ベナン
地図は左がトーゴ、右がベナン
2005.10.23(日)
私をこれから待ち受ける冒険・・・
それは西アフリカでのハイライトの一つに十分に成り得る物だった・・・
そう、上の地図を見てもらえば分かるようにベナン、トーゴとも縦に600Km程度と縦長の国土をしている。
アフリカのインフラの脆弱さを考えるとその距離は容易に到達できる物では無い。
その縦長の国土を・・・
それも2ヵ国間にまたがって一気に横断する。
このプロフェッショナルならではのスペシャルな冒険だ。
ベナンでは既に内側に少し入ったコトヌーに滞在して数日過ごし、トーゴは国境と隣接するとは言え首都のロメで足止めを食らう事は分かりきっているので「一気横断」というタイトルはつけた段階でまやかしである事は明白だがこの際はそんな事などどうでもいい。
どうせアフリカの国なんて名前を聞いても誰もピンと来ないしので気にしないだろうし、横断に要する距離もベナン100Km、トーゴ60Km程度しかないが、縦断も横断も同じ2文字なので大した違いは無い。それに『ベナン・トーゴを一気に横断した』と言えば”この人なんだかすごい事やったんじゃ!”と勝手に勘違いしてもらえること請け合いだ。
大事なのはフィーリングと雰囲気。
後は大した問題ではない。
それよりも冒険で一番大事なのは
『ハードルは可能な限り低い所に設定する』
というアマチュアとは一線を画したプロフェッショナリズムだろう。
飢えに飢えてようやくありついたクッキーの美味さは「飢えたことによるプレミアム」がついているだけで所詮はただのクッキーに過ぎない。
飢えずに普通にゴディバのチョコにありついて『美味しい~』とやっていた方がいいに決まっている。
っと、大分話が外れたが、私はいよいよこの冒険に身を乗り出すことにした・・・
朝一度ホテルを出てロメまでの料金を確認する。選択肢はダイレクト便と国境での乗継便だ。
ダイレクト便は確かに楽だが”アフリカの問題は国境にあり!”、中央アフリカを抜け多少ナーバスになっていたので国境で揉めて時間がかかる事をあらかじめ予期して乗継便を選択する。
料金を確認したのでホテルに戻り、エレガントに朝食をとってからチェックアウトして国境行のタクシーを掴まえる。
私が最初のお客、ということは前座席ゲット!詰込式のタクシーで前と後ろの座席では天国と地獄の差が出る。幸先の良いスタートだ。
そして客待ちをしていると・・・
全部の乗客を掴まえていよいよ出発というその時に・・・
「悪いけど・・・」
タクシーのドライバーだ。
『???』
「彼女と前を変わってもらっていいかな・・・???」
『へっ??』
そんな・・・
折角早く来て前座席をゲットしてこれからと言う時に・・・
私がその女性に目を向けると私を2人分・・・いや3人分ぐらい見事に横に広がった体躯を持つ巨体の女性が・・・
当社比で立派な体格をしている現地人ですら彼女の横幅には一撃必殺だろうか?
『あぅぅぅぅ・・・』
ルックスで負けました・・・
また次の便を待つのもかったるい。
それに2時間、多くとも3時間耐久戦をすればいいだけだ。
私は瞬殺で諦めて彼女と席を替わる事にした・・・
出発は11:00時、2ヵ国横断という冒険に向かうにはあまりにも舐めきった出発時間の設定だが「所詮距離は併せて150km程度」だ。
なんとかなるだろう・・・
そしてタクシーは出発。
順調に・・・
順調に進・・・
『むぎゅぅぅぅぅぅぅ・・・』
『足がぁ・・・足がぁ・・・』
私は後部座席の窓際、そこまではいい、ただ普通のタクシーの後部座席には私をいれて4人、ただでさえ立派な体格をしているベナン、トーゴ人3人でフルな所を最後はラッシュアワーの山手線並に押し込んだ形で乗りこんでいる。
3人の圧力でドアにビッチリと押しつけられるような格好で1mmたりとも動けない状態となり全身の筋肉が硬直して30分もたたずに痺れがきてしまったのだ・・・
『たっ、たしゅけて~・・・』
私の心の悲鳴が届いたのか?
途中で一度シェアタクは停車。コテンと転がり落ちるようにタクシーから降りて足をマッサージする。
同乗の現地人も私に同情した・・・
同乗者も同情(←上手いっ!)するくらいに私の有様はひどかったのだろう。みんなも心配顔だ。
私は彼らを振り返り『セ・ボン(フランス語のオッケーみたいな感じ)』と言う。どうみても『セ・ボン』という顔ではなかったが・・・
10分ぐらい休憩しただろうか?またシェアタクは出発。
『うぎぃぃぃぃ・・・』
『あぎゃぁぁぁぁ・・・』
正に地獄の阿鼻叫喚、だが・・・横断と言う冒険と引き換えにこのぐらいの苦労は織り込み済みだ。
しかしこれだけ圧着させられて現地人は何とも感じて無さそうなのは流石と言うべきだろう・・・
そして出発して1時間半・・・
11:30時に国境に到着!
シェアタクから落ちるように降り全身を伸ばしてさする。正座を長時間続けてもここまできつくはなかっただろうという感覚だ。
だが気分は悪くない。
国境を目の前にして煙草に火をつける。
この一服は格別な一服だ。
ベナン横断完全制覇・・・!!
一つの冒険がここで終わる・・・
だが・・・
一つの冒険の終わりはまた新たなる冒険の始まりだった・・・
トーゴ
用心していた国境では何一つ仕掛けられる事も無く無事通過。
『次はトーゴだ!』
痺れの収まった体はエネルギーに満ち溢れていた・・・
シェアタクも速攻でみつかり前座席をゲット!そしてすぐに出発、出足好調だ!
道中の景色
浮かんだ島に建物が立ち並んでいる
道路が舗装してあるかないかだけで余所でも見なれた感じの景色
南国風・・・とうか完全に南国だな、ここは・・・
そして14:00時・・・国境を出てから1時間後・・・、コトヌーからにしても3時間後・・・
シェアタクは無事ロメに到着・・・
『しゃあああああぁぁぁぁ!』
国境まであとほんの少し残っているが・・・
100里の道程があるとしたらこれで99里は達成した。
なんかそれにちなんだ諺があったような気もするが格言は所詮ただの格言に過ぎない、残りの一里など距離のうちに入らないからもう終わったと言っても過言ではないだろう。
久しぶりの冒険。
過酷な試練を耐えて乗り切った今・・・
私はプロフェッショナルとして満ち足りた気分でこう思う。
『2泊ぐらいは街の観光でもしてだらだらのんびりしようかな・・・』
と・・・