気付かないほど知らず知らずの内に消耗していたのだ。
待ち時間の長いピザを諦め取り敢えずガソリンスタンドのキオスクで、お菓子を買いまくる。最悪はこれで良いだろう。
昼見る景色と夜見る風景は変わる、思いのほか宿は遠かった・・・。
そして眼鏡に雨が当たり視界をどんどんと妨げていく・・・
『くっ、この東城をなめるなよ!!』
私は既に今日を生き終えている、どんなことがあろうと死ぬ訳がない。
『は、覇極流 心眼・・・』
余談ながら私は旅行中音楽を聴いたりなどは一切しない、現地が奏でる街の音、風、空気の微かな揺らぎ・・・、それを五感で感じる為だ。旅は自分をミニマムにする。必要最低限の装備に身を包んだ私がその能力を最大限に発揮するのは闇の中だ。
街灯の明かりでわずかに見える道を、この研ぎ澄まされた感覚で歩いていると、突然遠くから光が差してきた。
『そう言えばオーナーはここのチキン屋は夜も開いていると言ってたな・・・』
宿に最寄りのチキン屋の明かりが、その時のプロフェッショナルにはパリの灯だった・・・
チキン屋さん
宿が手に取る距離に近づいた安心感、ピザこそ外したが晩飯はチキンだなと店へ向かう。
『これでもう着いたも同然だ・・・』
降りしきる雨に濡れる身体、雨に濡れて前方の視界が妨げられた眼鏡を掛け、自転車を押しながら大通りを渡ってその店に近づく・・・
その時突然・・・
世界が消えた・・・
第3章 サウスパシフィック・ダイビング
ヌク・テレ(浮く島)の名の通り、一瞬身体が宙に舞うような感覚の後、私が最初に目にしたのは深淵だった。
そして体に鋭い痛みが走る。
『ぐっ・・・』
次に気づいたのは私が何かドブなような物の中に俯せになって倒れており、身体の半分が石ころだらけの水に浸かっていたという事だ。
太公望も筆の誤り、猿も木からフォーリンラブ。このプロフェッショナルとしたことが、どうやらどこかに落ちているらしい。
身体は?
幸いにして水深は浅い、ふくらはぎの下側まで浸る程度だ。そこで立ち上がって手足を動かしてみる、どうやら機能に問題は無いらしい。そして徐々に暗闇に慣れた頃、私が誤って用水路に落ちたらしいと判明する。手を上げて地面をなんとか掴めるぐらいの所なので落下したのは2m程度だろうか?
しかし、さっきまで月まで飛べる気でいたのに、まさかダイブした先が用水路とは・・・
『!』
ZATの防水カバンに入れいているとはいえ、背負ったモンスターが心配だ。身体の傷は時間が癒してくれるが、一度壊れたカメラは元に戻せないし、モンスターは防水ではないのだ。自分の身体より先に背負っていたサブバックを上げ、そして自転車も持ち上げて地面に戻す。
後は私がそこから上がれば良いだけだ。
だが、もう一つ何かが足りない・・・
雨の中、良好過ぎる視界が目の前に広がっているのが分かった時、私はある事に気づいた。
『眼鏡が吹っ飛んでる!!』
慌てて暗闇の水の中を探すが、なかなか見つからない。しばらく探しているとチキン屋のスタッフらしき女性がわざわざこちらに駆け寄り、「どうしたの~?」と聞いてライトを向けてきたので「眼鏡を落として探しているだけだから大丈夫だよ!」と強がって、というよりも落ちたとはみっともなさから正直にも言えず。しばらく彼女の照らしてくれている明かりの下で探してみたがそれでも見つからない。ちょっと申し訳なくなったので、「後は大丈夫だよ」と言って彼女が戻るのを見たとき、自分もライトを持っていることを思い出した。
『いつも十全の準備をしているのにこんな時にそれを忘れているなんて・・・』
再度サブバックを手に取り、中のヘッドランプを出して頭につけてしばらく探してみるがやっぱり見つからない。
『・・・保険はおりるだろうな・・・』
一旦諦めて川から出ることにした。
腰から下はずぶ濡れでもうどうしようもなかったが、上半身はレインジャケットのお蔭でそれほど酷い有様ではない。ポケットの中のグロー(電子タバコ)が無事だったので、取り敢えず一服する・・・
眼鏡はいつでも予備はある。だがこのまま諦めて良い物だろうか?
