第20話 天下無双 (舞台国:ベネズエラ)

Category: 激闘の記録!

あらすじ

[剣を旅]に置き換えて、天下無双を狙う現代の剣豪[プロフェッショナル デューク東城]

その背中にはいつでも[天下一旅行者(てんかいちツーリストもの)]の旗竿が翻っていた!!

そして今日この日、また一歩天下無双に近付くべくベネズエラはメリダに到着したデューク東城に…

何故か予期出来なかった[セマナサンタ]の壁が厚く立ち塞がる!!


はたしてこの壁を無事に乗り越え、また一歩天下無双への道程に迫ることが出来るのか??

どうする!ゴルコサーティーワン!!







第1章 序章


男としてこの世に生を受けたからには…

誰しもが一度は憧れる想いがある。

そう[天下無双]の男になることだ!!

かくいうこの[プロフェッショナル]・・・

2004年の12月に…ファーストミッションを始めてから…


ただひたすらに追い求めてきたのは[自分こそが天下無双のツーリスト]となることだけであったのだ!! 


だからこそ「愛する者」も修行の邪魔になると別れを告げ・・・

いやっ!待て・・・愛する者はおろか・・・誰も愛してくれなかったので別れを告げる必要はなかったが・・・


頼む、誰でもいいから愛してくれぇ~・・・!!



・・・



・・・・・



あっ!話が横道にそれたので元に戻そう・・・




勿論その当時から旅行界に勇名を馳せている旅行者は腐るほどいたが…


やつらとこの俺の違いは・・・


「ただひたすらに斬りまくった国の数」


だけだ….




そして私はこう考えた…



「一つ一つの国を…斬り倒していったら…」


「最後には俺が天下無双である」


と…






今迄の私のこの一途なツーリストとしての姿は・・・




私の旅行の砥ぎ師「光悦殿」の言葉をかりるとこういう表現になるだろう・・・

「人は旅行に生きるといいながらも、本当に旅行の為だけに生きているものは稀である…、その旅行に賭ける想いが一途で在ればあるほど、そういった人は余計な贅肉がつく事を拒むし、その想いが純であれば在るほどその姿は美しい…」



「そしてその姿が美しくさえあれば・・・”人を殺めてしまっても良い”と思っているのもこれまた事実」

と・・・






第2章 戦いの場へ・・・


2008.03.17(月)

何かに導かれるかのようにしてカラカスから夜行バスでメリダに到着したのは0800時。


旅を続けることはや4年、

私の旅行は完成の域に近づき、最早”達人”といっていいレベルに到達しているのだ。

そう、俺の旅行の行先は・・・

いつでも体が知っている・・・



勿論体の命じるままに「首都狙撃手」たる私が一地方都市であるここメリダを訪れたのには理由がある。

ここでの標的は「テレフェリコ(ロープウエイ)」に乗る事なのだ。

なんでもこのテレフェリコは1577mの地点から出発して最終地点は4765m!
高低差3km以上、そして距離にして12.5kmをロープウエイを4回乗り継いで到達するという世界一の・・・言い換えれば『天下無双のテレフェリコ』なのだ!!

それもただ乗ってるだけで富士山以上の地点に簡単に到達できると言う「他力本願」を旨とするこのプロフェッショナルにはもってこいの物なのだ!!




この俺が天下無双を狙うなら….


ここは斬捨てておかねばならない標的だろう!!


世界最高落差を誇るエンジェルフォールこそ値段が高いのであっさりと断念したが…

ここは何としてでも落とさねばならないターゲットだ!!



ここでの私の考えはもう決まっている。まあ上手くいけば今日テレフェリコに乗って明日出発。駄目でも明日乗って明後日出発。今日は月曜日なので出発は遅くとも水曜日になり、こうすればサンデーゲリラ(普段働いている人が週末のみ強盗に変身して人を襲う事)も避けれるという実に合理的な考え方である。

そう、これがこれこそが・・・

「旅行の理(り)」

というやつなのだ!!

これを意識せずに行っている私は

「旅行の理に出会っているツーリスト」

と言って良いだろう!!

