日本
2012.05.20(日)
今日は待ちに待ったチャンピオンズリーグ、バイエルンとチェルシーの決勝戦だった。
戦前の予想はバイエルン有利、今回の開催地は地元ミュンヘンなのでホームの利で圧倒的な声援が彼らのタイトルを後押しする。それに決勝に辿り着くまでお互い退場者は出しているが単純にチェルシーの方がより痛い形で決勝に臨むというのも分かっていたからだ。
タイトルの話をするとチェルシーはイングランドのリーグでは6位と低迷してはいるがFAカップ(イングランド・カップ)のタイトルは手にしている。
しかしバイエルンはドルトムントに阻まれて国内リーグ2位、国内カップ準優勝と後が無い状況、以前チャンピオンズリーグを土壇場で逃したチェルシーも当然強いモチベーションで来るだろうが今年戦力のウイークポイントを補強してノン・タイトルとなるとドイツの盟主としての沽券にもかかわるのでバイエルンの方が是が非でもタイトルが欲しいと強い気持ちで戦いに挑むだろう。
そう、地元開催のこの決勝でタイトルが取れれば・・・失意のシーズンを歓喜のシーズンに変えられるのだ!
民放で放映され、またたまたま休みだったのでリアルタイムで最初から見る事も可能だったが、時差の関係で深夜3:00頃スタートなので寝てもし起きれたら途中からでも見るつもりでベッドに入っていた。
起きたのは後半28分、寝ぼけ眼で試合をみると0対0のイーブンだ。
地元の声援を受け圧倒している事を期待していたのだが後半この時間で点が入っていないというのは攻め切れてない、もしくは上手く守られているということなのだろうか?画面で見る限りリズムはバイエルンだった・・・
そして後半38分・・・
突如、突然の歓喜が湧き上がる。
応援しているトニ・クロースのクロスからミュラーがヘッドで得点。若手ドイツ人プレーヤーによる先制弾!
この時までに10数本のシュートを放っていたバイエルンにしてみたらやっとこじ開けた一転だ。
私も思わずツイートしてしまったぐらいのものだ。
得点してから数分、攻撃的なメンバーを投入して攻めにかかるチェルシーに、バイエルンがカードを切る。
「ダニエル・ファン・ヴュイデン」、ディフェンダーだ。そして交代選手は得点を決めたミュラー・・・
『?』
センターバックの投入は当たり前だ。しかしここで攻守にダイナミックに動いていたミュラーを変えるとは・・・
放送の声は「どうやら大分前からミュラーは足をつっていた様子です」
と告げていたが、ビッグマッチで得点するラッキーボーイをここで下げるとは・・・
まあいい、後は残り5分も無い、逃げ切れるだろう。と思った直後、後半43分、コーナーキックからディディエ・ドログバがヘッドでゴール!