ひとしきり落ち着けたのと、どうせもう濡れているからと私は再度用水路に浸かって探してみることにした。想像以上に石が多く、よくこの程度の軽傷で済んだと感心しながら、暗調応のお蔭で大分目が暗闇に慣れた事と、十八番の心眼を駆使し、ヘッドランプを使いながら探すこと3分程度だろうか?
眼鏡は奇跡的に私の手の中に戻ってきた・・・
ちなみにこの中で探してました、我ながら良く見つけたと思います
『ふぅ・・・』
暗闇過ぎてこれ以上は何も分からないが、多分これで失くしたものはないだろう。
ようやく晩飯だなとチキン屋にいくと「見つかったの~!」とお姉さんが聞いてくれたので『うん、気にしてくれてありがとね~!』と笑顔で答える。身体は機能的には問題は無いが、擦り傷以上の負傷をしている確信があったので、持ち帰りを頼んでモーテルへと戻った頃、既に夜の20時になっていた・・・
とりあえずシャワーを入念に浴び、傷を確かめて薬を塗っていく。全くの暗闇の中落ちた割に軽傷で済んでいるのは自転車が最初のクッションになったおかげと、巻いていたシェイプアップベルトが腹部を守っていたことも少しはあるのかもしれない。これからは旅行をするなら必ずダイエットもセットにしよう。
傷の様子。左足に数か所擦り傷があり、また左手に1cm程度石で切ったような少し深い傷があった程度。勿論打撲の痛みはある。
買い込んだお菓子
しかし、プロフェッショナルと呼ばれるエレガントなこの私が、いくら多少の疲労があるとは言え、このリゾート地でも全くするつもりの無かったダイビングを初日雨の中いきなり強いられる羽目になろうとは・・・
不死身で無敵な筈の今日、まさかの怪我というアクシデントは、この島を見れなかったキャプテン・クックの亡霊が、この私に嫉妬して起こした悪戯なのだろうか・・・
まんじりともしない状態で夜を迎えベッドに入った時、既に日付は11/5日になっていた。
眠りに落ちる私に、亡霊と思えるキャプテン・クックの笑い声が聞こえてきた。
そう
「クックっクック・・・」
と・・・
第4章 ニュースタイル
2017.11.05(日)
11/4日という昨日を2度生き抜いた後、ようやく今日がやってきた。
身体の痛みを引き摺りつつ起きた頃、時計の針は10:30時を指していた。
ただ、昨日既に島一周を終えていたので急ぐ理由もない、幸いにして雨も止んでいたが、昼ぐらいまでのんびりとお菓子を食べたり、怪我のケアをして時を過ごしていた・・・
そういえばまだ宿代は今日の昼頃に取り来るからその時にしてとオーナーが言っていたのでそれを待ち、払い終えた頃にはもう12時を過ぎていた。ただ、どうせ今日は日曜だから官公庁はお休みだし、それに島1周なら3時間でお釣りも来る。寄り道してもその倍の6時間もあれば十分過ぎるだろう。それにまた今日もただで自転車を貸してくれるのは有難い。
私は島に出ることにした。
宿の近く、右上:郵便局。中右:観光案内所