今回も今迄のミッションの他聞に漏れず・・・

この「理にのっとって」難なくこなしてしまうに違いない・・・

何故なら私のみが「現代の剣豪」なのだから・・・




しかし・・・

メリダに到着と同時に・・・

予期せぬ[不安]が私を襲ってきた・・・


直ぐに訪れたバスターミナルの中にあるツーリストインフォで・・・

彼女の口から恐るべき事実が告げられたのだ!!


「あら~、今はハイシーズンだからホテルも簡単には見つからないわよ!!それにテレフェリコも今週1杯はフルだから乗れないわよ!!」


『???』


(どういう事だ・・・??別に3月のなんてことない普通の週で・・・幾ら春休みのシーズンだからといってそんな事がありえるのか??)

彼女の言葉が真実かどうかはわからない。ブラフ(はったり)という可能性もある。私は彼女の言葉に驚きはしたものの・・・

事実は行って確かめるしかないだろう…

取り敢えず市の中心にいくバスの乗場を聞き、そして何故かバスに乗らずに3km歩いて市の中心まで行ってしまった!!

到着したメリダのバスターミナル


街の中心まで1時間ぐらいはかかったのだろうか??

これが中心のプラザ・ボリバル。ついでに夜景も






そしてその近辺で真っ先にあたったのはロンプラに載っている最安のポサダ(安宿の事)。ここは難なく部屋はあるが・・・トイレシャワー別なのでもう数軒あたってみることにする。
バス停では宿泊は無いといっていたが、そんなに悪くない感触だ。

結局一番安い最初の宿にしたが・・・

今週何が忙しいのか良く分からないままだ。

そしてホテルを1100時頃出てテレフェリコのチケット売り場に向かう。歩き方には予約することが好ましいと書いてあるので用心してのことだし、乗れるものなら今日でもやぶさかではない・・・



そして辿り着いたチケットオフィスは・・・



まだ人は居たものの今日は販売終了だった・・・


一応確認すると、「また明日来てね」

ということだ!!

明日のチケットを今売ってくれないのはちょっと意地悪だが・・・

まあこれまでは計算済みだ・・・


ホテルに戻り明日も宿に泊まれるかと聞くとそれは問題ないらしい。



しかしここでまた一つの新事実が!!

明後日以降は今泊まっている宿には泊まれなくなると!!

なんでも予約で満タンらしいが・・・何故???


「うーん・・・」


まあいい、全ては明日だ。明日早く行ってチケットを買ってその日の内に乗ればいいだけの事だ・・・






その夜、一人の英語のしゃべれる同宿のドイツ人との話で大体の謎が解明されてきた・・・

なんでも今は「セマナサンタ(キリスト教の聖週間)」という祭りの時期で、この時期はみんなお休みになるから観光地はラッシュになる・・・

ということだ・・・


しかし・・・


私は「プロフェッショナル・・・」


セマナサンタ如きに・・・


負けるわけには行かない・・・






第3章 コウキラレル・・・

2008.03.18(火)




翌18日、朝早く・・・と言っても早過ぎない時間に起きてテレフェリコのチケットオフィスへ向かう。

昨日あったドイツ人からは「0700時から並んだほうがいいよ」と言われていたが、所詮相手はラテンの末裔ベネズエラ人、彼らが朝早くから勤勉に並ぶなど考えられないし・・・まあ0800時に着けば十分だろう・・・

いずれにしてもテレフェリコには今日乗る、そして出発は明日だ!!

乗れなかったら・・・まあそのときに考えればいい事だが・・・






そして・・・




到着と同時に見たものは・・・









長蛇の列・・・



・・・



・・・・・・





甘かった・・・



この”プロフェッショナル”としたことが・・・


ラテン系がゆえに娯楽にかける彼等の情熱が半端でないことを・・・



無視してしまっていたのだ・・・!!





しかし・・・


ここは並ぶしかない・・・


そして・・・


1時間たって・・・


まだ辿り着かない自分が居た・・・


ようやく敷地内の回廊に辿り着いた所






そしてさらに一時間・・・



大分接近はしたものの・・・


放送が入る度に人が三々五々と列から抜けていく・・・


私には放送で「明日、明後日のチケットをいまから売ります」といっている様に聞こえているのだが・・・

周りの人間に確認したところ・・・「日曜日以降のチケットを売っている」と言っている・・・


このとき、”達人である私”の中に・・・あるイメージが浮かんできていた・・・



(『明日のチケットは??』・・・「もう売り切れなのよ・・・!!」

ズバババッ!!

