中央アフリカ共和国
2005.09.30(金)
出発は日曜日、パーミッションが出来ていればすぐにでも市内観光と写真撮影に入れる。
期待を胸に12:00頃、観光省を訪れるとまだ出来ておらず、予定では16:00くらいという事だ。
いきなり肩すかしをくらった格好になるが、時間を無駄に使う訳にはいかない、写真を抜きにして取り敢えずは市の中心部を見て回る事にした。
バンギもフランス式の都市だ、市の中心から放射線状に街が形成されている。その中心にある本屋を訪れると日本の漫画のフランス語版が!タイトルは忘れたがあだち充のコミック、続き物の筈なのに何故か途中の巻が1冊だけ・・・
市の中心をぶらぶらと歩きながら今度はネットカフェを探す、残念ながらサーバーダウンで使用不可、予定を見てみると土・日曜日はお休みだ、中央アフリカでネットをする事は諦めよう。
16:00時、再度観光省を訪れるとまだパーミットは出ていない、結局18:00時までまたされてしまう。
スタッフの一人が私に「彼女が良くやったから君はパーミットが取れたんだ、何か奢ってあげなよ!」等と言ってくる。
もともと2日かかる予定の所(そうなると木曜日に申し込んだら月曜日になる)を無理矢理だからあまり文句は言えないが・・・。
国を代表する観光省がこの体たらくというのはちょっと残念だ。とはいいつつも無料のパーミッション、ジュース代程度のお金を渡してメルシーとお礼を告げる。
そしてここで私は一つのアイデアに取りつかれていた・・・
そう、バンギをツアーで見て回る。という事だ。
街の大きさからいって自分一人でも十分にやりきれる、だがこんなアフリカのど真ん中でオーダーメイドのツアーをとるというのは中々に痛快な出来事だろう。
観光省の知り合いの旅行代理店が電話でこちらの申し出を受けてくれる、料金は40ドル、安くは無いが・・・今の私ならこのくらいは惜しくない。
明日は期待度大である。
2005.10.01(土)
10:00時にホテルに迎えに来るはずの旅行代理店のスタッフは中々現れない。
1時間ぐらい待ってこなかったのでその時モテルに泊まっていた他の宿泊者から携帯を借りて観光省に電話すると代理店はブッチ(要するに勝手にキャンセル)したと・・・
『ふぅ・・・』
それにしてもアフリカはいつもこうだ、たまに金を払って贅沢しようと思っても何故か相手が消えてしまう。
お金がセーブ出来てもそれが良い事だとは限らない。
私がそれなら諦めて自分で周るよというと責任を感じたのか?観光省の人間が「それならスタッフをつけるから観光省まで来てくれ」と提案してきた。
『うーん・・・』
しばしの逡巡の後、私はその意見を呑む事にした。どうせツアーはキャンセルだ。それに観光省の人間自ら外国人旅行者を案内するなんてめったに無い事だろう。
面白そうだ。
私は宿を出て観光省に向かう事にした。
ただ向かうだけではない、今の私はパーミッションを持っている、言わば「スーパーサイヤ人」状態だ。写真に関しては無敵と言っていいだろう。
観光省での待ち合わせ時間まで大分あるのでその経路上のスポットは先に押さえてしまおうではないか。
ホテルを出て大通りに向かう。
そしてまずパチリ
最初のターゲットは右手のガソリンスタンドの前にある独立戦士のモニュメントだ。
近づいてカメラを構える。
「撮るなぁ・・・、捕まるぞぉ~・・・!!」
ガソリンスタンドにたまっていた人々が私がカメラを構える姿を見ると慌てて制止してくる。目は真剣だ。
だが・・・こちらはパーミッション持ちだ。
『ふっふっふっ・・・ザクとは違うのだよ、ザクとは・・・・』
彼らに近づいて行って自慢気にパーミッションを見せる、A4の用紙にびっしりとフランス語で写真許可の内容が書かれている物だ。
私には読めないが・・・彼らの誰かは読めるだろう。
「うーん・・・モニュメントはOKだけどガソリンスタンドは燃料施設だからアウトだねぇ・・・」
『へっ?』
こんなどこにでもあるような・・・そういえばバンギでは一番立派かもしれない”ただのガソリン・スタンド”が撮影禁止って・・・
ちょっと予想外だったが・・・しばらく待ってるとスタンドの店員にもモニュメントをアップならいいよと言われたのでパチリと撮影する。
独立戦士のモニュメント
しょっぱなから思いっきり出足をくじかれた格好になり、「パーミッションの効力」に疑問は拭えないがここで引き下がったらプロフェッショナルの名がすたる。
そのまま引き続き市の中心へ向かう、次なるターゲットは・・・
考える?人。珍しい自分も一緒のショット、現地人が撮ってくれた。
さらに市の中心へ接近し・・・
初日に断られたミッション・カトリックはこのゲートの奥に見えている。
そして市の中心に・・・
近くに警官がいたからパーミッションを見せて「撮っていい?」と聞くとすんなりOKに・・・
これが市の中心のランドアバウト、国旗群の中には日本の国旗もあった。
そして中心から観光案内所へ・・・
途中にあったモニュメント、多分元大統領・・・かな?中途半端にカラフルで威厳が無い・・・
そしてその地点から中心を眺めて・・・
またその付近
出足以外は快調に撮影が続き・・・
そして観光省に到着・・・
観光省付近
『・・・』