私は例えそこがチャドの首都ンジャメナだろうがフランスの首都パリだろうが同じスタイルで観光を続けてきた。だが、昨日のダイビングが私の中にある変化をもたらしていた。
昨日の現場検証。我ながらよく眼鏡を探せたと思うが、今探したら簡単に見つかっていたとも思う。
必要最低限の用心は当然必要だが、ここに治安の不安はない。いつものトレッキングパンツの代わりに、中にスパッツと外にトランクス型の水着を履き、上はTシャツにした。靴は昨日乾かなかった事もあるが、靴下の上に膝くらいまであるゴアソックスを着用したので足がこれで濡れることも無い。
「元々濡れることを前提」にしたこの「プロフェッショナル・ニュー・スタイル」
今日の観光はこれで決まりだ! 勿論ダイエット用のシェイプアップベルトも巻いている。
勿論すべての国で使えるスタイルではないので、”ここ限定”となるレアバージョンだが、テストするのにラロトンガは丁度良い場所だろう。それに天気予報はずっと雨だ。
島内の様子、昨日と同じ時計回り
新しいスタイルに身を包み、快適に自転車を漕いで観光へ向かう。
最初の寄り道は「アライ・テ・トンガ」だ、ポリネシアの古代信仰の祭祀を行う聖地とのことだ。
中段以下がアライ・テ・トンガ
聖地というには寂しい荒地となっていて看板が無ければだれ一人気づけない自信はあるが、取り敢えずラロトンガ最初の観光標的はこれでクリアーだ。
島内一周中の景色
途中で見た教会にその中、このクラスの教会は道々にあるので結構見かける
道中
これがニュー・スタイル
曇り空は残念だが雨が降るよりは百倍マシだ。それに流石に南国だけあってこの空模様でも日中は寒さを感じない。
そして第2の標的、テ・ヴァラ・ヌイ文化村。勿論昨日も通っている
そこのカフェで食べた昼食、マオリ族伝統とはまるで関係のないサンドウィッチ。
テーブルの虎の置物は「食べ物まだですの番号札」みたいな物。
第三の標的ムリビーチ付近だが、ビーチらしい写真を撮り忘れてた・・・
ついでの教会にビーチ、天気は悪いが水の透明度は高い
下段右はスーパーで買ったアイス
道中
中断左は第四の標的、アロランギ村の教会、少し内陸に入ればハイランド・パラダイス文化センターがあるが訪れず
レンタルバイク屋にミニゴルフの看板
第五の標的ブラックロック(現地語ではツオロ)
結構あっさりだったがこれで見所は大体終わりだ・・・
こんなに簡単に見終わるなら昨日のんびりとして、今日だけ観光すれば良かったんじゃないのと思うくらいだったが、幾らタイムドライブして過去に戻った私であっても未来までは読み切れない。
空港付近
空港近辺。下左は水族館?だったかな?
空港から市中まで
かなりのんびりと、寄り道しながらだったがそれでもまだ17時頃、背負ったサブバッグに入れたモンスターの活躍の場が無いのは残念だが、海岸沿いのほぼ平坦な道をただ一周しただけなので負担も殆どない。
昨日はクックの仕掛けた罠に嵌ったように感じたが、所詮はただの亡霊のする事だ。生きている私に何か出来るわけではないだろう。
市中の港近辺
夕食は何にするかな?
