アディス再び(アディスアベバ:エチオピア)

エチオピア





2005.02.08(火)

ハレルへ出てアディスへ向かう事にした。
以前出会った日本人旅行者から聞いていた事もあり、今回の移動はミニバスにする。
料金はローカルの2倍(100ブル、約1400円)するが、快適で速いというにも惹かれた理由だ。
ホテルで予約をすると出発は0200時という事だ。早朝にも程がある。

だが、0200時に用意を済ませて待っていても誰も来ない、迎えの人が来たのは0330時、彼にも別料金で20ブル払うことになっているので出費はかさむ、ホテルの前に来ると聞いていたがミニバスは旧市街の入口付近で待っているらしい。聞いている話と最初から食い違っている。それなら金を払っているのだからとそこまで荷物を運ばせてミニバスの中に積み込むと20ブルと聞いていた彼の請求は30ブルに上がっている。なんでもホテルのセキュリティーにゲートを空けるのに10ブル(約140円)払ったのでその分追加料金という事らしい。私は必要な金がかかるのなら仕方が無いと思うし、それに最初に言われた値段と変わらないなら多少高い値段でも納得はする。だが、理由があるにせよ、こうして後で請求を増してくるというのはどうも頭に来る。最初から経費として30ブルと言ってその内訳を示せばいいものをどうして彼等は毎回こんなアコギなやり方をしてくるのだろうか?

ここは相変わらずエチオピアだった。

まだ外は真っ暗でホテルからしばらく歩いてきてしまっていし、バスの料金も支払った後だ。彼の言い分が正しいのかどうかは分からないがこんな所で揉めるのもキツイので言われるがままに支払ってしまう。(当時の日記を読むと旅慣れた後と比較してやけにあっさりと色々な事に折れている自分に気付く、物価の安いエチオピアでこうして細かく色々とやられたのは後々考えるといいレッスンだったのかもしれない)

快適なはずのミニバスに乗込むとそこは人のぎゅうぎゅう詰め、一番後ろの3人掛けの場所の4人目が私の場所と言われる。これでは流石にやってられない。私は『じゃあ座席はいいよ』といって入口のスライドドア付近の通路を占領して横たわって寝ながら移動する事にした。

ハレルからアディスへの道中。写っているのは乗っていたミニバス


アディスへ向かう道中で一人の西洋人チャリダーに出会う。だが、彼のチャリはバスに積載されたままだ。

私は珍しがって彼と会話をすると彼はアディスのソマリランド大使館でビザを取って、ソマリランドへ向かったものの、挫折してアディスに戻る所だと言っている。

どういうことかと聞くとエチオピアを移動している間に大人から子供から金をせびられたり、テントを貼っていたら石をぶつけられたり、人種差別用語をなげかけられたり、指差して「ファック・ユー」といわれ続けたり、その他色々と酷い経験をしたらしく人間不信になってしまったということらしい。

私もエチオピア人の外国人に対するやり口が好きになれなかったからこれには妙に同意してしまった。

アディスへは1300時頃到着。私は今度は日本人旅行者に多く会えそうなピアッサ付近のホテルを取ることにした。

しかし快適と聞いていたミニバスの移動は私にとっては酷いものとなってしまった。

エチオピア、やはり一筋縄ではいかないらしい。



2005.02.09(水)-18(金)

2回目のアディス、ここでやる事はソマリランドのビザ取得と次の目的地への情報収集だ。

泊まっているホテルの近くにパーク・ホテルという日本語の情報ノートが置いてあるホテルがあり(その後、このホテルで従業員の盗難のトラブルがあったらしく、怒った日本人旅行者が情報ノートを別のホテルに移したらしい)、そこを訪ねていくとソマリランドを既に訪問した女性旅行者がいて実際に行ける事が確認できたのも良かったし、それに情報ノートを見るのは初めてで、書いてある情報の何もかもが珍しくついつい毎日のように通って読んでしまっていた。

また日本人旅行者が多く集まる所だけあって(常時10人前後は泊まっていた)エジプトからスーダンへ行くフェリーに一緒に乗っていた人やスーダンの砂漠越えを一緒にした人等とも再会する。

エチオピアにこんな場所があったなんてと、ついつい感心してしまった。

ビザの方はというと、ソマリランドの大使館は場所が分からなかったので観光案内所で問い合わせるとそこのミセスがきちんと調べてくれる。
場所が分かれば後はあっさりとしたもので何の問題も無くビザは発給される。そこで働くスタッフの感じもいい。

