イスラエル
2006.05.24(水)
今日は新しい国への旅立ちの日だ。
次の目的地はキプロス、この国も一筋縄ではいかない国際情勢の下に存在する国ではあるがその前に私は対決しなければいけない闘いがあった。
「ベン・グリオン国際空港」
バトルのステージはこの場所だ。
アマチュアのツーリスト共なら空港というと「ただ飛行機に乗るだけ」の場所と考えるだろう。だがそれに「世界一厳しい」と名がついたらどうなる?
それもイスラエル、私のパスポートにはイスラエルから見て好ましからざる国々のスタンプが数多く押されている、それにイエメンに至っては滞在延長スタンプまで押されているのだ。
「決して避けられない闘い」
というのが待っているのは自明の理であろう・・・
フライトの時間は07:05時、通常国際線は2時間前に空港に到着と言うのがセオリーだがここは敢て「+1Hr」として3時間前に到着するように出発した。
朝、03:00時、ドミを出てタクシーを捉まえる、彼はメーターがついているのに「30シェケル(約1050円)」と言ってきたので「メーター」と言って降りると「仕方が無い」といった顔で私を乗せてメーターを倒す、鉄道駅までは26.5シェケルだったので100円ぐらいの差だが少額とはいえフェアでないのはいつでもちょっと嫌な気にさせられるものだ。
鉄道駅から見た朝のテル・アビブ
右と下が鉄道駅、朝早くからやっている
鉄道チケットの販売気に駅舎の中とホーム。ビルが覗けるチラリズムは単なる好み
駅のホームから
鉄道は03:29時に来て03:39時にはベン・グリオン国際空港へ到着。
僅か10分足らずのショートトリップだ。
テル・アビブの鉄道とその中。到着したホームに空港内
空港に予想よりやや早く到着できたので少し辺りを見渡してからチェックイン・カウンターへ並ぶ。
係に呼び止められ、列からはずされたのはあっという間の事だった・・・
『来たか・・・』
心の準備は出来ている、それに入国時も想像以上に楽に通過出来ているし、今回は入国ではなく出国だ。これから国に入って騒擾を起こすと思われるケースでこのような国で一人一人のチェックが長いのは分かるが出国は入国ほどではないのが定説だ。
そしてそれ以上に「何一つ出国を妨げるような物は無い」と確信に満ちている。私は列から少し離れた場所で2人の係に囲まれながら推移を見守る事にした。
まず私に声をかけてきたのは女性のスタッフだ、パスポートの一枚一枚丹念に眺めて少しでも怪しい国の名前があったら「なぜその国に行ったのか?」という質問をしかけてくる。回答は『サイト・シーイング(観光)』の一点張りだ。そもそもそれ以外の目的で渡航はしていない。ちょっといやらしいのは時折元に戻って同じ質問をしてくることだ。この辺りは人を尋問する時の定石で同じ質問に対する答えの違いから「綻び」を探しだし「嘘を暴く」という手段だが私には通用しない。手口を知っているという以上に「観光以外していない」からだ、事実を事実のまま伝えれば間違い様が無い。
だが私の予想とは裏腹にある程度答えたら無実が晴らされるかと思いきや何故か徐々に長期戦の様相を呈してきた。
質問をしながら今度は私の荷物を「これはなんだ?」と一つ一つつぶさにチェックし始めてきたのだ。ある程度の荷物検査は織り込み済みだが、X線を通した後の荷物で、それもアフリカの後進国のように「物珍しいから、見た事無いから」とほぼ好奇心で延々と荷物検査するのとは違って、彼らは「私の荷物の中に何か仕掛けられていないか?」というのを仕事として丹念に見ていったのだ。
それも透明のビニール防水処置をしていて中身が見えている物やこれも透明のタッパーに入れている小物類までいちいち開けて見せて説明しなくてはならない。
『世界一の名は伊達ではない・・・』
その徹底ぶりは思わずこのプロフェッショナルを唸らせるほどだった・・・
とは言いつつ時間は有限だ。出発まで徐々に 時間が蝕まれていく・・・
『そろそろヤバい・・・』
ふと時計をみると私のチェックが始まって既に2時間経っていた・・・
『!』
出発まで後1時間、下手したら空港の荷物検査で乗り遅れるのでは?と思い始めた頃、ようやく全ての荷物検査と質問が終わる。
私の便は・・・
「時間が無い、我々が先導しよう」
係が私に話し掛けてくる、まだ出国スタンプすら押してもらっていない。ここはその申し出に乗る以外の選択肢は無いだろう・・・
空港内
係の者が私を割り込ませ出国スタンプを押してもらう。
『サンキュー』と言いそうになったがそもそも『お前らがあんなにネチッこく検査しなければ余裕を持って間に会っていた』事を考えると感謝している場合でも無いしそもそも時間が無かった。
楽しみにしていた免税店でのショッピング(ウインドウ・ショッピングオンリーです)も出来ず、微妙に余ったシェケルを手数料を取られて全くお得感の無いまま何とかフライトに滑り込むのが3時間以上もいたベン・グリオンでやれた精一杯の事だった。
乗った飛行機
フライトは先進国らしく予定通りに出発。
去りゆくテル・アビブ、そしてイスラエルを眺めつつ私は今回の激闘についてこう考えていた・・・
『世界一出入国審査の厳しい空港・・・』
色々とあったが結局やった事は
『ただ飛行機に乗っただけ』
であった。と・・・