斬られた!!

『じゃあ明後日は??』・・・ 「それも・・・ないのよ・・・!!」

ズババババババッ!!

こう斬られた!!


『えっ?じゃあ一体いつなら???・・・「日曜日以降になるわねぇ・・・!!」

ズバババババババババババババッ!!!


あぅぅぅぅぅ・・・・

何をやってもコウキラレルのか・・・!! )






・・・






・・・・・





ハッ!!





悪いイメージしか・・・浮かんでこない・・・




しかし・・・真実は???



そして待つこともう30分・・・


一向にチケットオフィスに辿り着けず・・・


しょうがなしに列から出て、そしてチケットオフィスの近くに居る制服を着た係りに確認することにする。

毎度思うがこういうときに一人は辛い・・・列から出ると同じ場所に戻れずまた後ろから並びなおすケースが多いからだ・・・

そして確認したところ・・・

みんなの言うように「日曜日以降のチケット」を売っていると・・・!!


な・・・なんという事だ・・・


セマナサンタを・・・

セマナサンタを・・・

知らなかったとはいえ・・・


甘く見過ぎていた・・・


私は「旅行の理」に出会えていた筈なのに・・・




こうもその「理」から遠いところに事実が在るとは・・・!!


何だ??

一体何がこの俺を”理”から遠ざけていたのだ??




(「なーに簡単にチケットなんて手に入るよ・・・」、「ベネズエラ人がチケットのために並ぶわけなんてないぜ・・・」、「今日のテレフェリコにのって明日この街ともおさらばだぜ・・・」、「ホテル?なんの心配がいるんだ??」・・・等々・・・)




そうか・・・


俺が・・・俺自身が・・・


自分自身の愚かな考えに縛られて・・・


「旅行の”理”から・・・」


「俺を遠ざけていたのか・・・!!」





そしてその時・・・


このプロフェッショナルの耳には・・・


童顔ながらもやけに低い、そのチケットの有無を聞いた男の声が・・・


残っていた・・・



「ノ~・・・ア~・・・イ~・・・(No Hay:スペイン語で「ないよ~!!」の意味)」



結局チケットオフィスに直接聞くまでもないと判断し・・・

ホテルに戻ったのは昼前。




テレフェリコのチケットを今日入手できなかったので・・・


どうするか悩んだが・・・

私の脳裏に一つの情景が浮かんできて離れなくなっていた・・・




下から見上げたテレフェリコの情景・・・



「見っ見たい・・・!!この先に一体どんな景色が待ち受けているのか・・・???その為だけに・・・旅行を続けてきた・・・気がする・・・」



そう、この時、私はすでにテレフェリコに・・・いくら待つことになっても・・・乗りたいと思ってしまっていたのだ・・・


その為に・・・旅行最速の看板を一時捨てることになっても・・・


今はこのテレフェリコに・・・テレフェリコにとらわれてしまっているのだ・・・!!




覚悟は決まった。

そして今のホテルはもう明日から泊まれないということなのでもう今日から動くことにした。

聞くホテル軒並み明日からは分からない、もしくは予約済みと言われたが、何とか、それも今泊まっていたポサダから一番近いポサダが明後日までは大丈夫だし、明後日以降は部屋をシェアするなど聞いて考えてくれると好意的にいってくれたのでそこに移ることにした。


これで明日また・・・テレフェリコのチケットオフィスへ・・・


これはメリダでみた壁絵、自由の女神がミサイルを持っているとシュールなもの!!



でも他人事ながらそんなしょぼい装備では倒せんぞ!!





第4章 プロフェッショナル前へ

2008.03.19(水)

もう覚悟は決まっている。

といってもまた長時間並ぶのが嫌だったのでちょっとのんびりとチケットオフィスに向かう。

テレフェリコ前の広場


目指す標的はこいつのチケットの入手だ!!


こいつ!!