今日は予め決めていた。昨日ミスったピザだ。これだけ早い時間に戻って来れたなら待ち時間が多少長くてもその間に適当に市内を見て時間を潰せばよいだけだ。チキンチップスも嫌いではないが、2日続けて食べるのも芸がない。
そして人口5000人と公称されいるが、そんなにいるようにとても見えない閑散とした首都アバルアの1本しかない大通りを進んで辿り着いた昨日のピザ屋は今日は日曜日でお休みだった・・・
首都アバルア。左上がピザ屋さん。中段右はスーパーかなと思ったら家具屋さん、お休みで中は見ず。
『うっ・・・、時間もお金も余裕があるのに肝心のお店が休みなんて・・・』
だが、閉まっている店を「開けゴマ」とオープンさせ、さらにピザを焼かせるなんて芸当はこのプロフェッショナルをもってしてもミッションインポッシブルだろう。
仕方が無いし、最悪またチキン屋さんで良いだろう。それにチキン屋と看板に掲げている物の、島国のこうしたローカルフード店の常として「フィッシュ&チップス」程度なら多分あるだろう。今日はそっちに切り替えだ。
市の中心部を観光しながら一応他に何か店が無いか探しているところ。
今日はサンデーの所為か?多少自転車に乗って探してみたものの、近くに開いているレストランは見当たらない。
『仕方が無いな・・・』
昨日の晩飯と同じ店なのは変化が無いが開いているだけでも感謝するべきだろう。
チキン屋さんとその周辺
まあフィッシュ&チップスでも・・・
と覗いた看板に、フィッシュ&チップスは書かれていなかった・・・
『む、むぅぅぅぅぅ~・・・』
ハンバーガーorチキン&チップスがそのスタンドの組み合わせだ。ハンバーガーには野菜が挟まれている写真が載っていたから選択肢は必然的に昨日と全く同じチキン&チップスになる
『・・・』
市中の景色
郵便局とイミグレのオフィス、ここをほんの少し奥にいくと私の泊まっているセントラル・モーテルになる。
セントラル・モーテル。写真下段左はガソリンスタンドのキオスクで買ったチョコ詰め合わせ
右下の袋は元はカバンの防水カバーだったものを破れたのでエチオピアで巾着にしてもらったもの、中がボロボロ崩れたのでここでお別れに。作り直したのが2005年だから12年間旅のお供にしていたことになる。
宿に戻って、のんびりとしながら昨日と代わり映えのしないチキン&チップスを頬張る。不味くは無いが味気ない感覚だ。
今日はただ観光してピザで締めてと思っていたのに肩透かしを喰らった格好だった。
そして夜眠りに落ちるころ、目を閉じた私にまた笑い声が聞こえてきた
そう
「クックっクック・・・」
と・・・
どうやらラロトンガを見ずに昇天したこの亡霊は、私をただで寛がせてはくれないらしい・・・
第5章 ザ・ロンゲスト・デイ(この旅、一番長い1日)
2017.11.06(月)
旅程が決まっている中、ピークになると予め分かっている日があるとしたら、それは間違いなく今日だった。
フライトの時間は日付の変わる翌01:40時、モーテルのチェックアウトは10時だから、そこから離陸まで約14時間、外にほっぽり出されて過ごさなければならない。働きながらの短期なので、今日の宿泊も取っておけば良いと思うかもしれないが、パートタイムのツーリストとなり、迷わずシングルを選べるようになった今でも、長期旅行者特有のセコさまで捨てきれている訳ではない、寝ない宿を休むためだけに押さえるのは、お金の無駄と考えてしまっていたのだ・・・
それならせめてチェックインギリギリまで動かずに休んでいれば良いのだが、こんな時に限って9時半に目覚ましをセットしていても8時と中途半端な時間に目が覚めてしまう。なんともチグハグだった。
また寝ると起きれなくなる危険があったので、一旦外に出ることにした。今日は月曜日だから街は生き返っているはずだ。
最初に寄ったのは宿のすぐ近くの郵便局だ。そこでクック諸島の紙幣を手に入れるにはどうしたら良いか聞くと隣のトレジャリーという場所を案内される。
