第16話 9Days in Tibet(舞台国:チベット自治区:中国)

Category: 激闘の記録!

2007.07.16


あらすじ・・・


シルクロードを目指しながら・・・

ラサなどどうでもいいと思いながら・・・

何故かチベット関連のガイドブックを3冊も揃えて、中国入国以降、ひた走りにラサを目指し続けた「プロフェッショナル・デューク東城」に・・・


魔境・チベットが「恐るべき罠」を仕掛けて待ち構えていた・・・


やはり「チベット」は「魔の棲む都」だったのだ・・・!!!




この「プロフェッショナル」をして、抜き差しならない状況に陥れさせるとは・・・


この苦境をどう脱出するのか?

打つべき手立てはあるのか??

もうある意味脱出しているから記事が書けているという事はおいといて・・・


「どうする??ゴルコサーティーワン!!!」 


お断り。
ここで言うチベットは「チベット文化圏」を指し、作品の舞台は現在は中国の一部になった青海省のゴルムドとチベット自治区のラサを指します。

それと中国の通貨単位は元(ゲン)といい1元=17円ぐらいです。文中の表記に日本円まで入れると読みにくくなり混乱すること、まあ主に書いてる私がでありますが・・・。特に日本円に換算せずに、元だけで表記いたします。参考までにちなみに現在のレートでは600元が1万円ぐらいです。







プロローグ

ゴルムドに至るまで・・・




これは一度ブログ「謎の日常」の07.10分の記事「苦渋の決断」 にも載せたのだが・・・


敢えてもう一度整理して話を続けよう・・・


まず、はっきり言って「ラサに行くのは消化試合」だ・・・

首都狙撃手としては・・・、いかにラサと言えども「セカンド・プライオリティー(第2優先)」以外の何者でもない。

しかしやるからには・・・一番楽な方法で、そして出来れば安い方法で・・・今行くメインルートからそれほど無理しないで行ければ良いというのが計画の骨子だった。

中国到着直後、まずは上海、そして西安、さらに蘭州とシルクロードへの方向を十分に考慮にいれつつ、ラサを目の端に置きながら、常に前進してきたのだ・・・

残念ながら、他の都市では良い結果を得られず・・・結局入口といえるゴルムドには07.09に到着したのだった・・・

それに話を複雑にしているものの一つに「入境許可証」の存在があった。これがないと外国人はチベットに入ることが出来ないという代物だ。それがなんでも7/1に規定が変わってしまい、以前よりまたやりずらくなっていたのだ。






1st day in Tibet(2007.07.09)




ゴルムドでやることは決まっていた・・・

昔からゴルムドでツアーを取ってチベットに入るのが一般的だったので、もっともメジャーなゴルムド中国国際旅行社(通称CITS:以下これに省略)に行く・・・

ここは「歩き方」や「旅行人」といったガイドブックにも紹介されているぐらいなので、まあ安全といっていいだろう。

これしかガイドブックには載っていなかったという言い方が正解なのだろうが・・・

いずれにしてもこう言った事は、既に分かっていて、間違いようのない場所で申し込むのが一番だ。

「安いが一番」で選んだ結果が、結局最終的にトラブルを発生させて揉める原因となるのが相場だし、そんなアマチュアリズムにこの「プロフェッショナル」は興味がない・・・

例え料金が高くとも・・・「石橋を叩いて壊してから渡る」ぐらいの慎重さで丁度良い・・・


ちなみにこれがCITSの入っているビル、この4階にCITSのオフィスがある。ここから全てが始まった。、



ここまで来てしまったからにはしょうがない選択だ。

さっそく、訪ねて担当者に会う。ディテールの確認だ!

担当者はミスターエヌ(以下エヌと省略)と言う。

以前は「入境許可証に駅から宿までの移動、そして安宿のドミの3日分の宿泊、そして3日間の市内観光にガイドを付ける、さらにゴルムドからラサまでの寝台バスによる移動で1700元(一元=約17円)」だったのが、チベット鉄道開通に伴って「入境許可証に安宿のドミの3日分の宿泊、そして3日間の市内観光にガイドを付けて1440元」と変更になっていた。

行きはツアーをとって夜行バスにしようと考えていたので・・・これがなくなっていた事は、幾ら安くなったとは言えちょっと考え物だ。ラサ行の鉄道のチケットは入手困難だが、彼らの説明によると外国人は原則鉄道らしい。バスが簡単に取れれば200元程度だが、あくまでも現状ではバスは乗れず、乗るとしたら闇バスに800-1000元の高い金を払って乗ることになるが、これは少々リスキー(途中でバレたら戻されるらしい)だし何よりも「エレガント」な私に相応しくない。

色々考えた結果、この際だから運を天に任せて相手にこう提案していた・・・

「分かった、今日中に出来て、明日出発できるなら、ツアーを取ろうか・・・」


エヌは回答を午前中一杯待つように私に言う。

そして午前中の終わりにこう回答を出してきた。

「今日は無理だが明日の朝なら可能だ、出発は明後日になるが・・・それでいいならツアーを申し込んでくれ・・・」


私はしばらく悩んだが・・・

ここまで来たら、気持ちとしてはもう行く方に傾いていた・・・


彼に1440元支払い、レシートを貰う。

レシートは「私が入境許可証とその他全てについて1440元支払った」という内容が英語で書かれた実に大雑把な物であったが、私が彼にディテール(詳細)をくれと言っても、「ラサの旅行代理店から入境許可証」が来た時に併せてつける」と言ってきたのでこの場は納得することにした。


それとネックはラサまでの移動手段だが・・・

自分で切符売り場に並んでも「入境許可証」が無いと売ってくれないという可能性がある。

私が中国語堪能ならまだしも・・・「ウォーアイニー」以外は何も知らない・・・これでは外見が似ていても騙し通すにはほんの少しだけ無理があるし、それに一事をこのCITSに任せることとなった今、列車のチケットもエヌの提案する手数料は一番安い硬座(要するに座席です)のチケットの143元に対して300元と劇高だったが、この際だから万事お任せにすることとした・・・

そうして一日目が過ぎていった・・・





2nd day in Tibet(2007.07.10)



約束通り、朝行こうとしたら、寝過ごして1400時過ぎにCITSへ、午前中に来るといわれている書類はまだ届いていない所が中々に「中国的」だと思うが、1700時以降に再度来るように言われる・・・

1700時に訪ねると許可証はまだ届かず、後で私のホテルに届けると言われる・・・

このあたりのいい加減さは前に旅行したアフリカを髣髴させる・・・

そういえば、アフリカの出鱈目さを受け入れるのに何度「ティー・アイ・エー(This is Africa)」と唱えて呪った事か・・・中国は開発の途上で見てくれが良い分・・・こういったいい加減な所を見せられるとやっぱりここも「ティー・アイ・シー(This is China)」かと愚痴りたくもなる。

時間を指定して人を呼びつけて・・・挙句にまだだって言うのは・・・

私は再度条件に念を押し、書類にツアーのディテールも併せて付けるように要求する。

エヌは

「3日間分のホテルのドミ、3日間の英語ガイドに市内観光の移動付」だから心配するな、問題ない。「ドント・ウォーリー。ノープロブレム」と言うだけだ。

こいつも嫌な台詞だ・・・

アフリカでこの言葉を聞いた後に・・・心配や問題がおこらなかったためしはない。

大体これ以上酷い事など無いだろうと・・・諦めてそれを受け入れると次にはもっと酷い目に会うのが相場だ。

ここがアフリカじゃないのが救いとなるのか?ならないのか??

今の私には分かりようも無い・・・



そして列車のチケットだけ受け取ると、彼は私に「50元多く払ってくれ」と言って来た。なんでも300元は彼らに払った手数料で、50元は彼がチケットを受け取りに行ったタクシー代(ちなみに駅からだいたい5元で市内の中心には行けると時間料)と言うことらしいが・・・そもそも苦労はするが駅で直接闇チケット(ラサに行きたがる人間が多いので、チケットを買って高く売りつけるという実に後進国チックなビジネスが今流行っている)屋を探せばまあ倍の値段も出せば買える話だ。私がエヌに一任したのはパーミッションが遅れたら彼に責任を取らせる事が出来ると考えたからでその為にこの法外なチケットの2倍という300元という値段を呑んだのだ!