ソマリランド大使館(実際は連絡事務所)付近の景色


ソマリランド大使館へ行く路地に入る場所にあるスーパーマーケット。市の中心にあるショボイものと比べると一応立派(品揃えは日本のコンビニ以下だが・・・)


だが、出発までに時間がかかった事は別の要因からだった。

情報ノートやソマリランド大使館からだけの情報では不十分と考え、日本大使館で何か情報があればと聞きにいったらそこで猛烈な反対にあったのだ。

担当が言うには危険すぎるので頼むから止めてくれということだった。

彼に聞いた話を纏めるとこういうことになるだろう。

1.エチオピアに於いてもソマリ人が居住するソマリ州は中央統制から外れている事。また州都のジジカは州とでありながらソマリ州の北西部の端にあることからそこが危険地帯であると判断される。
2.ソマリ人は氏族主義で各氏族間に縄張りがあり、それを越える事はソマリ人同士であっても不可。外国人が一人で行く等考えられない。
3.国連やNGO等でも入る時はこの氏族の利益を考慮して金を払って安全になるようにして活動しているがそれでも殺されている。
4.エチオピアでのテロの温床はこのソマリ州で、ソマリア、ソマリランド等ともリンクしている。(そもそもエチオピア国内にソマリ人が住む州があるのも不思議に感じるが、ソマリア全土とソマリ州をあわせると隣国に大国が出現するのでそれを防ぐ緩衝帯にする意味もあってエチオピアはソマリ州を抑えている)
5.ソマリ人は信用できない民族でどれだけ仲良くしても何かの拍子で裏切ってくる。だから危険だ。

まだ他にも色々と聞いたが、これだけで判断すると死にに行くような印象を受けてしまうだろう。


だが、この頃の私には別の考えもあった、ジブチで会った現地人にはハルゲイサを訪れた人もいていい所だと勧めていたし、それに国境も親切だった。アディスにある大使館でも安全だと言っている。それに日本人旅行者のみならず他の国の旅行者の訪問もすでに確認している。

エチオピアとソマリアは歴史的に反目していた国同士なのでお互いの視点が正反対になるのも当然だし、それに日本大使館は基本的に事なかれ主義だ。ちょっとでも危険と見ると止める方向に動くのは当然の事だろう。

勿論彼の情報を軽く見たわけではない、この後もソマリランドの大使館にいったり、旅行代理店などを聞き込んだり再度情報を収集して数日間検討しだが、出した結論は行く事だった。これには飛行機という選択肢も考えたがハルゲイサの空港が工事で閉鎖中であり、最終的には陸路によるアクセスをする事に決めたのだ。


ここで誤解を招かないように書いておくが私は何も好き好んで危険な所に行こうとしている訳ではない。双方から得た情報や国境まで行った印象、それらを総合的に判断して首都のハルゲイサに焦点をあて、短期で行って帰ってくるなら問題はないと判断したからだ。

旅行は本来安全なものでは無いし、どんな所に行くのにもリスクはつきものだ。

例えロンドンやパリでも爆弾テロに遭うことはある。

だがそれで「ロンドンは危険だ」と言う人はいない。

これはそこがメジャーな場所か、マイナーな場所かということだけで先ず偏見という名のフィルターが立ち上がり、それによって安全、危険というイメージが増幅されているからだ。

だからロンドンで爆弾テロに遭っても「あの人は運が悪かった」で終る訳だし、ソマリランドでもし死んだら「それみたことかっ!あんな場所に行くからそんな目に遭うんだ!」と人は考えるのだろう。

こうした人の考えを完全に否定するつもりは無い、私も知らなければ「ロンドン安全説、ソマリランド危険説」になるだろう。


ただ、私の旅行はもう動き出している。

ソマリア本土に行けない今(こちらも調べてはいたが、こっちに行くのは完全に自殺行為と言ってよかった)、ソマリランドという”自称独立国”を見てみたいという好奇心は強く、だからこそ今までそれぞれの場所で調べて安全にいけるかどうかを確認し続けて、そして行けるという結論を出したのだ。


その結果、失敗してどうかなり、人がとやかく言おうと考えようとそれはもう私の知った事ではないだろう。とりあえず調べられる限りはもう調べたのだ。



またここでは偶然ソマリランドに行くという日本人旅行者とも知り合うことになった。

ソマリランド大使館に情報を聞きに行った時に「君の他にも日本人がビザを取っているよ」と教えてもらい、パーク・ホテルに泊まっているだろうとアテをつけてその人を訪ねたらこれがドンピシャだったのだ。彼はソマリランドが50ヶ国目となる歴戦のバックパッカーで、当時私にとって未知だった中央アジアや危険と言われるアフガニスタン等も既に訪問した後だった。