ここでほぼ記念品となっている3クックアイランドドルを2種類、等価の6ニュージーランドドルと交換する。コインは?と聞くと記念セットが30ドルだったので、ちょっと高いなと諦めかけていると、「今何持ってるの?」と聞かれ、お釣りでもらってた硬貨を財布から出して見せると「2NZドル頂戴、足りないのはこれね」と等価分交換してくれる。儲けには全くならないのにこの親切さは有難かった。
そして観光案内所でもう一周した後だったが地図を貰い、警察署に行って運転する予定も無いのにクック諸島のドライバーズライセンスを作成する。
左上2階にトレジャリーはある。郵便局の裏手。右上は本屋。左下は警察署。
空いていたので所要時間は10分程度だった。しかも写真は向こうが撮ってくれるので、国際免許証一つあれば良い(日本の免許証だけだとその英訳も必要らしい)。バイクはテストを受けるらしいが、そもそも車にすら乗る予定も無く、ただ20NZドル(約1600円)で簡単に出来るから記念品に作る人が多いとガイドブックにあったので、暇つぶしにとやった事だから気にする必要も無かった
作ったドライバーズライセンス
消し忘れたので年齢バレですが、まあ良しとします
月曜日、首都で済ます予定をチェックアウト前に終わらせたのは、これから消費しなければいけない莫大な時間を考えるとその良し悪しは何とも言えなかったが、これでもう首都にも用は無くなっていた。
予定通り10時にチェックアウトして車で空港まで送ってもらい、荷物をロッカーに預ける。1日分の料金と考えていたが、12時間を超えるのに半日で良いわよとしてくれたのには助かった
中段右のロッカーのゴツイ鍵は底面に4桁のダイヤル錠で番号はスタッフが教えてくれる。半日で7NZドル
時刻は10:30時、ここからが長い1日の始まりだ・・・
『さて・・・、どうするかな・・・』
勿論やろうとしている事は既に決めていた。プロフェショナルと呼ばれるツーリストは何も考えずに街に出るような漢ではない。
ザ・クロス・アイランド・ウォーク
ラロトンガは1周は32kmと短いが、火山の島なので内陸部は山合いだ。最高峰は653mのテ・マンガ山だが、それを始めとして標高400-600mクラスの山々が連なっている。
ガイドブックにも乗り、観光案内所で貰った地図にも書かれている島を縦断する標高413mのテ・ルア・マンガ山を抜けるこのトレッキング・ルートはお手軽で、さらにピークが「ザ・ニードル(針)」となんともイカす、旅行者殺しのネーミングが付けられているのだ。勿論山頂からの見晴らしが良い事は言うまでもない。そしてかかる時間はルートに入って抜けるまでが4時間程度なので、ここからスタートしても余裕で夕方までには島の南側に抜けれるだろう。その時に疲れていたらバスで空港まで戻れば良いし、元気なら歩いても16km以下なので空港についてもまだ時間は余っているという算段だ。そして何よりも今回の旅の主目的であるダイエットにも効果抜群だろう。
旅行を始めたときに3K(キツイ、汚い、危険)を捨て、エレガントに周っていたこの私だが、身体のシルエットを保つシェイプアップの為なら多少のウォーキングは避けては通れない道だろう。汗かきベルトをしっかりと腰に巻き、トレッキングルートへ向かうことにした。
歩き始めて30分程、丁度空港から首都とトレッキングルートへ向かう別れ道の所にファーストフード店があったので昼食を摂ることにする。昨日食べ損ねたフィッシュ&チップスがあったので迷わずそれを選んだが、フィレオフィッシュの中身の様な物ではなく、魚のフライといった感じだったので、少しガッカリしたが、この後ルートを抜けるまでもう食べるところはなくなるので腹ごしらえは必要だった。
空港から市中へ向かって。下段がファーストフード店とフィッシュ&チップス。
雲は多い物の晴れた空の下気持ちよく歩いていく
別れ道からトレッキングルートの入口までの道中、道に迷わないように看板もある。
途中で牛さんも見れる。猫は途中でじゃれついてきてくれた。一緒にトレッキングしてくれれば良いのに・・・
30分ほどだろうか?入口へと到着する。
トレッキングルートの案内の看板、駐車場もあるので縦断しなくても往復も出来る