私はエヌにこう言う・・・

「この取引は、お前が手数料300元と言った段階で終わっている・・・もし必要なら事前に言うんだな・・・」

もちろん正論だ。彼に反論の余地などない。

「お前さんが俺の私た300元の手数料をどう使おうが俺には関係ない、チケットを手に入れてくれさえすれば言いだけの話だ・・・、その300元のなかからお前が儲けを出せなかったなら・・・それはお前の責任だな・・・」


私はそう吐いて捨てて彼と別れる。


こういった言い分もアフリカ以降は中々耳にしてなかったが・・・

相変わらず途上国のメンタリティーという奴にはほとほと呆れさせる・・・

それもこれも「ティー・アイ・シー」だからだろう・・・





その後しばらく街をブラブラしてホテルに戻ると封筒が届いていた・・・

これが貰った封筒



封筒を開けると・・・
Faxだが・・・許可証が入っていた。



これにもう一枚、グループリストに私の名前が・・・


私が念を押したディテールは入っていない。

もう書類が来てしまった後なので、エヌは私と会おう等とはしないだろうが・・・

電話で一度確認する。

確認した内容は単純だ。貰ったものは一通の封筒に書類が2枚。それでいいかどうかだけだ。

彼はそれで問題は無いと断言する。


まあいい、今私に出来るのはどうやらこのくらいのようだ・・・
いずれにしても最低限ラサには着けるのだろう・・・



この日に見たゴルムドの夜景









3rd day in Tibet(2007.07.11)




朝0730時、予定通りに鉄道はゴルムドを出発する。

ちなみにこの鉄道は「チベット鉄道(通称チベ鉄)」という・・・

何故「チベ鉄」と言うのかを疑問を思った方は、ブログ「謎の日常」の「14Hrs」 に回答があるので見て貰おう・・・


これが私の乗った列車。


そして私の乗った硬座はこんな感じ


車窓からの風景、こんな高原地帯を走ってるです・・・


禁煙と言う大敵と14時間に渡る死闘を繰り広げたものの無事にラサに到着する。

駅でちょっと歩いてから流しの相乗りタクシーを捕まえ、15元で指定された「バナクショー・ホテル」へ、到着後早速ガイドに電話をし、明日の待ち合わせ時間を確認する。

まあ悪くは無い出足だろうか・・・



4th day in Tibet(2007.07.12)
(The longest day:最も長い1日)



朝0900時には起きて朝食、久しぶりのイングリッシュブレックファーストに舌鼓を打ち、これからの観光に備える。

初日から激しく動くと、ここラサは3650mの標高に位置するので「高山病」が怖いのだが・・・

それ以上に「払った金がもったいない」

そもそもガイドなど要らないのだが・・・


「金を払った以上は、そして金がもう戻ってこないのなら・・・、精々楽に観光させて貰おうではないか・・・」




ちなみにこれが指定されていた バナクショーホテル。客の大半は「トイレの水を流す」という習慣が無いのが難点、こまめに清掃しているのでタイミングを合わせれば何とか大丈夫だが・・・
写真






そして1000時、泊まってるホテルの敷地内にある、旅行社にコンタクトを取りにいく。


これが戦いの第一ラウンドの火蓋を切ったラサの旅行代理店


中に入ると英語をしゃべる男(ミスターリー。以下リーと省略)が声を掛けてきた・・・

私はツアーを手配した旨を伝え、そして回答を待つ。

意外なことに私がガイドと説明を受けていた男は彼ではなく、席に座っていた英語が話せない男だった!

この男はミスターゼット(以下ゼットと省略)という・・・


ゼットはリーとなにやらやり取りして、そしてこう言ってきた。



「君の為に英語がしゃべれるガイドを3日間つけるのは難しい、200元返すからそれで手を打ってくれ!」




「・・・???」




「・・・!!!」





「・・・俺は・・・旅行社の”嘘”は許さない・・・」




それにたった200元とはどういう了見なのだ??ガイドブックを見る限りガイドの相場は200-300元が一日分だ。

それをたった200元返してチャラにしようとは・・・

そんな事は受け入れるわけにはいかない・・・




「おっおい!!お前ガイド料金の相場は知っているのか?外国人用のガイドでは200-300だろうが・・・、それを3日分キャンセルしてたった200ですませようとするとは・・・舐めてるのか!!!」



瞬間、私の頭は沸騰していた。

レストランのメニューで言ったら「ボイルド・チッキン」と言ってもいいのだろう!




どのくらい私の怒りのボルテージが上がっていたかというと、

例えるなら・・・


例えるなら・・・




「・・・」




ぐらいなものだ!!





えっ?例えろって??

まあいいだろう、例えても例えなくても話の筋には関係の無い話だ・・・



何はともかく抗議を続けると・・・「200元が300元」に上がり・・・そしてキャッシュバックが「2日分の英語ガイドと市内交通」に変わっていく・・・なんでも「ラサを見るなら2日で十分」というのが彼の言い分らしいが・・・


いずれにしてもゴルムドでエヌに確認していた内容とは違っている・・・

それに私の「損失」も馬鹿にならない・・・


私はゼットにエヌの名刺をみせ、彼の携帯を借り、エヌにこう交渉する。

「俺が聞いていたのと実際の条件に開きがありすぎる」

と・・・

そしてゼットと電話を変わり、彼ら同士に話をつけさせることにする。なにやら怒鳴りあった後・・・




ゼットは電話を切る!




「オッオイ・・・!」




私も当然話の帰結を確認する必要があった、しかしもう一度掛けさせろというと・・・

リーを通じてこう返される。

「俺はもうエヌとは話したくない。後はお前が勝手に公衆電話で掛けろ。電話代は安いからな・・・」



「・・・???」



「・・・!!!」



どっか~ん!!!(激怒)




私はいつも公言するように「チキン野郎」を売りにしている・・・

「ファースト・チッキン野郎」とは私の為だけに生まれてきたような言葉だ・・・


しかし・・・しかし・・・


「チキンには・・・・・・戦わねばならぬ時がある!」


例え負け戦でも・・・、私は「いちプロフェッショナル」として・・・

「闘鶏(ファイトチッキン)と化して戦わねばならぬのだ!!」



心は決まった!後は必殺の得意技、「キレタ振り」に中央アフリカで培った「演技力(この辺りは同激闘の記録・第10話街道を行く を参照)」だ!!


私はおもむろに立ち上がり、そして声を大きくし、抑揚をつけてこう喋った・・・


「俺が受けた条件を、何故果たそうとせず、いい加減な条件を出して人に呑ませようとしてるのか???これがお前らの言う仕事とやらか??えっ??常識ってものがあるだろうが!俺はゴルムドで1440元払ってツアーを申し込んでいるんだ!今、お前らの選択は1つだ!今すぐガイドを手配して俺に3日分のツアーをキチンと取らせるようにしろ!何だって俺はわざわざCITSを通じて高い金を払ってまで、ここに来たのか考えてみろ!これがお前らのビジネスか?それとも適当な仕事をやって外国人からぼった繰るのがお前らのやり方か?これが[チャイニーズ・ビジネス]と言う奴か??お前らの仕事の中には恥と言うものは無いのか??」


ゼットが私の言う言葉の全てを理解したとは思えないが・・・「チャイニーズ・ビジネス」と揶揄した時に顔色が変わっていた・・・いい傾向だ・・・これで交渉をうまく持っていける・・・


そしてゼットがリーを通じて私にこう述べてきた。


「分かった、我々は君に関する件を全て放棄する、我々が受け取ったのは500元だからそれを全額君に返す。その代わり君はホテル代から何から全部自分でやってくれ・・・」


「へっ???」


「???」


「オッオイ・・・、あんたら・・・500元しか貰ってなかったのかい・・・」


「そうだ、500元が我々が手にした全てだ。どうするかは君が考えてくれ・・・」



うぅぅぅぅむ・・・これはすこし困ったことになってしまったぞ・・・


500元は無条件に欲しいが・・・私は1440元支払っている・・・


単純に計算すると・・・「940元」が行方不明ということになる・・・もちろんエヌへの仕事料はこの「ミッシング・ナインハンドレッドフォーティー」に入るとしても・・・それにパーミッションてのは幾らなんだ???パーミッション代だけだとしたら940元は法外な値段だろうに・・・