到着したのは0900時頃・・・

昨日よりは人がいなかったが・・・それでも待つことに変わりはない・・・


しかし、私の心の中には

もうこのテレフェリコと斬り結ぶ覚悟が決まっているのだ・・・


天を仰ぎ、そして息をつく。


( 『テレフェリコのチケットをさっさと取って・・・すぐに乗って・・・コロンビアに抜けて・・・有名なコロンビア美人と・・・ウハウハ、ワクワク、ドキドキ、ニャンニャンなんていう明日を夢見ていたが・・・』


『この先は捨てた!!』


『たった今より、この俺の命・・・』


『ただこのテレフェリコに乗る、そのためだけの命でいい・・・』)




そう決めた刹那、私にはある人の声が聞こえてきた・・・


( はっはっはっ・・・

鈍臭いのう~・・・デューク!!

お前らしくてよいわ!!

だが、旅行者の皆がお前を好きなのもお前のそんな所じゃ〔ちなみに誰にも好きと言われた訳で はなく思い込みと言う説もあります〕・・・

ずっと・・・ずっと見ておるぞ・・・・!!)


( 『おっおやじぃ~・・・〔ちなみにデューク父は存命中で今頃家でタバコでも吸っているかと・・・〕』)


近づくチケットオフィス・・・


後もう一人でこの俺の番へ・・・


私は剣を高々と突き上げ(実際に持っているわけではありません、念のため)・・・


こう叫んでいた・・・!!


『俺の名前は”プロフェッショナル”が”デューク東城”・・・!!』


『今までは・・・俺の名を大きく見せるために”プロフェッショナル”の名を用いていたが・・・』


『今からは・・・”プロフェッショナル”の名を守るために戦う(これもお気づきかもしれませんが自分の名以外のことは考えてません。念の為・・・』



そして前の人の番が終わり・・・・


私は半歩間合いを詰めた・・・!!


そう、いよいよ奴の間合いに・・・


入ったのだ!!







第5章 合戦テレフェリコ城!!

同日・・・


チケットオフィスの間合いに入った私が考えたのは


「一の太刀」

に全てを賭けると言うことだ!!


オフィスのお姉さんの顔を見て、持っていたパンフレットを出して・・・

『ピコ・エスペヨ(頂上駅の名前)』に行きたいと告げた!!



そして彼女は・・・

私に何やら紙切れを見せる・・・

番号が・・・書いてある!!




・・・



・・・・・・





これは・・・整理券と言うやつでは???





こんなものは持っていないし、そもそもどこで貰えるのかも知らないが・・・

今ここで整理券をとる為に・・・

後に引くわけには行かない!!

ここは・・・整理券の変わりに・・・某女優も真っ青な私の秘剣「ウソ泣き」を見せるしかない。

それとなによりも爽やかな「営業スマイル」の2刀流も付け加えて・・・



私は彼女の瞳を覗き込むようにして語りかける・・

『整理券なんてもってないでちゅぅ~・・・それにどこで整理券が手に入るなんてことも知らないのでちゅぅ~・・・わざわざ日本から・・・このテレフェリ子に乗るためにやってきたのに整理券がないと買えないのでしゅか??そんなのあんまりにもつらいでちゅぅ~!!昨日も今日も2時間ちかう並んだのでっしゅぅ~・・・!!お願いしまっしゅ。ここでチケットを買わして下さいなのでっちゅ!!』



瞳にはうっすらと涙を・・・そして彼女の心の中に揺さぶりをかけるようにして・・・


すこしの逡巡の刹那、彼女の心の声が聞こえてくる・・・



( 「この男・・・たった一人で・・・スペイン語もろくすっぽに喋れないのに・・・ただテレフェリコに乗りたいがためにここまでやって来たとは・・・、ネット予約も出来るこの時代に・・・こんな旅行者がまだいたとは・・・  
この男、一体いままでどんな道のりで旅行を続けてきたのか・・・??
乗せたい・・・この男がテレフェリコに乗る姿を・・・見てみたい気がする・・・)




そして彼女の口から・・・この答えが・・・




「いいわよぉ、整理券がないのは仕方がないわねぇ~・・・、今調べてあげるから・・・、えっとぉ~・・・明日の・・・0845時があるけど・・・それでいいかしら??」



『買(勝)った!!』


なぜか60ボリバーレス(大体15ドルです)と看板に書いてあったが45ボリバーレスで・・・


セマナサンタ特別割引かどうかは知らないが・・・


これでチケットをゲット!!