道路からルートに入りしばらくいくと山道といった感じに変わっていく。ちなみに今日はニュースタイルではなくいつもの格好だったが、晴れていたので上はTシャツにして、雨用のレインジャケットはサブバックの中に入れていた。
たったの4時間、標高も500mもいかない程度、良く整備された日本の登山道以下のお気楽な散歩道程度と考えていたが、途中からそこそこに急な角度を登らされたり草藪を抜けたりしなければならなくなる。長袖のポロシャツは錘になるからとメインバッグに入れてロッカーに置いて来たのが少し悔やまれる。
ニードルまで。写真だと分かり辛いが中段右などは結構な角度を登らされている。
山頂に近づくにつれ、山道も険しくなっていく。途中で何度かスパイダーマンのような格好にされるのは、初日の打撲の痛みがまだ治まらない上に、肩や首に慢性的な痛みを感じるような年頃になってきたこのプロフェッショナルにとって、楽という目論見が外されたこともあってキツイとは思わないまでも面倒だと感じさせる程度にはなっていた・・・
ニードルへの別れ道まで、何故か鶏がいた
ルートに入ってニードルまで、行程の半分くらいかかると思っていたが割合近く、一時間程度で最大の見所に到着。
別れ道からニードルまで。左下の小さな看板は岩に登らないでねと書いていた。
『さあ、絶景のはじまりだ・・・』
ニードルからの景色
『あれっ?こんなものなのかな・・・』
間違いなくここはニードルだ、持っていたガイドブックに目を通すと「眼下にまばゆいばかりの美しい海、周りは切り立った岩山、南海の孤島のイメージがそのまま景色に現れる」と書いてあるが・・・
『天気の所為?』
そうではない、そもそも眼下に海は広がってない、かなり遠めに海岸線が見える程度だ。チラリズム好きなら僅かに目にする海岸線を手掛かりにその先に広がる広大な海を想像出来るのかも知れないが、旅行界随一のロマンティストでこそあるものの、徹底したリアリストでもあるこの私は、目にした景色を心の中で偽って良い景色に変換する技術は持ち合わせてはいない。
『だ、騙された・・・』
トレッキング・ルートのピーク、最高の景色が眺められた筈のこの場所で、今度は私の脳裏にはっきりと笑い声が聴こえてきた、そう
「クックっクック・・・」
と・・・。
折角だからモンスターで撮った写真をつらつらと
左上が等倍、後は拡大
山側と光学ズームの限界まで拡大して
もう一度海側、今度はソーラーパネルを狙った
そして近くの木の花を頑張ってズーム、風に揺られている中だったので何度か撮り直している
それでもこれが今日一番の景色には違いない、モンスターで遊びつつ、持ってきていたチョコの詰め合わせから数点食べ水分を補給する。レインジャケットを着るまでも無いが長袖を着ていないことをちょっぴり後悔する程度の風は吹いていたが、時間はまだあるので14時までのんびりとする。
そう言えばニードルまですれ違ったのは明らかに駐車場に車を停めて往復していたと思われる家族1組だけだった。
ニードルで30分程度のんびりしたら、さすがにそれ以上時間も潰せなくなるまで飽きてきたので今度は下山することにした。
別れ道から南へ抜ける下山ルートはまた再合流する2つに分かれていて、そのうちのハイエスト・ポイント(高い所)を通ると書かれている方に進むことにした。
南へのルート
ただ下るだけだからとのんびりと構えていたら、登りと同様に何度もスパイダーマンのような恰好をさせられる。折角の縦断ルートだからもっと整備して老若男女問わず楽しめるようにすれば良いのにと考えてしまうのは、私がそういった国から来たツーリストだからなのだろうか?それとも単純にちょっとでもキツイのが嫌だからなのだろうか?勿論後者の一択だった。
下山ルート
別に私は今流行りの山ガールでも無いし、山ボーイという訳でもない。ただトレッキングに使われるルート程度なら、獣道なのか?人が通るルートなのか?は気にしなくても分かる。と、思っていたら一度迷って変な所に出てしまっていた。
『華麗な私も加齢による衰えはあるのだろうか?』
迷ったと分かったらすぐに戻る事だ。すると分岐点や迷いそうな所にはオレンジ色の矢印が取り付けられている事が分かった。新発見だ!