私は回答を一度保留にし、エヌと連絡をとることにする。ゼットには1300時にエヌとコンタクトを取ってその結果次第でそちらの条件を呑むか呑まないかを決めると告げ、そしてオフィスを後にした・・・



一度公衆電話でエヌにコンタクトを取り、彼に対処を要望する。彼は了承し、そして時間が過ぎる。

1245時、ゼットと会う前に再度エヌに確認したら「問題はもう解決した」と言ってきた。「解決した」というのは遅ればせながら午後から「3日分のガイドツアー」になるというのが私の認識だ。


そして1300時、ゼットに再会する・・・

彼の口からは・・・

「状況に変化は無い、彼らから何も連絡を受けていない」

という回答だった・・・



私は即座に決断を下す。

「分かった、俺はこれ以上時間を浪費したくは無い、お前らの言う500を呑んでやる・・・」


そして彼らから500を手にする。これでまずは1段階目だ、そして「パーミッションは俺に返してくれ」と言うと・・・

ゼットは

「パーミッションはツアーに付随するものだ!それにラサに入ってしまえばパーミッションは関係ない、今君は我々のツアーから外れてしまったから許可証を渡すわけにはいかない・・・」


と回答する。


しかし・・・例えツアーをキャンセルしたとして「パーミッション」代として私はお金を払っていた筈だが・・・

ちょっと悩んだが・・・ここでもめて一度手にした500元をもう一度手放そうとは思わなかった・・・


「分かった、あんたらの責任はこれで終わりだ!後は俺がゴルムドとやり取りをする・・・」


そう言ってまた事務所を後にした・・・



これからやる事は決まっている・・・

エヌに散々に苦情を言ってやることだ・・・ここは中国だ!一度失った金が返ってくるなんて甘いことは考えていないが・・・

それでも奴に文句を言って謝らせなければ・・・

しかし、ただ謝らせるだけでは気が済まない・・・


金を請求して、併せて嫌味の一つや二つ・・・いやもっともっと言ってやる。

そもそも奴が「ノープロブレム」等偉そうに言ってくるからこんな目に俺はあっているんだ・・・




外に出て早速公衆電話からエヌに連絡をする。

「オイッ!お前は問題は解決したといったが、状況は何一つ変わってなかったぞ!」

「それに良く聞けよ!こっちの話は終わった!俺は彼らが責任を放棄する代わりに500元手にしたぞ、後は残りの940元の説明をして貰おうか・・・!」

エヌはちょっと間を置いてこう答える。

「状況は解決しなかったのか?それに俺は既にミス・ホー(以下ホーと省略)に君のためのお金を払っている。後はミス・ホーの責任で俺には何も責任が無いから直接彼女に苦情を言ってくれ・・・」



「・・・」


「・・・」


「!!!???」


「ホーって誰????」



これこそまさに「ティー・アイ・シー」だ!

アフリカと・・・何が違う・・・奴が言うには第3者のホーとやらに金を払ったから・・・

奴の責任は無いということだ!

そんなの私の知ったことではない、私の渡したお金はエヌが受け取っている、その金を・・・どう使おうがなんて知ったことではないし”仕事”だけキッチリやってくれればいいはずだ、それにトラブルに会った時・・・なんでこの私がホーなんて見たことも無い知らない相手に電話して苦情を言わなければならないんだ・・・


私は受話器を手にすると自然に怒鳴っていた!


「お前責任と言う言葉を知らないのか?誰だホーってのは、俺はお前に金を払ったんだぜ、それにパーミッションが幾らするか分からないが・・・俺はお前にもキャッシュバックを請求するぞ!だいたい940元もパーミッションにかかるのか??精々400か500ぐらいじゃないのか?パーミッションってのは!!」


エヌも私に合わせるかのようにこう答える

「お前がそう言おうが俺はホーにお前の為の金を既に払っているんだ!俺の責任はお前に書類を渡した段階で終わっているんだ、お前に返す金など無い。それに500元貰ったんだろう。500元もあれば自分でツアーを取ればいいだけだろうが・・・」



「・・・・」


言うに事欠いて・・・・


「お前自分で何を言っているのか分かってるのか!俺はお前からツアーを取ったんだ、結果的にラサがツアーの条件を守れないならそれはお前の責任だろうが!!なんだって俺が自分自身でやらなければいけないんだ!答えろ!!」


エヌも負けてはいない

「条件を守れないのは俺が金を渡したホーとラサの問題だ。繰り返すが俺は関係ないぞ!俺は今忙しいんだ!お前のためだけに働いているわけじゃないんだ・・・もう電話してくるな・・・」



「ああ~ん???」


「オイ。いい加減にしろよ・・・俺はお前のミスで自分の時間を削って抗議しているんだ、お前がうまくやっていたらこんな問題は起きていないんだぞ。だいたい・・・」


「プーップーップー・・・・」


あっあれ・・・電話が・・・電話が・・・切られた・・・・


その後、事務所、モバイルとすぐに掛けなおしたが繋がらず・・・・


「にっ逃げやがった・・・」



まあいい、時間を置いてもう一度掛けてやろう・・・


時刻は既に1400時を回っていた・・・


こんな状況でも私はラサにきた目的は忘れていない、早速「マシーン」と化して観光と今後の手筈を整える。
もちろんCITSと揉めているのは分かっているが・・・そういった感情を殺して「観光機械」と化すことが出来るからこそ「私は旅行界唯一のプロフェッショナル」なのだ!!

まず世界遺産でもあるポタラ宮にいき、明日のチケットの予約(ポタラ宮は前日予約が必要)し、そして歩いて「ノルブリンカ(かつてのダライラマ14世の離宮がある・これも世界遺産」を見学する

これがノルブリンカ、写真はかつてダライラマ14世の離宮であった「タクテン・ミギュ・ポタン」


この清楚なただずまいにこの落ち着いた景観、ダライラマ14世が離宮に使っていただけあって・・・只者ではない。一見の価値ありだろう・・・このプロフェッショナルを唸らせるとは・・・

「・・・・」

「・・・・・・」



其の足で公共バスに乗り、鉄道駅に行って15日の帰りのゴルムド行のチケットを手にして取り合えず、本日の最低目標をクリアーする。

ホテルに戻ってきたのは1730時、まだゴルムドのCITSは開いている筈だし、エヌに対する苦情もまだ終わっていない・・・


早速公衆電話から電話する・・・


エヌが受話器から応答してきた・・・


私は早速、問題を彼にぶつけていく

「お前、俺はお前に幾らかのキャッシュバックを要求させてもらうぞ、俺はここでいま全てを失っているんだ、お前がくれた条件全てが台無しになっているんだ!!責任ある回答をしろよ・・・!!!」


エヌはこう答える

「さっきも言ったろう、俺はホーにお金を払っているんだ、俺の手元にはないんだ、それにお前はラサに行けただろうが、俺は忙しいんだ、邪魔しないでくれ・・・」


「なっなっ何だとう~・・・!!」


「お前が忙しいかどうかなど知ったことか!俺はお前のせいで使いたくない時間まで使ってこんな馬鹿げた電話を掛けているんだ、何で俺から逃げようとするんだ?お前のくそったれた仕事っぷりのせいで俺は完全に被害を受けているんだぜ、パーミッションもラサの代理店が取って俺は持ってないんだぜ、お前の契約はパーミッションと3日ツアーだろうが?俺はここで全部失ったんだ!聞いてるか?」


エヌはまたしてもこう返してくる。

「お前は500キャッシュバックを受けただろうが、それに俺はホーに1200元払っているんだ、なんでお前にキャッシュバックしなければいけないんだ!キャッシュバックする金なんか持ってないぞ!それにお前パーミッションがいくらするのか知っているのか?ラサに行けてキャッシュバックを受ければ十分だろうが・・・!!」

売り言葉に買い言葉だ!こう返す!!