この勝負・・・




明日を捨てたこのプロフェッショナルが・・・明日をつかむことが出来たのだ!!




満面の笑みで『グラシアス(スペイン語のありがとう)』を言った私に・・・


彼女の心の声がまた聞こえてきていた・・・


( 「整理券を持たない事を指摘した刹那、とっさに泣き落としと営業スマイルに切り替えてこの私にチケットを売らせるとは・・・

まさに融通無碍の境地・・・

この旅行者とは・・・

まさかこれほどのものなのか??」)

と・・・



これがチケットオフィス







この激しい戦いを終えたとき・・・

私の脳裏に一人の女性が姿が浮かんできていた・・・


『オルガ・・・』


『お前はいつでも変わらずに・・・』


『びっくりするほどあでやかで・・・そして綺麗なままでいて・・・』


『しかしそれも・・・』


『また俺がこしらえたオルガなんだろうか???』



『それともただの・・・』




『ポスターだからなんだろうか???』


ちなみにこれがオルガ、街の至る所にポスターが貼ってあった。
2008年チカ・リーダー(可愛い子ちゃんリーダーという意味)と書いてあるだけあって中々のナイスボデーです。








しかしこれで・・・

ようやくテレフェリコに乗れることになったわけだが・・・

疑問はある。

ひょっとして昨日最後まで並んでチケットを買おうとしていたら今日の分が買えていたんじゃねえの??と言うことだが・・・


まあ終わったことを悔いても仕方ない。





私はもう一度チケットを眺め・・・こう思う・・・


『これで・・・テレフェリ子とこの私は・・・別れ難く結びついてしまった・・・尊敬(なんといっても天下無双のテレフェリコですし、チケットも売ってくれたので)と・・・・憎悪(でもセマナサンタのせいで3日も続けてチケット売り場に足を運ばせやがって)によって・・・』



そう、いよいよ明日、また天下無双に一歩近づくことになるのだ!!




写真は本文と関係のないアイスクリーム屋。ちなみにギネスに載っている。
何が記録かというと、その種類の多さで800種類あるらしい。ただ一日あたりは100-200種類ぐらいづつ出しているらしいが・・・
ちなみに味はそんな大した事が無かった・・・




第6章 頂き目指して・・・


2008.03.20(木)

今日この日・・・

そうテレフェリ子との果し合いの日だ・・・


街並みも・・・いつもと変わって見えている・・・


これがその街並・・・




私は深く息を吸い込み・・・自分で自分に言い聞かせる・・・


『気負うな・・・』


『とらわれるな・・・』


と・・・


そして予定の0845時より・・・

1時間早くも着いた自分がいた・・・



『う~ん、気負ってます・・・!!』




少し時間を潰して・・・

そして列に並ぶ・・・


チケットを見せ・・・

そして・・・

遥か彼方の頂を眺める・・・

これが下から見た眺め!!



今日こここのメリダで・・・


これから天下無双への挑戦が始まるのだ!!


列に並んだのは30分程度、ようやく・・・


テレフェリ子に乗る・・・

そして・・・テレフェリ子と私は・・・

遥かなる高みを目指して・・・

どんどん上がっていくのだ・・・


道は遠いが・・・


私なら・・・私なら必ず頂点を極められる筈だ・・・!!




最初に乗るテレフェリコと最初のバリニタス駅



下はこんな感じ・・・


街はどんどん遠くに・・・



そして2番目の駅でテレフェリコを乗り継ぎ・・・

これが2番目の駅とそこからみた頂の方、頂上は未だに見えず。


さらに遠ざかる街


ちなみにおフランス製、50年以上も前のもの。
思えば最初の渡航先はフランスのパリだった・・・奇しくもフランスとこのプロフェッショナルは縁があると言わざるを得ない・・・


どんどん雲を突き抜けて・・・



さらに・・・


高みを目指して・・・


これは4番目の駅ロマ・レドンダ。高度はすでに4045mに・・・。さらに駅は既に雲の上



ここから最後の行程は新型のテレフェリコに!!


