ミスター(フリータウン:シエラレオネ⇒コナクリ:ギニア)

 シエラレオネ



2005.12.11(日)

 「ギニアとの国境に凄い奴がいる」

 YMCAで出会ったポーランド人がそう言っていた。

 これからはギニアに向かう、タイミングさえ合えばこのプロフェッショナルもその男にあえるだろう。

 朝早く、05:30時に完全停電になっている市街をシェアタク乗場に向かう。YMCAから歩いて15分程度の所だがフリータウンも決して治安に信用のおける都市ではない。それを暗闇の中で行かなければいけないというのはあまり良い考えとは言えないが「他に選択肢が無い」から仕方のない事だろう。

 手段はシェアタク、ミニバスとあったがスピード優先でシェアタクにする。
 
 出発は06:30時、結構いい感じの出足だった。

 フリータウン郊外に出てしばらくたつと道はダートに変わるもそれほどひどいものではなかった。

フリータウンを出てから




 ここでは移動中にドライバーがヤギを轢く事に。ヤギは骨折していたがドライバーは当て逃げする。乗客の一人の男性がドライバーに「お前のした事は許される事ではないから俺は決して忘れない」と言っていたがそれは確かにそうだろう。轢かれたヤギは後は食卓に上がるしかなく彼のした行為は明らかに他人の財産を葬っている。まあ結局降りずにそのまま乗り続けている私も同じ穴のむじなかもしれないが・・・

引き続き道中の景色を


国境に近づいて・・・




 そして国境に近づくと最初のイミグレが。賄賂請求されるもそこは強硬に断る。

 私は良かったが先ほどドライバーがヤギを轢いていたのを怒った男・・・長くて面倒なのでヤギ男とするが彼は現地人なので私のように拒絶が出来ず、国境を越えたら両替して払えるという彼の言葉を信じてお金を貸すことにした(といっても日本円だと100円ぐらいだが)

 そして次に寄ったカスタムは面倒だ、荷物をサイドポケットまで全部開封させられた挙句に身体検査まである、ダイヤの不法持ち出しを恐れるシエラレオネならではという所だろか?

 だが、まだ”あの男”には出会えていない。

 奴は一体どこにいるんだ?

 その謎は国境を超えると簡単に解決する。





ギニア





 ギニアサイドに入ってすぐにポリスの検問がある、その場所にヤツは居た。
 
 身長は180cmを越え体重も少なくとも90Kgは越えているだろう。横幅を考えると巨躯と呼んでもいい体つきだ。
 スキンヘッドの頭をポリスの制服で身に包んでいた彼。

 『只者ではない』

 見た瞬間に体の中に電流が走っていた・・・

 彼は私を見ると厳かに「マネー」と言って来る・・・

 『予想通りだ』

 こちらは・・・当然ながら拒絶する。ビザのレシートを見せこちらの旅行の正当性を主張する。大抵の場合にまず最初にやる事はこれだ。

 だが・・・彼の態度は変わらない。

 「マネー・・・」

 そんなやりとりを1,2分ぐらいだろうか?少ししていると・・・

 彼が突然第2のステージへと突入を始めた。

 巨体を小刻みに揺らし始める、戦闘開始の合図のような物だ。そしておもむろに大声で私に向かって呪文を唱え始めたのだ。

 「ギブ・ミー・マ~ネー、ギブ・ミー・マ~ネー、ギブ・ミー・マ~ネー」

 『こっこれだっ!ポーランド人の言っていた事は!』

 独特のテンポでフレーズを口ずさみリズミカルに体を揺り動かす様は新手のラップミュージックとも譬えられる。

 そして何よりも凄いのはフレーズが「ギブ・ミー・マ~ネー」とど直球もど直球な事。他に捻りは無いという純粋さだ。

 このプロフェッショナル、かつて色々な賄賂請求を受けてきた。

 もちろん賄賂請求は違法行為だがそれぞれの場所や立場でもっともらしい理由を何かしらつけてきようとするのがこれまでだったが・・・

 ここではそんな混じり気は一切なし、全てが「お金くれ」という一言のみ。

 『こっこんな・・・こんなストレートな賄賂請求は生まれて初めて!』

 事ここに至ると『賄賂ってこんなに大胆に請求できるんだ~』と怒る心も忘れ去ってむしろそのダイレクトさに清々しささえ感じてしまうくらいの物だった。

 これが・・・これがポーランド人の言っていた「ミスター・ギブ・ミーマネー」の実力だったのだ!

 『やっやるじゃない』

 旅行者にとって賄賂は敵だ。

 だが・・・この他に類を見ないストレートな請求っぷりにコミカルな体の動き、彼の唱える「ギブ・ミーマネー」の呪文の罠に私は簡単に陥ってしまっていた・・・

 『分かった、払うよ、でも2000ギニア・フラン(約70円)な!』

 と、値切りはしたものの、ほぼ無抵抗なまま・・・むしろ「新しい大道芸を初めて見せていただいた」様な新鮮さを感じて喜んで払ってしまっていた・・・


 私は彼の一連の行動に対して敬意を称して彼をこう讃えたい。

 
 そう、「ミスター・ギブ・ミー・マネー」と・・・ 






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