「俺が調べたところパーミッションなんてせいぜいかかって400-600ぐらいだろうが?(実際はこの時にはまだ知りません、大体の検討です)幾らなんでも940もするっていう話は無いはずだぜ、いいか!許可証の値段が正確に幾らしたかなんて知らないが相場ってものがあるだろう、それにお前はツアー不履行の責任は取るべきだぜ、簡単に500俺が手にしたと思っているのか?500手にするのに半日かかって尚且つ俺は全部お前の提案したものを失ったんだ!なんで940元そのままにしておけるんだ!説明しろよ!!」

エヌもある意味まったく引かない

「お前が勝手にパーミッションの値段を言っているだけだろうが!俺はホーにパーミッション代として1200元払ったんだ。お前はガイド代のキャンセル料500元もらったんだろうが、それで十分だろうが・・・、それに俺がお前のためにただで仕事しているとでも思っているのか??俺がしたサービスのお金はもらって当然だろうが・・・!!」


なんだってんだ、コイツの言い草は・・・

「・・・お前・・・サービスってのは何だ?お前の言うサービスってのは俺がラサでトラブルに会うためのサービスってことか?もしお前がお前の言ったことをきちんと履行していれば・・・俺はサンキューと言ってやるのが当然だと思うが・・・お前がお前の電話や時間や俺が支払った料金をどう使おうと俺の知ったことではない。お前はお前のやるべきことを失敗した!分かっているのか?お前は失敗したんだ!だから俺は請求しているんだぜ!!それにホーなんてのは何度も言うが俺には関係ない、お前がお前の失敗をホーに話してホーとやらからキャッシュバックさせて俺に返せば良いだけだろうが!」


「俺はそんなことは出来ない、それに俺はホーに支払ってお前にパーミッションを渡した段階で俺の仕事は終了しているんだ。俺にクレームをつけようとも・・・俺に何が出来るんだ。そんなに言うならお前がホーに話せ・・・」


「・・・!!!」


「・・・・!!!!」


この辺りは・・・私の持っている常識とは違うところだが・・・よし、この手でいこう!!


そして私の交渉テクの一つ、必殺リピート作戦を発動する、どんなテクニックかと言うと、子供の様に単純に同じ一つのことを繰り返し、相手の頭に焼き付けさせるという高等テクだ!
このテクニックの長所は何よりも「頭を使わなくていい」というところにその絶妙さがある・・・

「馬鹿かお前は、俺はお前に金を払ったんだぜ、ホーが誰であろうと知ったことじゃぁない。いいか、よく聞けよ。俺はすべてを失ったんだ。俺はすべてをな!聞いてるか!お前の仕事から・・・俺は何も手に入れちゃいない、すべて失っているんだ・・・、もう一度言う、俺はお前の仕事から・・・何も手に入れてない、それどころか・・・すべてを失ったんだ!!俺は要求するぜ、キャッシュバックしな!」


私の血相に合わせるような形でエヌが怒鳴りながらこう聞いてきた。


「じゃあ、お前は幾らならいいんだ・・・!!」



「少なくとも半分だ!!」


「何で半分だ・・・」


「あっ・・・(考えてなかった)・・・」


「よし、分かった!全部出せ、俺は何も手にしちゃあいない・・・」


電話口から彼の激怒の様子が手に取るように分かった・・・


「お前いい加減にしろよ!何度言ったら分かるんだ、俺はこの件に責任はないのにお前は俺から金を請求している。いいか!お前の為に俺が使う時間はタダか?俺がもしホーと交渉するならそれもタダか??」

きっきた!!私は即答する。

「オフ・コース(勿論)!」

「何でだ!」

「トラブルの原因は俺じゃなくお前の契約不履行だ。お前はお前のミスで”事の始末”をしているだけだ」

私のこの台詞は彼を余計に激昂させたようだ

「お前・・・俺はお前の為にたくさんの時間を使ってきたんだ!俺には責任が無いんだぞ!それでも俺がお前にキャッシュバックするのか?」

「オフ・コース」

「俺はタダでお前の為に仕事をしなければいけないのか?」

「オフ・コース!」

そういう押し問答がしばらく続き、ちょっと間が空いた隙に私は言葉を挟む

「もう一度言うぜ、俺はすべてを失った挙句時間まで今無駄に使ってるんだ、お前のくそったれた仕事のせいでな、いいか、お前は俺が納得する分きちんと支払う義務ってやつがあるんだぜ・・・、いいか!俺はすべてを失った!例え500返ってきたとしても・・・残りの940は納得いく数字じゃないな、分かったら・・・ホーとやらに連絡して俺へ幾ら戻すか相談しな!お前はお前の失敗の責任という奴を取るんだな・・・」


彼は感情を失ってきていたようだった・・・


「ああああ~ん、幾らなら納得するのか?2000出してやれば良いのか??」


「オフ・コース!」

この数字なら・・・納得した上に「サンキュー」に「スマイル」までプレゼントしてやってもいいくらいだ。今まで受けた被害の十分なお釣りがくる・・・

良し!今だ!!!これでぴしゃりと奴に言ってやれば・・・
何か返ってくるかも知れない。

さあ、言うぞ!!


「プッープッープッー・・・・」



「・・・・」


「・・・???」



あっ・・・また逃げられた・・・・いいとこだったのに・・・



その後数度掛けなおしても・・・彼がその日に電話に出ることは無かった・・・


まだ、話はまったく終わっていない・・・


失われた940・・・


彼の今日私に示した態度から・・・


私は一つ、決意を堅くしていた・・・

「覆水盆に返らず、どうせお金は返ってこないだろうが・・・俺に出来る最大限の嫌がらせをしてやる。940元分・・・徹底的に嫌味を言ってやる・・・」

と・・・・・・



ラサのキオスク、ここで毎回電話を・・・、この後も通ったので店のおばちゃん、お姉さんが私が来ると自動的に笑って電話機を指差すようにまでなってしまった・・・



ちなみにこちらは中国のネットカフェ・英語表記していないので・・・気付くのにしばらくかかった





5th day in Tibet(2007.07.13)




この日は朝の0800時には起きたものの・・・

なんとなくのんびりとしてしまい、宿を出たのが0900時頃、朝食を取って少し考えてから、チベット人にとって最も聖なる寺、ジョカン(大昭寺)を見学する。ちなみにこれも世界遺産

入口付近で五体投地をする信者・信仰心のない私にしてみれば「いたそー」という以外の感想は出てこない。


これはジョカンの屋上から、しかしこの寺・・・中々の聖地感を押し出している・・・


「うむぅ・・・ジョカンとはこれ程の物であったか・・・ただの”寺”ではない・・・」


「・・・」




「・・・・・・」




マシーンと化して観光している私には「見たという結果だけが全て」であるので感情などはないが・・・

とりあえず一個またきっちりと”ビジネス(観光)”は済ませていく・・・


予想以上に混雑していたので時間がかかってしまったが・・・まだ昼前だ!


早速キオスクに向かって受話器を手にする

相手は勿論おなじみになったエヌだ!!


「おい、昨日は何で勝手に切ったんだ!!」


エヌの回答はこうだった・・・

「俺はお前と話したくない、俺の邪魔をするな、もう掛けてこないでくれ・・・」


「・・・」

「・・・・・・」


彼の回答はこの私のハートに火を付けた!これを人は恋と呼ぶのかもしれない・・・

こうなったら・・・熱烈なラブコールだ!!


「お前・・・そっくりその言葉を返してやるぜ、お前こそ俺の邪魔をしているんだ、その足りない頭で少しは考えてみたらどうだ!!繰り返して言ってやるが、お前がくそったれたミスをしたせいで俺は俺の貴重な時間を割いてまで電話して責任ある回答ってやつを求めているんだぜ、お前が子供じゃないってんなら少しは考えて口を利けよ。
俺はお前のせいで全てを失ってるんだ、俺はお前からキャッシュバックを要求するか、さもなくば、お前は俺に事情の全てを明らかにして納得いくように説明をしろよ!!」


私のテンションにつられたかのように彼のテンションも上がる・・・


燃え上がる二人・・・熱く交わす言葉は・・・・愛でもなく・・・そして恋でも無く・・・・

ただ単に「お金」の話だった・・・!!


