ロシア
経路図
2006.09.19(火)
シベリア鉄道に乗って5日目・・・
一度くらいはと食べてみた朝食、ちなみに食事はたいしたものではない。というかむしろ不味い。
相変わらずの「寝たきりツーリスト」っぷりは変わらないし元々水が高い所から低い所へ流れるが如き、楽なら楽な旅行が良いと考える私にとっては「もうこのままシベリア鉄道の中でずっと寝たまま旅を続けたい」とまでポジティブに考える様にはなってきたが「始まりがあれば終わりがある」のが旅行というものだ。
残念ながら今日でこんなだらけきった生活もフィナーレになる。
相変わらずの針葉樹林
ここで大抵の者なら「気持ちを新たに!」といった所だろうが、「面倒臭い」以外の感情はこの時にはもう無かった・・・
地方の村
寝て起きて時折外を眺めて・・・
しばらくそんなどうでもいい動作を繰り返していると何時しか鉄道はモスクワ近郊に差し掛かる。
モスクワ郊外
「カチッ!」
何やら心の中で音がする。そう、今日これまでの私は「寝たきりプロフェッショナルツーリスト」だった、それがモスクワ郊外の香りを敏感に嗅ぎとり、 心のスイッチを切り替えたのだ・・・
すれ違った近郊鉄道
そのツーリストがアマチュアかプロか?
その差の一つにはこのスイッチの有無がある。
周囲の微かな兆候の変化に応じて即座にこのオン・オフを切り替えられるかどうか?
私が”ただのアマチュア”ならまだ「ただ降りたくない」と駄々っ子をこねているだけだったろう・・・
旅行で一番危険なのは”新しい場所に到着したその瞬間”だ。対象先の情報をまだ体で感じる前に私を狙う誰かによって否応無しに悪い方向に巻き込まれる。そんな危険を孕んでいるのだ。
腐っていてもそこはプロフェッショナルと呼ばれたこのデューク・東城、アフリカを無傷で乗り越えたスペシャルな漢だ・・・
このスイッチを「モスクワモード」に完全に切り替える。
そして列車はモスクワの終点であるヤロスラフスキー駅へようやく到着する・・・
ヤロスラフスキー駅
久しぶりに荷物を持って降りるホーム、煙草に火を灯て大きく吸い込んで吐きだす。
4泊5日のシベリア鉄道の旅がようやく終わったのだ・・・
ゆっくりと鉄道を眺めながら煙草に火を点ける。
『長かった・・・』
シベリア鉄道、日本人旅行者なら誰しもが特別な旅情を感じるこの鉄道ともこれでようやくお別れだ。
その割には「良く寝たな」というどうでもいい感想しかなかった事はここでは置いておくとして、同室だったフランス人とイギリス人にも別れを告げ、私はお馴染みのキャリーバックを転がしながら外へと向かった・・・
ヤロスラフスキー駅
シベリア鉄道の旅、それは温室で囲われたまるでお嬢様の様な日々だった。
だがこれまで私を守ってきたその箱はもう無い、久しぶりに触れた街の空気は私にそれを否応なしに分からせる、車窓から傍観者のように眺めていた景色が今当事者として私に迫ってきていたのだ・・・
駅から外に出た時、私はそれまでの「寝たきりツーリスト」から1人の「プロフェッショナル」に完全に戻っていた・・・
ヤロスラフスキー駅とその周辺。
プロフェッショナルモードにスイッチを入れ、眺めた街並は今まで見た事も無い独特な物だった・・・
「他の何処とも違う」
その感覚が新しい場所に来たテンションを上げていく。
東欧見聞録、”東欧パート”の開始の地、モスクワはこうして始まった・・・