バイエルンの守護神ノイアーの左手は当たっていたが・・・あのコース、あのスピードなら当てられるだけでも超一流だ。
だが残念ながら無念のゴールで1対1へ・・・
意気消沈したバイエルンに変わって今度はチェルシーのリズムに。
なんとか凌いで延長となる。
そして延長前半3分ぐらいにリベリがペナルティー・エリアで倒されPKに。
蹴るのはロッベン、これまでのPKの大半を任されてきた彼だったが私の頭の中にはレアルで5番手のPKキッカーを務めたシュバインシュタイガーの名前があった。
PKはチェフの高セーブでストップ。バイエルンは折角手繰り寄せた勝利の女神が最後の最後でキスを拒んだ形となった。
その後一進一退が続き、結局勝者はPK戦へ。
世界最高のゴールキーパーの一人であるチェコ代表のチェフ、そしてドイツ代表のノイアー。見どころ満載だ。
チェルシーは最初のキッカー、スペイン代表マタがノイアーに止められる。
そしてドラマはバイエルンの3人目、まさかのゴールキーパー・ノイアーがキッカーを務める事に。
ノイアーは読まれてはいたものの、クールにPKを決める。
『これで勝ったか?』
正直勝利が一瞬頭をよぎった。だがバイエルンの4番手は途中出場のイビチャ・オリッチ・・・
『あっ!』
私の頭の中ではここはトニ・クロースだった。レアルでPK戦でストップされていたがこのオリッチという選択肢に不安を覚えていた。
そしてオリッチのPKはチェフがセーブしイーブンに。そして次にチェルシーはアシュリー・コールが決める
『・・・・・』
これで完全にイーブンになる。
そして最後のキッカーはシュバインシュタイガー、当然の選択だ。
チェフの前に立つシュバインシュタイガー、少しみると助走距離が短い。
レアルの時のように強引な行き方ではなくやや慎重に見える。そして助走に対してフェイクを入れるチェフに一度動作を止めて蹴ったボールはポストに嫌われる・・・
チェルシー最後のキッカーはドログバ、2008年の決勝では一発レッドで退場した男、雪辱するにはまたとない機会だ。
そしてドログバの蹴ったボールはゴールに吸い込まれ・・・
チェルシーが初優勝を遂げたのだ・・・
バイエルン、5度目の欧州制覇ならず、そして国内、欧州とも全て2位(準優勝)という、かつて2002年のレヴァークーゼンと同じ結果に・・・
勝負の世界に「たら・れば」は禁物だが勝負の世界だからこそ「たら・れば」が出てくるのが人間だ。
私の予感は、単なる結果論でミュラーの代わりにファン・ヴュイデンを入れなかったらどうなっていたのかとか。延長前半のPKをシュバインシュタイガーが蹴ったら入ったのかとかオリッチの変わりにクロースが蹴っていたら良かったのかとか、実際にはやっていないので分からない。
ただ、私の今まで見てきた傾向としては「名手」と呼ばれる人間は必ず一度は大試合でPKを外している。古くは86年のプラティニ、ジーコ、ソクラテス。あのマラドーナも90年のW杯で外しているし、近い所では準決勝でレアルのクリスティアーノ・ロナウドやカカが外すとは思ってもみなかった。
あくまでもファンとして延長前半のPKはミュンヘン出身のシュバインシュタイガーに蹴ってほしかったし、PK戦の4番手はバイエルンの下部組織から育ってきたクロースに蹴って欲しかった。そうすれば成功、失敗はともかく、「仕方が無い」と思えたのだろう。
だが、地元で開催されるチームが戦う初のチャンピオンズリーグの決勝で、4度の歓喜(ミュラーの得点とリベリのPK獲得、ノイアーのPKストップにPK成功)の後に訪れたのは極大の失望だった・・・
チェルシー、今回のプレミアでは監督の途中解任も経験し6位と低迷し、2008年の決勝ではPK戦の末タイトルに手が届かず、キャプテン・テリーまでも累積警告で欠いた状態で決勝に臨んだチーム。今回出場したプレーヤーはこれがチェルシーでのラストマッチになるベテランもいる。ここは暫定監督についたロベルト・ディ・マッテオの手腕をここは褒めるべきなのだろうが・・・
私には最後の最後までバイエルンが目の前にいる勝利の女神を掴み損ねた結果の自滅による敗北に見えていた・・・
ラーム、シュバインシュタイガー、クロース、ミュラー、ノイアー、アラバ、バドシュトゥバー、ゴメス、ロッベン、リベリ・・・
まだ30前の選手を多数そろえるバイエルン、そしてこの3年間で2度の準優勝という不本意な結果に終わった今回のチャンピオンズ・リーグ。
彼らはまだ若い、雪辱と復讐の機会はあるだろう。
私はドイツ代表のファンであり、国内ではドルトムントが一番好きだがチャンピオンズ・リーグならドイツのチームを応援する。
まずはユーロ2012で、そして来年のチャンピオンズ・リーグで・・・
今度こそ優勝に手が届いて欲しい・・・・