『観光省の人間に案内してもらう前に中心部をあらかた撮っちゃった・・・』
だが、約束は約束だ。
それに今まで撮ってきた所は比較的イージーな場所だ、絡まれやすい場所を撮影するときに政府の人間と一緒にいるということは心強い。
観光省に入ってスタッフと出会う、パーミッションを出してくれた女性と若い男のスタッフが、前にも見かけた男だが彼が私を案内してくれるらしい。
早速また市内観光を続けることにした。
記念碑、横には建設中のスタジアム。
『さてこの後どうするか・・・』
私は古い地図を見てあるルートの存在に気付いていた、コロニシュとあるバンギの裏手の丘に上がるルート、ここならバンギの全景が眺められるかもしれない。
彼に声を掛け、案内してもらう事にした。
コロニシュの入口付近
フランス語圏なのに看板はSTOPとある。ちょっと不思議。
なだらかな丘を登っていく。木に覆われたルート、全景というのは中々見えない。
コロニシュ上の景色、市の中心からは方向がずれている。
山道は散歩道の様になっていて歩いていて気分は上々だ。
こんな感じの道を歩く
すると一緒にいた彼が「これってエコ・ツーリズムって言うんだ、知ってるかい?」と聞いてくる。
知っているが・・・こんなアフリカの真ん中で・・・そんな言葉を聞くなんて・・・
思えばつい一年前まではこんな所まで来てしかもエコ・ツーリズムをしている自分なんて想像することすら出来なかった。
そんな自分におかしくなって知らずと笑顔になる・・
さらにコロニシュから眺めた市内
コロニシュを歩き終わってまた街へ戻る。
コロニシュを終わってみた建物。
その近くにあった木、パターンが独特
そしてまた中心部、今度は川沿いだ。
中心部のマーケット
川沿いにある高級ホテル
川の向こうはコンゴ民主共和国(旧ザイール)
そしてまた市内へ、今度はマーケットとモスクを目指す事にする。
市内のホテルにあった地図
公園、中で子供が遊んでいて私を見つけるといきなり「こんにちは~」と言ってきた。聞くと中国人と日本人は完全に見分けられるといっていた。
東洋人=中国人の構図が当たり前のアフリカではビックリする出来事だった。
バンギ最大のマーケットエリアでもあるPK5
そしてバンギ最大のモスク、撮影していると「なんで撮影しているんだ!」と詰問されたがスタッフが説明して事なきを得る。
何かの戦争関係の記念碑(後ろの絵がそれを示していた)と、また別のモスク
これで終わりだ・・・
二人で観光観光省へ戻る。
戻った観光省
催しをやっていた。
これはコーヒー
私は彼と一緒にオフィスに戻る。
午後からは彼と一緒で・・・
バンギを十分に楽しめたと言っていいだろう。
ツアーを取ったもののそれが不自然にキャンセルされ、その代わり政府の、それも観光省の人間と一緒に市内を回ったのだ。
そんな経験は簡単に出来るものではない。
だが・・・
心配しなければいけないこともあった・・・
そう、お金の話である。
”アフリカの常識”、相手はただのパーミッションを取るのに”心付け”を遠回しに請求してくるような輩だ・・・
99%の高確率で請求はしてくるだろう・・・
と、なると幾らかが問題だ。
そしてしばらく様子を見ていると彼はおもむろに私に口を開いてきた・・・
「今日は僕は非番だったんだ・・・それなのに君を案内した、こういう場合はいくらかくれてもいいんじゃないのか・・・?」
『・・・』
『・・・・・』
『どんぴしゃだっ!』
彼らに調整したツアーがキャンセルになったからというのがそもそもの発端だし、それに観光省の人が非番とは言え外国人を案内して金を貰ったら・・・その国の評価は下がるだろう。
だがここは中央アフリカだ。日本基準の判断というものは論外なのだろう。
それに彼の世話になった事も確かだ・・・
こうなったら少しの嫌がらせも兼ねてきっちりと払ってあげよう。
『幾らだい?』
「君の予約していたツアーが40ドル、僕は午後だけだったから・・・その半分の20ドルでどうだい?」
私は表情を変えずにこう答える。
『ドルは無いからセーファーで、10000セーファー出すよ!』
私は軽く答える、正直言ってホテル一泊分のセーファーは痛いが・・・
こういった時の嫌がらせのコツは相手のいい値を素直に払う事、そうすれば相手は「もっとふっかけられたんじゃ?」と疑心暗鬼になるはずだ。
人間心理からいくと「値切ってぎりぎりで払う」とセコイ奴だという感情しか残らないがこういった場合は「もっと多く請求してれば、もっといっぱい得出来たんじゃ?」という方が悔しい場合が多い。
彼の顔を眺めると「びっくり」という表現がぴったりだ、既にこの国の相場を知っている私がこの値段をここまで素直に払うとは思っていなかったが顔に見て取れる。
私は彼にお金を手渡し、
『メルシィ』
有難うと告げ、その場を後にすることにした。
今の気持ちを表現するならば・・・
『ゲームには負けたが試合には勝った!』
という言葉がしっくりくるだろう。
『・・・』
『・・・・・・』
『あっ!やっぱり負け戦か・・・!!』
だが、バンギで経験した観光省スタッフ貸切エコツーリズム、これで中央アフリカ共和国の首都狙撃任務は完了だ。
次はいよいよ中部アフリカ、ラストの国、私を待ち受けるその国家の名はチャドだ・・・