この4000m越えた地点で池が見れるなんて・・・


雲はどんどんと下に・・・




ついに・・・


ついに・・・


辿り着いたのだ!!この山の頂に・・・

頂上駅、ピコ・エスペヨと近くにある山の頂点に立つマリア像


もう雲は遥かに突き抜けている・・・


眼下には・・・雲海が拡がる・・・





プロフェッショナル、雄叫びを上げる・・・


『がぁぁぁぁぁぁ~!!俺は・・・俺は強ぇ~・・・!!』





そうだ!誰が一体成し遂げようか??

高度1577mから高度4765m、標高差は実に3km以上、12.5kmの道のりを・・・
たった1時間半・・・それもただ乗ってるだけで自分の力を一切使わずに・・・

何の努力もせずに他力本願だけで・・・



今日の私こそ『旅行を極めた』と言えるだろう。



私の指は自然と天を指し・・・

こう叫んでいた


頂上でとったポーズ。ちなみにたまたまJICAの隊員6人と一緒になったので彼らに写真を撮ってもらいました。






『う~ん。今日のわし、絶好調!!』




『今なら言える、我が旅と天は一つ!!』





・・・





・・・・・・






しかし・・・




天下無双とはそう甘くはなかった・・・


私が振り向いたとき視界に入ったものは・・・


さらに高い頂が・・・ちなみに5000mを超えているそうで・・・




・・・ 





・・・・・・


デューク東城、一人哂う・・・



『まあいい、今の俺はこんなものだ・・・だが見ていろよ・・・この先も・・・斬って斬りまくって・・・いつかはきっと・・・』








第7章 終焉の時・・・


2008.03.23(日)

幸いにしてホテルの問題はシェアルームをさせてもらう事で解決していたが・・・

テレフェリコとの死闘を潜り抜けた今・・・

もうメリダでやることが無くなっていた・・・

セマナサンタが完全に終わった月曜からの移動を考えていたが。

ここでベネズエラの国境町のサンアントニオ・デル・タチーラまで今日移動することにした。

移動に関しては今日がピークになる筈だが、まあ何とかなるだろう。私は天下無双を制した剣豪なのだから・・・

それにホテルはもう大丈夫と聞いている。

メリダから国境まで全部で6-7時間、そして国境からボゴタ(コロンビアの首都)まで14-16時間。

月曜日に移動を始めて一気にと考えるよりも今日国境まで行って、明日のんびりとボゴタを目指した方が利巧というものだ。

そう、私の旅行の答えは・・・

いつでも体が知っているのだから・・・


そしてそれこそが・・・

『旅行の理』

というものだから・・・


世話になったポサダに別れを告げ、バスターミナルへ向かう。

1000時にバスターミナルに到着、長蛇の列に一瞬ぎょっとさせられたが、臨時便が出ることになり1100時には出発できることになる。

『これも私が天下無双だからだろう・・・』


メリダから国境街までは一本ではいけない。

途中のサン・クリストバルでバスを乗り継ぐ。ここまでメリダから5時間ほど、時計は1630時を指していた。

治安の悪い国境地帯に夜到着するのは得策ではない。

ここから国境街まで1時間と少し、日没前には十分に間に合うだろう・・・


これが乗り継いだバス



しかし、それにしても私の動きは完璧だ・・・

最早意識せずに動く”達人”・・

いや・・・

“名人”

の域に達したといっても過言ではない・・・


そう今の私は『完璧なツーリスト』・・・


一部の隙も無い・・・


バスはバンピーな道を順調に進む・・・


しかし・・・


山間を走り・・・夕方が迫るにつれ・・・気温が徐々に下がってきている・・・

こんな感じの道を走ってます。



今私が来ているのはTシャツ一枚。

このまま最後まで行くのもいいが・・・

ここで油断して風邪を引くのは愚の骨頂だ・・・

そう思い、おもむろに長袖のシャツをとりだし、上に着ることにする・・・

このあたりをおろそかにしないことが普通のツーリストと名人たる私の差だろうか・・・??