「お前にもう一度説明してやる、俺は昨日も言ったとおりにホーにお金を1200元払っているんだ、その1200元の中からラサに支払ってお前のツアーを果たすことになっていたんだ!俺はホーに話した段階で責任は無いといっただろう・・・それにな・・・」



-この辺りの押し問答はほぼ昨日の繰り返しなので以下省略ー



話がこじれたまま平行線を辿り・・・


そしてその結果・・・


またしても・・・


「プッープッープッー・・・・・」



逃げられた・・・・


くぅぅぅぅぅぅ・・・・

勿論のこと、掛けなおしても出てこない・・・


ちょっと話を整理して・・・

昨日今日の双方の主張で今明らかになっていることは・・・


私の主張は

「彼が私に対してしたこと全てをラサで受けられなかったので、納得いく分をキャッシュバックすること」

で彼の主張は

「少なくともパーミッションは出しているのでそれに料金がかかっている。それにお金はホーに支払っているので責任は無い」

ということである・・・

私は私が直接支払った以上は彼が責任を取るべきと思っているのに対して、彼は私から受け取ったお金をしかるべく使っているから責任はすでに彼には無いと言い張るのが平行線の原因だ。


私にはまだ少し分かっていないのが「パーミッションが幾らするのか」ということだった・・・



そして午後になってホテルを移ることにする。今度は国際ユースだ、まあまたドミだが・・・国際ユースであるからには外国人客も多く、そうなると「トイレの使用方法」を知っている人間もほとんどだろうというのが移る決め手だ!

それにバナクショーホテルで揉め始めたから、気分転換にも丁度いいだろう・・・




そして・・・感情を殺し・・・1400時に間に合うように「ポタラ宮」を観光する・・・


どっど~んとポタラ宮!


「とにかく、すんごいのです!!凄いのですよ~・・・!!中のお写真が撮れないのが残念なのです~!中もまたすんごーいのですよ~・・・!!!!」


「あぁぁぁぁぁぁ~・・・でも・・・見れただけでし~あ~わ~せ~♪」



「観光ってた~の~し~い~なぁ~♪♪♪」




「・・・」


「・・・・・・」


「ハッ・・・!!!」




もちろん、私にはポタラ宮など所詮は狙撃対象の一つにしか過ぎない・・・

世界遺産とは言え、驚くには値しないだろう・・・

何といっても私こそ「プロフェッショナル」なのだから・・・・






その後、ちょっとした観光場所を訪れ、そして気になっていた「パーミッション」の真相を明らかにしようと初日にトラぶったゼットの所に向かう・・・

都合よく英語が喋れるリーも居た・・・


そして・・・

パーミッションの真相が・・・


私が聞くと・・・ゼットはこう答えてくれた!!

「パーミッション自体はタダだよ!でもパーミッションを取るためにはツアーで入らないと今は駄目なんだ・・・」


「へっ???ゴルムドはパーミッションに金がかかるって言ってたけど・・・???」


「これを見てごらん、ここにタダって書いてあるでしょう・・・!!」


「あっ・・・」



「本当だ・・・!」


確かに正規のパーミッションの左下の隅に「タダ」って書いてある・・・



「パーミッション代・・・納得・・・でも・・・ってことは・・・エヌのクソ野郎・・・知っててとぼけていたなら容赦しないし・・・知らなかったら・・・奴は何の仕事をしているって言うんだ・・・!」



私はゼットに例を言い、そしてキオスクに向かう、まだ1800時前だ・・・


そしてエヌに電話をして・・・こう伝える・・・


「おいっ!お前はパーミッションの料金のことを言っていたが良く聞けよ・・・パーミッションそのものに関してはタダだぜ・・・」


エヌは少々驚いたようだ・・・私がゼットから聞いたというと数分後に掛けなおしてくるように伝える・・・


そして数分後・・・掛けなおすと・・・


エヌが受話器に出てきた・・・


私はおもむろに話す

「お前はパーミッション代のことを言っていたが・・・それはタダだって事は納得したのか??」

「でも・・・それはツアーに付随するもので・・・」

「ツアーに付随するというのなら・・・それが無くなって俺がパーミッションも手にしてないということがわかっただろうな・・・」


「だが・・・俺はお前にFaxをだしただろう・・・」


「だからお前ももう分かっているだろう、それに繰り返すぜ、パーミッションはそれ自体はタダだ、ただしツアーに付随する。何で昨日1200なんて言ってたんだ・・・、おかしいだろうが、俺はパーミッション代がいくらか知らなかったが・・・お前は何で知らなかったんだ?お前の仕事だろうが??それに俺はお前からツアーを取ったんだ、そのツアーが無くなってパーミッション自体手に入らなかったんだから・・・お前は俺に対する責任を果たしてもらおうか・・・??」


しばしの逡巡の後、彼は投げやりにこういってきた


「400だ!十分か・・・!!」


「あっあれっ・・・」


私は請求は確かにしていたが・・・向こうがお金を出してくるとは思ってもいなかったの(日本ならまだしも中国だったので)で・・・油断していた・・・


反射的につい一言

「OK」

「あっ!しまった・・・もっと値段を上げさせておけば・・・」

彼はさらに乱暴に付け加える

「俺は1200元払って手元にも事務所にもお金を残さなければ行けない、今回の400元は俺のポケットからいくらか付け加えて返すんだ。お前はそんなことをさせていいのか・・・」


私も彼の言い草に反応していた・・・


「オフコース!それに俺は”たった400”で諦めてやると言ったんだ、540は俺はドブに捨てるようなもんだぜ、お前さんがお前のポケットから出そうが出すまいが・・・それは”お前の契約不履行”による問題だ!俺の知ったこっちゃあない!」


彼はその後も「自分のしたサービスでなんで自分が私に払わなきゃいけないのか、払ってやる!」みたいな事を言っていたが最終的には

「問題はこれで終わりだ、いいな!」

と聞いてきた。

私も嫌味をいいながら・・・

「分かった!俺の540泣いてやる、たった400のキャッシュバックでな!後はゴルムドでだ・・・」


という形で電話を切ることになった・・・


しかし・・・400返すと言って来るとは・・・

うーん、少しでも金が返ってくると思って早めに反応しすぎたかも・・・???


そうして5日目が過ぎていった・・・






6th day in Tibet(2007.07.14)


一応は昨日の段階でCITSのエヌとの話はついた・・・

ということで今日は観光だ!

その前に腹ごしらえということで・・・ 


これがキッチュスペシャルブレックファースト!美味しいのです!!


バタージャムのトーストにフライドエッグ、そしてカリッカリのベーコンさん・・・そして食後のコーヒーを飲みながらタバコを燻らせる・・・

チベットにいながらチベット料理に目もくれず、こんなスタイルを貫くのは私が「ヨーロッパ・エレガント・ツーリスト」だからだろう・・・

う~ん、私ってばなんて「優雅」なのでせうか・・・


そして今日はちょっと遠出だ。バスに乗って乗り継いで・・・チベット仏教ゲルク派最大の寺院、デプン寺を目指す。



言って置くがこの私には「観光の楽しみなどどうでもいい事”だ。ただ、ガイドブックに載っているからその場所を狙撃しに行くだけのことだ・・・

そして・・・「いった事実」だけ残れば・・・それ以外”俺の仕事”とは関係ない話だ・・・


これがデプンの大集会所!ちなみに中の敷地は広大、まともに見ると2-3時間はかかってしまうほど!


「うーむ!この広大な敷地の中に・・・あらゆる仏教寺院としての見所が網羅されているとは・・・このプロフェッショナルをここまであきさせないとは小癪な・・・」


「・・・」


「・・・・・・」


取りあえずは一個、消化した様だ・・・





ようやく今日は観光だけで・・・


そう思っていたら・・・なにやら不穏な・・・


体が・・・体が・・・・おかしい・・・



デプンを何とか一周して・・・そしてバスに乗る・・・この体調の悪さは・・・・「高山病か!!」


そしてホテルに着く・・・

なにやら・・・この体調の悪さは・・・


ひょっとしたら・・・「高山病」か・・・!!