『ひょっとして今までのルート上全てこのマークがついていたのでは・・・』
という疑念はさておき、これで迷い様も無くなった、後は標識に従って降りれば良いだけだ。
上段の写真の矢印が目印。
相変わらず人には全くすれ違わないまま、何度もスパイダーマンになりつつ、時折ロープまで掴みながら下っていく、大分下がって川沿いに出てほっとしたら、今度はその流れる川をS字状にまたぐようにルートが組み立てられていたので何度も川を横断する羽目になってしまった。
こんな感じの小川が流れているので、石の上を渡りながら横断する
ゴアソックスは持っているのでそれを履けば簡単に横断できるのも分かってはいるが、フライトに濡れたソックスを持ち込むのはエレガントさに欠ける。そして川も全て上手くやれば濡れずに済むかもと思わせる絶妙な位置に石が配分がされている。そして川を渡るとしばらくは林の中になるので、「これでもう川渡はしなくてよいかな」と思うとまた川を渡る羽目になるという何とも嫌がらせなルートだった。
何度かわたりイライラし始めた頃、また笑い声が聴こえてきた。
そう
「クックっクック・・・」
と・・・
私を嘲笑うかのようなその声に負けじと、意地を張り続け、川渡りを10回程度繰り返してなんとかこのルートを抜けることができた。
しかし、ニードルまでは1時間程度だったのに下山ルートはもう2時間は歩いていた。確かにトータル4時間ならおかしくは無いが、何とも納得しがたい感じだった。
さらにそこから少し歩くとルートを抜けようやくヴィクモアの滝に到着。時計を見ると16時。休憩時間を併せると実質4時間だから教えてもらった通りではあったが、果たしてやる価値はあったのかと考えると、暇つぶしの私には良かったが人に勧めるかと聞かれると何とも言えないトレッキングだった・・・
終着のヴィクモアの滝
平坦な道のりになったので疲労はこれ以上溜まらなくなっていた。歩きながら体を回復させつつ、30分程歩くと海岸沿いのメインストリートに到着。島の縦断はこれで達成だ。
南側の海岸沿いまでの道中
『16:30時か・・・』
トレッキングルートを抜けた達成感はコーラで満たされる。出口の所にいたおじさんに『スーパーってどこ?』と聞くと「あっちだけど少し離れているよ」と空港のに向かう方向と反対側を示されたので、『じゃあいいや』と諦めて空港側に向かおうとすると「そっちだと全然ないよ」と言ってくれた。ただ、時間があるとはいえ反対側に向かうのは抵抗があった。また日没は大体19時頃、真っ直ぐ空港に向かっても多分途中で夜になるだろう・・・
『さてと、どうするかな・・・』
道を見るとベンチがあったので、そこに荷物を置いてチョコの詰め合わせからまた数点、そして持っていた水を少し飲む。
暗闇になったところで、離陸まではまだまだ時間がある。私はそこから空港まで歩くことに決めた。
そしてしばらく歩くとレストランを発見、缶コーラを買って一気に飲み干す。
水分補給を結節結節で行っていた物の、歩いている時間からか?想像以上に水分は出ていたらしい。
海沿い。中断左の格好でトレッキングルートは抜けた。左下は缶コーラを買ったレストラン。3.5NZドル(約280円)と高い
島は自転車で既に2周、そして今日は歩きで半周。リゾートと言われるこの島で自分でも何がやりたいのか全く分からない状態だったが、そもそも観光とはそんな物だ。ただ自分の心の奥底から聴こえる声に従ってやるものだろう・・・
途中の景色。右上はバスの時刻表。中断左は消防署。下段右はブラックロック
ただ歩いているだけなのに想像以上に水分が失われていた。途中でもう一本、今度はガソリンスタンド併設のキオスクでペットボトルのコーラを買って飲んでようやく落ち着くことが出来た。しかし、トレッキング後とは言えただ平坦な道を歩いているだけなのにこうも汗をかいているなんて・・・、これが麒麟も老いてはダバダバダ~というヤツなのだろうか・・・・
『あっ・・・』
『シェイプアップベルトしてたの忘れてた・・・』
このプロフェッショナルの旅行界随一とまで言われるちょー優秀な頭脳を惑わせ、身に着けた装具すら忘れさせるとは・・・
これもクックの仕掛けた妖しなのだろうか?