そして・・・

シャツを着ようとしていると・・・


かけていた眼鏡が外れて・・・


私の体でバウンドして・・・


バスの窓から外へと・・・



『あっ!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~・・・・』


声にならない悲鳴が上がる!!


横に座っていた現地人が私の異変に気付き、バスを止める。

もちろん私は即座にバスを飛び降り・・・そしてバスを止めてくれた現地人も一緒に・・・


落としたあたりに戻ったが・・・


眼鏡が見つからない・・・


時間にして3分はかかってないだろうに何故・・・


バスのスタッフも降りてきて・・・


そしてバスに戻れと言う・・・


このまま失ったわけにはいかないから私は荷物を降ろし・・・

その場に残って探す事に・・・

取りあえず持っていた予備の眼鏡をバッグから出してつけ、一時間程度さがしたが・・・

まったく見つからずに・・・


『ゆっ油断したっ!!』


『石舟斎ならこんなミスはしないものを・・・!!』  


『今までいってきた127カ国・・・そして数多くの観光地・・・そして今回のテレフェリコでの死闘・・・』


『俺は・・・思い上がっていたのだ!!』


『俺が柳生と言う訳ではないのに・・・』



『・・・』



『・・・・・・』



『すべて・・・』


『すべてたまたまだ・・・』


『たまたま行ってきたに過ぎない・・・!!』




これが落とした付近の道路




ちなみに私は眼鏡と言えども最高級に近いものを使用していた・・・

形状記憶合金でチタンフレームを持つその眼鏡は・・・

フレームだけで3万円近く・・・そしてレンズも一番薄型の物にさらに傷がつきづらいコーティングまでしているので・・・

トータルで約4万五千円・・・

ベネズエラで過ごした10日間でだいたい300ドル近くつかった計算だから・・・

これはそれを上回り・・・

そして最初に諦めた「エンジェル・フォールズ」も行ってお釣りが来る計算だ・・・

またこれは私が持っている装備の中で単価として一番高い装備品で・・・

3年前に買ったから減価償却はだいぶしているもののそれでも今まで失ったものを考えてもどう考えても最高額の出費に・・・

さらに悪いことに今もっている眼鏡の中で、予備にしているのはファーストミッションでフレームががたがたになったもので・・・

さっきまでつけていた眼鏡が・・・

私の持っている中でベスト眼鏡というべき物だったのだ・・・・!!


一時間近く探したのであたりはどんどん暗くなり・・・

バスを捕まえて国境町のサンアントニオ・デル・タチーラに着いたのは1900時・・・もう日は沈んでいた・・・




ちいさな町なのでホテルはすぐに確保したが・・・

私はホテルの中で・・・失ったものの大きさをかみ締めていた・・・



天下無双を制した筈なのに・・・


この”プロフェッショナル”ともあろう男が・・・!!




その時、私には・・・ある声が聞こえてきた・・・




「デュークよ・・・!!天下無双など・・・」



「ただの言葉じゃ・・・!!」




「目を閉じてみよ・・・」




「見えるだろう・・・お前は無限じゃ・・・!!!」




・・・



・・・・・・



『ハッ!!』



『そうか・・・』


『俺は・・・俺は天下無双という言葉に囚われすぎていたのか!!』





そっと目を閉じて・・・




もう一度見開く・・・




だが、気付いたことがある・・・・






『眼鏡がなければ何も見えねぇ~・・・!』




と・・・






第8章 エピローグ


前にも書いたが予備の眼鏡がある為に致命傷にはなっていない・・・


だから今回のテレフェリコ、そして国境までの死闘を終えても・・・


まだ私の旅行は続く・・・



そう、俺はあの時・・・


確かに心に固く誓ったのだ・・・!!


天下無双を極め・・・


『天下一旅行者(てんかいちツーリストもの)』

になると・・・


そう私の旅行はまだ始まったばかりだ・・・


失ったものは確かに大きい・・・


だが・・・


この悲しみを乗り越えて・・・



この先に進んでいくと・・・・




旅行と言う名の螺旋を・・・


行ける所まで行くと・・・





完・・・






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