でも・・・呼吸は・・・特に何でも・・・


あっ・・・!!!


ゴロゴリョゴリョ~・・・


こっこの音は・・・どこから・・・・???


おっお腹からだ・・・・!!


あっ!トットイレ・・・・!!!


どうやら・・・何かが”当たった”らしい・・・・


思い当たる節は・・・イングリッシュブレックファーストの・・・フライドエッグをワンサイド(片面焼き)でお願いしたぐらいだが・・・まさか・・・・!!


その後の私は・・・悲惨な状態を向かえる・・・


当初恐れていた「高山病」でないのは明らかだ!なんといっても息苦しくは全然無い・・・


しかし・・・、この・・・おなかの具合という奴は・・・・




私が「G」と呼ばれるのは「GOLCO」だからであって「GERI」の「G」では無いはずなのに・・・


結局その日は予定していた「セラ寺(河口慧海氏等の日本人の著名人が秘境時代のチベットに潜入して学んだお寺」はカットして・・・

残りの時間の全てをトイレと部屋の往復に大量の時間を費やすことになった・・・



泊まっていたユースのドミはさながら「野戦病院」の様相をていしていた・・

同部屋の人間がいなかった事は幸運だが・・・この「野戦病院」には「医者も・・・そして看護婦一人すらいなかった」のは問題だ・・・



それにしても高山病予防には「水分をこまめに摂取して、そしてこまめに水分を出して新陳代謝を上げる」というのが基本中の基本だが・・・

この日の私は「明らかに摂取した5倍程度の水分を放出」していただろう・・・

新陳代謝絶好調!!と褒めてやりたい所だが・・・

体力は明らかに失われていった・・・・



そして私は

この東城のダイエット史上、最大の赫々たる戦果をここラサで挙げる事となった・・・

他人から見たら、その顔色から

「ダイエットというよりは、明らかに”衰弱”」

しているだけだというのは、自明の理であった事にしてもだ・・・!!






7th day in Tibet(2007.07.15)





体調は完全に回復はしていないが・・・


ゴルムドに帰るのに選択したのはおなじみの「チベ鉄」だ。日中だけの移動なのにわざわざ「硬臥(2等寝台)」を購入している・・・

行は硬座だったから帰りはどうせ乗るのなら少し気分を出したかった・・・

ラサ駅には0800時に到着

これがラサ駅。新築です!


そして帰りもお世話になった「チベ鉄」君!


硬臥とはこんな感じです!ちなみに一番上にしました!!


ちなみにチケットはこんな感じで・・・


乗ったらプラスチック製のカードと交換、降りる前に客車係が回収します。
と、いうことは・・・寝てても起こして貰えるのです!下りそびれる心配がありません!



乗ってすぐに体調の悪さから寝てしまい、1230時頃に一度おきる、薬を飲んだせいもあって何とか車内で販売しているカップラーメン(ちなみに5元と市価よりは高い)とコーラを飲めるまでには回復していた・・・





そして去り行くラサに思いを馳せる・・・


そういえばラサでは・・・


「キャッシュバックの事だけ考えていたような・・・」





流れ行く車窓からの景色・・・


私にはもう”関係の無い”事だ・・・

いかに雄大な景色を見せられていようとも・・・

俺の今の体調と気持ちを慰めるほどの事ではない・・・


私は・・・全ての感情を殺し、ただ機械的に観光をこなすだけの”観光マシーン”だ・・・






この世界一標高の高い湖(確かトナミ湖と放送していた)も・・・





そして行で見逃していた世界一標高の高い駅も・・・(停車しないので、写真がぶれています。ちょっと残念!)




そして「車窓」から見えるこの景色も・・・








「・・・」




「・・・・・・」




「・・・・・・・・・・」




「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~・・・・・!!!」




「なんて・・・なんてゴツイ景色の連続なんだ!!」




「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~・・・・・・!!!」




「すっごすぎる・・・すごすぎるのですよ・・・コイツって奴は・・・・・・・・!!!!」





「うぅぅぅぅ~・・・チベ鉄・・・チベ鉄・・・・・・・・・・・乗れて・・・乗れて本当に良かったぁ~♪」





「わーい♪」











「チベ鉄君サイコー♪♪♪」





8th day in Tibet(2007.07.16)
(The Most Important Day:最も重要な1日)


ゴルムドに到着して以前泊まっていたホテルにチェックインして目覚めたのは1000時ころ・・・

昨晩は、今日これから来るべきであろうエヌとの激闘の予感と、そしてその対策でまんじりともせずに0400頃まで起きてしまっていた・・・

心配された体調も完全とは言えないまでも取りあえずは落ち着いている・・・





帰ってきたゴルムド、計画的に作られた町なので道が無駄に広い・・・



ちなみに歩道も・・・ここまでくると閑静ではなく閑散としている・・・





1100時、エヌにダイヤルする・・・

私は開口一番こう伝える・


「ゴルムドに戻ってきた・・・何時ならいいんだ・・・??」


彼は最初1200時と言ったが思い直したかのように1800時と伝えてくる・・・

私は少し考えてこう答える。

「1200時だ・・・・俺はお前にこれ以上付き合って時間を無駄にしたくは無い・・・それともう一つ、付け加えてやる・・・400で手を打つと言ったが・・・全額・・・940出せ・・・」


こう言ったのは訳がある。時間を相手の指定に合わせないのと一度呑んだ金額をまたわざと高く言ったのは、相手のペースにさせず、相手に心理的な圧迫を与え、そして私の言い分を聞かせてやる為だった・・・

それにひょっとしたら・・・


エヌは少々ビックリして答えてきた

「お前は400で良いと言ったろう!何で急に変えるんだ・・・!!」

私はこういう

「いま電話で話しても無駄だ・・・お前は何時も逃げるだけだからな・・・1200時に・・・直に説明してやる・・・」

私の言い分にエヌも了解する。


後は会うだけだ・・・





ホテルを出てCITSには1155時に到着・・・


ちなみにこれがゴルムドCITS入口



4階に上がり、彼のオフィスへと足を運ぶ・・・

彼はちょっと席を外していたがすぐに戻ってきた・・・


これからだ・・・




「また会って嬉しいぜ・・・」

といって握手する・・・彼の顔がすこしひきつっているかのように見えるのは気のせいだろうか・・・



私は当たり障りのないスタートから始めた・・・

電話とは違って、今回は怒鳴りつける気持ちは無い・・・




「O.K.話をしていこうか・・・最初に言っておくがお前さんは何時も都合が悪くなると電話を切って逃げていたから俺の状況が分かっていないだろうから・・・もう一度はっきりと説明させてもらう・・・」


エヌは「そんなことは無く分かっている」と言おうとしてきたが・・・手を伸ばしてピシャリと遮ってこう言う。

「今は俺が話してるんだぜ、後で言い訳があるなら聞かしてもらうから先ずは聞くんだな!お前が少なくとも自分が”大人”で”ビジネスマン”というのならな・・・」

「先ず、俺たちが交わした契約は入境許可証と3日間分の宿泊、3日分のガイドにラサ市内の交通手段でそれに俺は1440払っているんだな・・・?」

彼にもこれには異論が無い。

「そしてラサに到着して・・・お前の教えてくれた代理店の契約不履行によって俺はキャッシュバックを500受けている・・・そうだな・・・」

当然の事だ・・・


「俺は電話で全額と言いなおしたのは・・・お前と俺との契約で単純計算だ・・・1440-500=940・・・それにお前から”たった”400返してもらった所で・・・残りは540だ・・・何だって俺は何一つ手にせず540も払ったままにしておかなければいけないんだ・・・??」

彼は私にこう言う。電話とは違い、今日の彼は比較的穏やかな口調だった・・・

「俺が何もしていないと言うが、俺はお前の為に許可証を取って渡しているだろう・・・それに対する利益を得るのは当然の事だ!俺がタダで座っているだけで仕事をしていないとでも言うのか??」