彼はハルゲイサの後ジブチに行ってからアディスに戻る予定だったが、ここからハルゲイサまでは同行する事にする。陸路で行くならまたあの国境までいかなければいけなかったので片道とはいえ道連れが出来るのは実に心強い事だった。


最終的に行く事を決めてから、出発前日に日本大使館に行く事にした。(私達がソマリランドに行くといっていた事を日本大使館の担当は知っており、出る前に寄って詳しい日程を教えて欲しがっていたので)

すると担当者が「実家に連絡しているのか?」と聞いてくる。掛けていないと答えると大使館の電話を使って連絡していいと言ってくる。

2人とも少し何か嫌な予感はしたが先に同行する日本人(この後は「森田氏(仮名)」)が電話を掛ける事にした。



担当者はその受話器を急に奪い取るようにしてこういい始めた

「息子さんがイラクと同じ様な危険な場所にいこうとしています。止めてください!」

という内容だ。

彼の両親に一気にまくし立てている。

彼の両親もさぞやびっくりとした事だろう(後で聞いたところ彼の母親は泣いていたそうだ)。

その後しばらく話していたが埒が明かなかったようで話は保留となり次は私の番になる。

これを見た後で実家に掛けるのは嫌だったが森田氏一人だけ掛けさせるのも悪かったし、それに一応大使館員が心配するような場所に行こうとしているのだ。確かに伝えておく方がいいのだろうと私も電話をする事にした。

今度は私が最初に話してその後に担当者と変わる、だが話す内容は森田氏の時と同様で私の方も埒が明かなくなる。受話器を受けていたのが母から父に代わった事も余計に混乱させられた原因だった。父は「大使館の人がいう事は絶対だから従いなさい」というスタンスだ。知らない人から見たら一個人者より国家の方が信用出来るのも良く分かる。

私は再度受話器を受け取り、『大使館の人はこう言っているけど、自分でも色々と調べて大丈夫だと判断しているので心配しないでくれ』と言い、さらに『止めても止めなくてもどっちみち行くことに決めたし、ソマリランドに行っている間も大使館とも連絡するようにするから後はほっといてくれ』と無理矢理納得させるようにして受話器を切る事にした。

担当官が我々を心配しているのは確かだ。

日本大使館は邦人旅行者の安全に対する責任を持つので、我々旅行者がどこかにいってそこで何かがあったら大使館としても動かざるを得なくなるのも現実だ。そして日本大使館は旅行者に対してその国に行く事を禁止するという強制力は持っていないという事も知っている。

旅人同士でよく聞く

「旅は自己責任で」

という身勝手な台詞通りに事が運ばないのが日本のパスポートを持っている人間に対する制約なのだ。

この制約に対する私の考え方には賛否両論あるだろう。

私の考えは予想される危険の度合いに応じ、今までの様なただの勧告ではなく実際の制限をしてもいいのではないだろうか?ということだ。

そして日本政府が制限する危険度の高い所にいく場合は道場破りの台詞では無いが「日本政府が危険とみなすこの国に入国することによって発生する全ての責任を自分で取る」という形で申請させてそれに対する責任が自分だけで取れるようにすればいいという考えだ。

そうすれば旅行者も敏感に危険情報を収集することになり、危険な国に安易に入国することもなくなるだろうし、それにそうまでして行きたいとなると行く人間も十分に情報を調べるし何かあった所で国は全く当てにならないことになるので「旅の自己責任」は完全に取ることが出来るだろう。(賛否両論あると書いたのはこの制度では日本政府が邦人を守る義務を放棄することになるし、人によっては税金を払っていたのにいざとなると大使館は面倒もみないと考えると思ったからだ。)


だが、現状はそうではない。色々調べた後となっては彼の持つ情報はフィルターがかかったものである事も確信していたが、それでもそれだけ心配してくれてくれた彼に対する義理もあり、そしてこの制約の範囲内で個人として出来ることとしてこちらの行動を現地についても連絡をするという事で折り合いをつけ、我々はソマリランドへ出発することにした。



ソマリランド・・・


入国以前からこんな調子では先が思いやられる・・・



2度目のアディス市内







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