私の脳裏にまたしても彼の笑い声が響いていた
そう
「クックっクック・・・」
と・・・
やがて空港にたどり着く頃、日は既に暮れていた。時刻は20時前、晩飯の事もあるので少しどうするかと悩んだが、空港をそのまま横目にアバルアに出ることにした。
この島での忘れ物。
やり残しがあるとしたらそれはピザだった。
私を2度も空振りさせたピザ屋に行きペパロニを食べることが出来れば、クックの呪縛から逃れる事が出来るだろう。
街へ
まだなら薄暗い街灯の中、ペツェルの紐式のヘッドランプを手首に巻き歩いていく。
20:50時、ピザ屋に到着。聞けば今日は10分で出来ると言うらしい、迷わずペパロニを頼む。
ピザ屋とペパロニ、ここで食べても食器ではなく持ち帰り用の箱で出てきた
ふと気になって営業時間をみると21時まで、10分前に滑り込みセーフだったのだ。
ただ、最後の最後でこの島の思い残しは無くなった。
そこそこに美味しいピザを食べ終わる頃、あれだけ脳内を悩ませてきたクックの笑い声はもう聴こえなくなっていた・・・
終わり良ければ総て良し、ピザで満足した後、空港に戻ろうとしたら現地の親切なおばさんが私を逆ヒッチしてくれ難なく空港へ到着、すべてが一気に好転した感じだ。到着したのは10時少し前だが、ここまで来ればこれ以上どこかに出て時間を潰す必要も無いだろう。
『ふぅ~・・・』
長かった1日も幕を下ろし始めている。ただ、もう少しだけやる事があった。私はオークランド⇔ラロトンガとオークランド⇔ニウエの往復チケットを持っていた。どう言う事かというと、ここを出発してオークランドへは05:00時着、そして08:25時にニウエへと出発する。ようはニュージーランドはただ一時的に立ち寄るだけですぐに他の国へと向かうのだ。しかしながらデートライン(日付変更線)のいたずらか?オークランドで3時間以上の余裕があるのに何故かオンラインでトランジットでのチケットは買えなかったので、こんなチグハグな形でチケットを抑えていたのだ。それにオークランドの初回の印象はヨロシクない、入国審査を終え荷物を受け取ってロビーに出るまで1時間かかっている。これでは何かアクシデントがあったら、ニウエへ行けなくなってしまうのだ。
チェックインカウンターが開いたのは23時、深夜便でそれ程人も多くないので待ってからチェックインカウンターのスタッフに聞いてみると「トランジットには出来ないから一度入国してから出国してね」と連れない返事だった・・・
3時間の余裕があるから大丈夫だろうけど面倒な事この上ない・・・
チェックインカウンターに荷物を預け、空港ロビーでベンチで腰を下ろして少し佇んでいるとまた例の声が甦ってきた。
そう
「クックっクック・・・」
と・・・
まだ早いのでgloを吸ったりしながら外で時間を潰し、そう言えばクックアイランド・ドルが3ドルほどコレクション用の硬貨とは別に持っていたので何か飲み物でもと思ったら、最低4ドルスタートとこれも肩透かしだ。しかし3ドル(240)でも十分高いのにそれが4ドル(320円)スタートなんて・・・
どうやらクックは最後まで私に何か仕掛け無いと気が済まないらしい・・・
12時を過ぎ、流石にこれ以上外で時間を潰すのも厳しくなったので入国審査を受けてロビーに入る。充電スタンドがあって、gloの充電がそこで出来たのは思いもかけない朗報だった・・・
空港のロビー。中段以下は入国審査後。
NZ479便は予定通り01:40時に出発。
流石に朝から動き続けて眠くなっていたので、離陸後すぐに持ってきた機内食も『ごめん、要らないよ』と断ってしまう。
オークランドで無事に乗り継げるのかの不安を抱えながら、窓から暗闇の中、見えなくなるラロトンガを感じながら、忙しかったこの3日間を振り返ってみる。
ここで起きた全ては、この島を見る事が叶わなかった、クックが仕掛けた悪戯だったのだろうか?
そして私はこう結論付けた。
キャプテン・クックの罠、その全てはこのプロフェッショナルの単なる自爆だった
と・・・
—完—-