私はこう返す。

「お前も全てもう分かっているだろう・・・俺はラサで何一つ手にしていない・・・お前が俺に渡したのはただのFaxであってオリジナルではない・・・それに・・・前にも言ったがお前が何をやろうとも・・・その結果、俺が何も手にしなければ・・・それはお前が仕事をしたことにはならないし、サービスをしたとは言えないんだぜ・・・それにお前は俺に被害を与えていながら一度も謝っちゃあいないんだ・・・」


彼はこうだ

「例えそれがFaxでも・・・お前はパーミッションを手にしてラサに行けただろう・・・それは俺が”調整”したからだ・・・!だから俺はパーミッションをお前に渡したんだ!それにそれが無ければ行けなかっただろう??」






私はこう来ることを十分に予想していた・・・

彼が報酬を私から得れると主張できるポイントはそこにしかないのは分かっていたからだ。

だが、それを簡単に受け入れては、交渉が終わってしまう。そうさせる訳にはまだ行かなかった・・・





「お前さん・・・契約内容はもうはっきりしているよな・・・パーミッションのオリジナルは俺は一度も手にしてはいない・・・それに俺も最初勘違いしていたがお前はパーミッションに金がかかると言っていたが、実際はタダだぜ・・・パーミッションはツアーにくっついてくるものでお前らがその約束を果たせなかった時に自動的に俺はその権利を失っているんだ・・・契約不履行は俺の過失ではない・・・条件を守らせなかったお前の責任だ・・・、お前はその”責任”という奴に対して・・・支払わなければいけない・・・」


彼も私の言うことをそのまま受け入れるという訳にはいかない。

先ほどの主張を繰り返し、そしてこう返してくる

「例えそれがFaxでも・・・お前はパーミッションを手にしたんだ!それで問題は無かっただろう、それに俺はもうお前から貰った料金をホーに支払っているんだ。俺に何が出来るんだ、俺の手元には240元残っているだけだぞ、それなのに全額払えと言うのか!!俺は自分のポケットから200も出して、お前に支払う条件を呑んでやっているんだ!それで十分じゃないのか・・・」





これも十分に予期していた・・・彼が金を支払った第三者に責任を転嫁する。後進国ならではの商売の考え方だ・・・

この頃には「ティー・アイ・シー」の常識って物が私にももう分かっていた・・・

しかし・・・ここで引くわけには行かない。それを認めると私には失ったお金以外に何も残らないのははっきりしているからだ!

ホーに私が会って彼女と話をしても・・・ホーはエヌに言えと言うに違いがない、エヌに戻ってきたらお前はホーの所にいったからもう俺には関係がないと主張するに違いない。そうしてたらいまわしにされた挙句に怒り損となるのは目に見えてる・・・






私は自説を強行に主張する・・・


「電話でも言ったろうが・・・ホーがお前とどういう関係にあろうが・・・俺にはまったく関係がない・・・俺は前にも言ったがお前は俺に対しての責任を負うんだ・・・ホーが何かミスしていると言うなら・・・お前が連絡して奴からリファウンドさせればいいだけの事だ・・・俺には関係ない・・・。それにお前が自腹で200出すと言うが・・・数学を知っているか?940-400は540・・・俺は自分のポケットからこの何一つ手に入らないツアーに支払う事になるんだぜ・・・」


エヌはこう言う

「俺はすでに連絡しているんだ、彼女は”パーミッションを出したから問題ない”と言っている。俺にこれ以上何が出来るって言うんだ!!」





ここでしばらく話はまた電話と同じように平行線を辿る・・・





私は一度立場を変えて話をすることを提案した!

「O.K.お前さんの足りない頭では我々に何が起きているか・・・理解できていないようだから立場を変えよう、お前が客で俺がエージェントだ・・・」

「お前は俺にツアー代として1500支払った、俺が現地で会うガイドを紹介して実際に出会ったら・・・条件が出鱈目だ・・・お前は交渉してたった1/3の500、それも俺がガイドに渡した金額が500だからといってそれだけ手にした・・・、残りの1000・・・お前はどうするんだ???答えて貰おうか???」


エヌはこう言う・・・

「お前の言っていることは理解できている・・・だがな・・・そうであってもな・・・俺は”パーミッション”を出してお前はラサに付けた・・・それに俺は既に1200元ホーに支払って・・・」

また私はこう言う

「何度も言っただろう・・・俺はお前に金を払ったんだぜ・・・俺の領収証にはお前に金を払った”事実”があるだけだ・・・そしてお前が何もやらなかったという結果もな・・・ホーに責任を取らせるのは・・・お前の”仕事”だ。俺がやることじゃぁない・・・」

エヌは私にこういう

「インポッシブル・・・!ホーに責任を取れとは言えない、俺はもう確認しているんだ・・・どうしてもというなら・・・お前が連絡してくれ・・・」







この辺りは彼と私と考え方の違いの最大のポイントで、お互いの論戦が平行線になる原因だ・・・

彼の考え方は彼は彼女に支払って、私にFaxを出した段階で責任自体が無いという考えで

私の考え方は料金を支払って窓口になった以上、もし何か発生したときには彼に責任があるという考え

だからだ・・・

そして・・・なんとなく分かっているのはホーはエヌよりも立場の強い場所にいるという事だ・・・







だが・・・今一度強く押してみる


「何度も言わせるなよ、ホーは俺とは関係ない・・・お前がホーとの間に何も出来ないと言うのが俺には理解出来ない・・・お前がホーに言って金を戻して俺に渡せば済むだけだ・・・」


「インポッシブル・・・インポッシブル・・・!」

口調こそ変わらないもの、彼は明らかに消耗も、そして困惑もしているのが目に見えて分かった・・・

さらにエヌはこう続ける・・・

「お前は俺にああしろ、こうしろというが・・・それは無理だと言っているだろう・・・分からないのか・・・ホーにももう確認しているんだぞ!それにFaxとは言え渡してラサにいくのに問題は無かっただろう・・・それなのに全額か?お前は一度400でいいといっただろう・・・・なんで前言を覆してまた全額なんて言うんだ!!俺はタダでお前の為に働くことになったんだぞ!時間も、電話も・・・」







私は彼の消耗し、そして硬化させてきた態度を見て「潮時」というのを考え始めていた・・・


ケリを付けるなら・・・そろそろいい頃合だろう・・・お互いの考え方の違いというのはもう分かったし・・・ここは前言通りに540は諦めよう・・・



こういったことはやり過ぎると全部失うからだ・・・






ただ・・・540というのは何も考えずに諦めるにしては大きすぎる・・・


少なくとも・・・相手に否を悟らせ・・・そして・・・精神的なダメージを与えてやる・・・

俺が失う金額と等価になるように・・・







そしてついに私の持つ交渉術の最大秘奥義

「謝り殺し(あやまりごろし)」

を炸裂させる決意を固めた・・・



この秘奥義の威力は・・・懇切丁寧に相手の否を非難しながらそれを知らなかった私に否があるからそちらは悪くないと色々な例を挙げて相手を責め立てるという性質の悪い奥義である・・・

当然のことながら、並ならぬ技量と、そして高度な演技力が要求される必殺技だ・・・!

この奥義の問題は、使った側の「人間性の悪さ」を際立たせてしまうという、何とも「他人受け」しない秘奥義だが・・・


これをやるしかないだろう・・・





交渉はこれからクライマックスを向かえる・・・


ミスは許されない・・・!!





