その漢、”アンチェイン”につき・・・(ダカール:セネガル)

 セネガル





2006.01.07(土)



 その漢は見るからに只者ならぬオーラを醸し出していた・・・


 それはゴレ島を観光してダカールに戻りネットカフェにいた時の事だった。

 2006年にも関わらず使っているWindowsは98、さらに日本語が打てる台が一台しかなく特にコーヒーを頼める訳でもないそのネットカフェで私が席につきネットを始めかけた時、その漢は突然私の目の前に現れてきたのだ。

 「まだしばらくかかりそうですか?」

 問い掛けの温和な物腰、旅行を長く続けると同じ旅行者との出会いをラフにして礼儀知らずと思う事もあるが彼には全くそれが無い。では短期旅行者なのか?そうではない事は彼の一瞬痩身に見えるが実は鍛え抜かれて引き絞られた物だと瞬時に分かる浅黒い肉体が雄弁に物語っている。

 そして彼が普通のバックパッカーでは無い事はその服装からも窺える、日本人が持つステレオ・タイプなバックパッカーのイメージと言えば無造作に伸ばした長髪に口ひげ、よれよれのズボンに小汚いシャツ、いかにも放浪をしていますとPRしているようなイメージが大半を占めるだろうしご他聞にもれずこれまで色々な国で出会った長期旅行者の中にはこういったタイプを良く見かけていた。

 ただそういった者の大半は「旅に酔っている」というタイプが多く、悪く行ってしまえば明らかに日本社会不適格者と思える者も多かった。

 だが、彼は全く違っていた・・・

 短く刈り込んだ頭髪に帽子、服装も質素な身なりだが良く清潔に保たれている。

 そう、ステレオタイプの長期旅行者に良くありがちなズボラさを全く彼から感じ取る事が出来ないのである。

 (何者なんだ?)

 私は彼の身なりに物腰、そして話し方から明らかに今まで出会ってきた旅行者とは異質なものを感じていた・・・

 『いやぁ~・・・いま席についたばかりなので・・・一時間ぐらいはちょっとかかりそうですねぇ・・・』

 「そうですかぁ、それならちょっと待ちますよ」

 何よりも彼を特徴づけているのはその眼光だ。態度はあくまでも柔和だが独特な光を放つその目の中には彼の何事にも屈しないといった強い意志を感じさせる。

 アフリカにはコアな旅行者が多いという噂だ。

 だが本当にコアと思えるような旅行者は数少なかった。

 だが・・・

 彼の持つオーラはこれまで私が見てきた旅行者とは明らかに一線を画していた・・・

 (只者ではない・・・注:後日譚になるがどう只者でないかはこちら⇒。「イカすバンド地獄」)

 私は知らず知らずにこの漢に興味を持ち始めていた・・・

 『そうですか、こちらも出来るだけ早く終わらせるようにしますよ、所でどちらから?』

 旅人同士の「どちらから」は彼の出身地を聞いている訳ではない、これまでの旅行でどういったルートでいまここに辿り着いたかを聞いている。

 「モロッコの方から南下してます、そして今カボ・ベルデへ行って帰ってきた所なんですよ」

 思い当たる節がある、ガンビアで元旦に出会った日本人のペア、モロッコで一緒になった日本人がアフリカ全ての国を周ろうとしていて今カボ・ベルデへ行っている所だと言っていた。

 その時は興味はもちろんあったがルートや所要日数から出会う事はおそらくないだろうと思っていたが・・・
 
 まさかこんなネットカフェで、それもこのタイミングで出会えるとは・・・

 『ひょっとしてモロッコって誰か一緒に周ってません?ガンビアで出会ったペアの人がアフリカ全土を周ろうとしていまカボ・ベルデへ行っていると言ってましたが・・・』

 「えっ!彼らに出会ったんですか?」

 『ええ、ひょっとしてアフリカ全土をこれから周ろうとしていませんか?』

 「はい、そのつもりです」

 ビンゴッ!

 これで全ての符号が一致した、間違いない、この”漢”だ!

 私は私の幸運に感謝した。

 『丁度いい、私は逆ルートでアフリカ一周をほぼ終えてこれからモロッコへ向かいます、カボ・ベルデもこれから・・・、良ければお互いの情報を交換しましょう!』

 「えっ!アフリカを周ってきてたんですか!それはこちらも好都合です」

 カボ・ベルデくんだりまでわざわざ行く旅人は少ない、そういった意味でもライブリイ(生きた)情報が手に入る私はラッキーだし、彼がこれから行くところは私がつい最近通過してきた所だ、お互いにとってメリットは大きい。
 
 私はネットをする手もそこそこに必要な分だけアップして彼と交代する。

 もうすでにネット以上に彼の方が気になり始めていた・・・

 聞けば彼はアフリカに来るまでにカナダでホームステイしてフランス語をマスターしているという、今まで出会った旅行者でそんな用意周到な奴はついぞお見かけしなかった。それだけでも彼が他の旅行者とは明らかに違っているという事が分かるだろう。(注:彼は語学に関しては既にスペイン語を修得しておりその卓越した語学力を駆使した話しはこちらへ⇒「神の村」)


 彼はネットに向かい始める。

 最初のメールは彼女にだった。

 内容は「これから行こうとしているルートから来た旅行者に会えて情報を貰えるから安心して!」といった事らしい。

 よくよく聞いてみると彼女は彼の長期旅行にOKを出しているそうだ。

 彼女もいず、常にソロ(単独)で動き回っていた私から見たらアフリカくんだりまで彼女を置き去りにしてこれる彼の様な人物は殺してやりたい羨ましい限りである。 

 お互いネットを終え軽食を取り後はホテル(違うホテルだったので彼のホテルに行って)で会話を楽しむ。

 アフリカの話もさることながら、彼は私の予想通りにそれまでに十分な経験値を積んでいた旅行者で既に南米大陸を踏破した実績も持ち合わせていた。

 この時に聞けた話は一部だが彼の凄腕な所はあの”マチュピチュ”に裸足で訪れた数少ない、というかおそらく唯一の漢であることからもうかがいしれるだろう。


 この久しぶりにあった正統派の旅行屋


 その漢の名は”ビスケット・コミネ”と言う名だった・・・


 そして彼女を置き去りにして長期旅行に平気で出ていく彼が”アンチェイン(繋がれない)”な漢だということは程なく私の理解する所となった。

 ルートが真逆になる彼と行動できる日は殆どないかもしれないが・・・

 このプロフェッショナル・・・

 しばらくはこの漢から目が離せなさそうである・・・






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