私はゆっくりと立ち上がり、部屋の中をさも考え事をしながらというように歩き始め、声のトーンを下げて彼の方に時折視線を移して話し始める・・・



「どうやら・・・この件は俺が悪かったようだ・・・お前が俺から全額受領して領収証を渡したとはいえ・・・お前が誰かにお金を渡したらお前の責任がなくなるという摩訶不思議なシステムを・・・俺は知らなかったようだ・・・申し訳ない・・・」



「・・・」



「それに・・・俺は明らかに”世界標準”でお前が仕事をしているから”常識”に沿ってクレームを出せばいいとだけ考えていたが・・・お前の標準は”子供標準”で”大人の仕事”じゃないと言うことも知らなかった・・・それなのに・・・申し訳ない・・・」



「・・・」




「さらに・・・なにか起きたときに・・・お前の能力が明らかに欠如していて・・・対応が出来ないということも・・・まったく想像すらしていなかったんだ・・・俺が知らなかったのが問題だ!謝らせてくれ・・・」



「・・・」



彼は無言になる・・・かなり堪えているようだ・・・





私はこうさらに続ける・・・


「俺は今・・・俺にとって大事だと思っていた540は諦める・・・お前の言ったとおりに”たった”400でいい・・・お前の仕事はまったく意味が無かったが・・・お前の馬鹿さ加減を考えに入れていなかった俺のミスだ・・・謝らせてくれ・・・申し訳ない・・・」


「・・・」




「それに・・・お前が仕事と言うことに対するプライドも・・・責任感も無いことにまったく俺は気付かなかったんだ!お前を信用できる男と思い込んでしまっていたんだ・・・明らかに俺の勘違いだったんだ・・・・申し訳ない・・・」



「・・・」








そういって、彼の机の正面の椅子に座る・・・


彼は無言だ・・・唇を噛み締めている・・・それはそうだ・・・丁寧にここまでコケにされて怒らない人間はいないだろう・・・彼が激昂したら・・・そのときは向こうに併せて激昂するかわざと冷静にするか・・・そのときに考えよう・・・





彼にこう問い合わせる

「答えてくれ!俺は540ドブに捨てて”たった”400で後は泣くといっているんだ・・・どうなんだ・・・」





私のこの一連の台詞に演技力・・・

もし・・・公開されていたのなら・・・・・・

今年の「オスカー」は私で決まりだっただろう・・・

密室の中での戦いだったので、観客は誰もいなかったが・・・







彼は答えを要求する私を遮り時間を少しくれと言う・・・


・・・そして・・・


意外な一言が・・・








「俺の心臓病が・・・今もし何かあったら・・・責任を取ってくれ・・・」





「・・・???」





「・・・!!!」




「へっ???」





なんちゅう飛び道具を持っていやがるんだ・・・コイツは・・・・それは・・・それは・・・予想外の答えだぞ・・・




私はしばし呆気に取られる


その隙に・・・


彼の反撃はしたたかだった・・・


「200でどうだろうか・・・」


脳で反応するより先に口が反応していた・・・


「ノー!」


言って自分の回答にホッとする・・・危ない所だった・・・ついつい「イエス」などと言ってしまっていたら・・・






しかし・・・この状況、あれだけの罵詈雑言を浴びせても・・・損害額を少なくしようと仕掛けてくるとは・・・

中国4000年・・・私の敵う相手ではなかったのだろうか?

ただ、最低の400は手にしてやる・・・





「いいや、200程度じゃだめだ・・・俺は”たった”400貰えれば良いんだ・・・渡してもらおうか・・・」


彼はブツブツと「何で俺のポケットマネーから200も出すんだ」というような事を呟きながらお金を取り出し100元札を4枚それも見ているとわざわざ汚いものを選んで・・・渡してきた・・・



取り合えず400は手にした・・・そして彼から貰った1440元の領収証を渡す。彼は明らかに意気消沈して手に取った領収証を破り捨てて、灰皿に投げ捨てる・・・



しかしまだ終わっていない・・・私は540失ったままだ・・・彼にこう言う・・・

「よし、支払いは終わりだ・・・ただ・・・俺はお前に540払ったままになっていることは分かっているだろう・・・540元の領収証を出してもらおうか・・・まあメモでいいぜ・・・」


彼は私に再度「俺が渡した領収書(さっき破って捨てたもの)は」と聞いてきたぐらいだからかなりの精神的なダメージを受けていたのだろう。私が彼の灰皿から切れ端をつかんで示して気付いたぐらいだったから・・・


そして彼は目の前にあったA4サイズの紙のしたの部分を切り取り、「これでいいか?」と確認した後で「540元パーミッション代として私から受領した」と言う意味の文章を書いてサインして渡してきた

ちなみにこれが結末のレシート
写真





彼はその間じっとうつむいたままだ・・・

しかし・・・私の損害は540、彼の損害は200、明らかに私の損失が上だ・・・





最後に私はこういう


「今回の件は本当に申し訳なかった・・・俺がお前に金を払ってもその契約不履行をお前が取る能力が欠如しているなんていることは・・・俺の常識からいってありえないと思っていたからだ・・・重ねて謝らせてくれ・・・」

「受領した金額は余りにも少ないが・・・お前の限界以上の処理をしてくれたと思う・・・お前を俺は賞賛するぞ・・・」





彼は・・・下を見たまま・・・こう伝えてきた・・・


「俺は・・・お前との・・・契約不履行を謝る・・・申し訳ない・・・」


「・・・」


「・・・」


この一言が・・・もっと前にあれば・・・私もここまでやらなかっただろう・・・人それぞれの性格にもよるだろうが・・・

彼が最初に私に謝って・・・そして彼の出来る最大を最初からしてさえいれば・・・






そして・・・付け足すかのようにボソッともう一言・・・


「誰かが・・・誰かが・・・俺の200を持っていってしまったんだ・・・」





それは彼の敗北宣言だった・・・

誰かというのは、私の事であるのか?それともホーの事なのか??





彼に同情しかけたが・・・


そう言えば私は「540」も失っていた・・・彼より多い額だった・・・


だが・・・心に受けた痛手はどうだったのだろうか・・・??




私は彼にこう返す

「お前はもう謝らなくていい、健康に気をつけてな・・・」

「そして・・・次はきちんと上手くやることを・・・願っているよ・・・」

彼が小さく「サンキュー」と答えた・・・







そして私は部屋を出る。


少し振り返ったとき・・・見えたのはまだ下を向き・・・俯いた彼の姿だった・・・


これが最終決戦の舞台となったCITSのエヌのオフィス




9th day in Tibet(2007.07.17)
(The Last day:最後の日)


昨日、事の顛末の後は・・・私はネットをしたり、今日の敦煌行のチケットやパーミッションを手にしたりしてのんびりと過ごしていた・・・ゴルムドについてからの8日間、肉体的にはそれほどでもないが精神的にはそれなりに消耗してしまっていたからである・・・


そして今日も昼ごろからのんびりと過ごす。取ったのは夜行バスだった・・・


そして1800時、敦煌行の寝台バスに乗り込み、体を横たえて、一連の事の結末をもう一度考えていた・・・


今回の苦闘の勝利者は誰だろうか・・・

お金を単純に計算すると絶対値で私は540、彼は200の損失だが・・・

物価などを考えて相対的に評価すると・・・私にとって540元は9000円の価値だが・・・彼の200元は私の恐らく3万円以上の価値になるのだからその心理的な喪失感は彼のほうが大きいのだろうか・・・?


「試合には負けたが、ゲームには勝った」


というような複雑な心境だ・・・


そしてこの流れで一人「ホー」だけが何も被害を受けていないということも分かっているが・・・


それは私の考えるべきことではないのだろう・・・私の知らない相手だ・・・


少なくとも私は私の失った損害と・・・等価以上の精神的な責任をエヌに取らせたから・・・それで良しとするのが正解なのだろうか・・・??


しかし・・・これだけははっきりと分かっている・・・

失われた540元はもう永遠に返ってこないという事は・・・・






そしてラサに思いを馳せる・・・



チベットの、そしてラサのシンボルとも言える世界遺産のポタラ宮、チベット仏教の聖地ジョカン、ダライラマの離宮があったノルブリンカ・・・そしてチベット仏教ゲルク派最大の寺院デプン寺・・・







そのなによりも




私にとってラサで最も強烈に・・・そして終生忘れ得ない情景を残したのは・・・














キオスクとそこに置いてあった電話機であったことが・・・ 



じゃっじゃ~ん!再度登場!!
ラサで電話を掛けに通ったキオスク!ちなみにバナクショーホテルの正面










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