モーリタニア
2006.01.27(金)-28(土)
日は昇り朝が始まる。
そして朝は始まれどこちらは列車待ちなので動きようもない。
昨晩到着したシュムは想像以上の田舎だった。
シュムの街並
一応夕方の18:00時くらいにヌアディブ行の列車が来るらしい。
思えばシンゲッティを早く出れてアタールで順調に乗り継ぎシュムに到着出来ていたなら昨日出発していたものの「最大の速度で移動した結果」のこの待ちなので万策尽き果ててただ待つのみというのが私にできる最大限の努力だった。
夜寝床を提供してくれたレストランで朝喉が渇いたのでティーを頼むと大量に出てくる。望んだ事では無かったが結局それは全員分のティーとなってしまった。
これがそのレストラン、ずっとここで待ちぼうけだった。
しばらく待っていると列車の音が聞こえくる。昨日4駆で一緒だった男に聞くと反対方向に行く列車と言う事だ。
「世界一の長さ」
これを拝みにいこうかと外に出る事にした。
これがその列車・・・
これだと良く分からないが・・・
一体いつまで通過しているのか・・・
まだこんなに残っている。
そしてようやく・・・先頭が見えない・・・
『・・・』
『・・・・・』
『長いっ!』
だからそれがなんなんだと言うのは置いといてもこれほどの長さとは・・・
列車が通り過ぎるとやはりやる事は無い。
少しシュムの街を歩く事にした。
キオスクとその中
そこで買った「クリスタル・コーラ」味は・・・特に日記に何も書いてないので「可も無く不可も無し」だろう・・・
そしてシュム・・・
『・・・』
『・・・・・・』
『想像はしていたがまあこんなもんだろう・・・』
レストランで横たわりながら時が過ぎるのを待つ。
途中今度は線路を見に出る事に・・・
まっすぐな線路・・・
遠くに見える白い建物が駅舎だと思う、結局駅には行ってない。
今回私の乗る「世界一長い列車」
ようするに貨物車である。
客席は後ろの一両だか二両だかについていて料金を払って乗るのだがここでのミソは貨物の上に乗って移動するならタダだと言う事だ。
ヌアディブからズエラト方向の列車は積荷を下して空になっているのでコンテナの中に乗るような感じになり、私がこれから乗るズエラトからヌアディブ行の列車は貨物車に満載された鉄鉱石の上に乗って移動する事になる。
私はエレガントなツーリストだ。タダだからと言って鉄鉱石の上に乗って移動するなんて出来ない。
客車に乗って移動する気満々だったが昨日四駆で一緒だった男が満面の笑みで
「貨車ならタダだよ~!一緒に行こうぜ!!」
と言ったものだからこのプロフェッショナルも信条のエレガントさを押し殺して今回の移動は貨車にするという苦渋の選択を強いられていたのだ。
結局日中の殆どをただ待つだけに費やし、『本当に今日来るのか?』と思い始めレストランで靴を脱いで完全にだらけ切っていた頃、ようやくヌアディブ行の列車が到着。
「急げ!乗り遅れるぞ!」
と周りの声につられるように慌てふためいて靴をはき、荷物を持って列車まで走って行き貨車をよじ登って鉄鉱石の上に辿り着く。
『ふうぅ~』
せっかくくつろいでいたのにもうちょっとゆっくりと乗らせてくれないものか?と思ったが列車の滞在時間は意外に短く、我々が飛び乗ってしばらくしたら出発した。
それも出発は伝え聞いていたように夕方の18:00時頃だ。
結局昨日の夜21:00に到着してから21時間待ち。ほぼ丸一日ただ待っていただけという格好だった。
慌てて乗った鉄鉱石の上、石と言うより鉄粉だった。
前後みたが両方ともどこが端だか良くわからん・・・
出発してすぐに気付いたのは鉄粉が舞い込んで容赦なく顔に吹き付けてくると言うごく当たり前の事だった。
荷物は日本から持ってきた45Lの透明のゴミ袋に入れて養生しているので大丈夫だが、ポンチョを出してそれを体に巻きつけるようにはしていたものの顔や体に浴びる鉄粉を全てふさぐにはちょっと無理があった。
カーブで先頭車両が見えた頃
そして後ろを向いてパチり、ちなみに私は人の多いコンテナを避け私だけのマイ・コンテナをキープしていた。
写真もよろしくない。吹きすさぶ鉄粉から身を守る事が優先事項になり、また防水・防塵使用である物の勿論こんな環境がカメラに良い訳も無いので数枚とって後はポーチにしまう事にした。
それにどうせすぐに夜になる。そうなればカメラを出していた所で使うタイミングも無いだろう。
砂漠の中を鉄鉱石満載の貨物列車の上に乗って移動する。
一見ロマンティックに見えるかもしれないが・・・
実際の所1月の寒さと体全体に容赦なく吹き付ける鉄粉に痛めつけられながらの移動であった。
唯一の救いはこれで体の「鉄分の不足」が解消されることぐらいだろうか・・・
翌朝09:00時、列車はヌアディブに到着。
といっても降りる場所は駅では無いので周りの客が私を「ここだっ!降りろ!」と呼んで彼らと一緒に半ば転がり落ちるように飛び降りたのだ。
ヌアディブということはわかったがここはどこ??
後ろの3両の内、恐らく一番前の車両が客車。
『終わってみると大したことは無い』
この移動もいつもの移動とそう大差はなかった。
私は鉄粉で汚れた顔を拭って・・・
『・・・???』
『なんだ?この黒さは・・・??』
タオルが瞬時に真っ黒になっていた。
『う~む・・・』
私は好奇心を抑えきれず、何か私の顔が映る物を探す事にする。
辺りになかったのでバックが汚れるのは嫌だが・・・結局バッグから鏡を出して自分を見る事した。
するとそこに写っているのは・・・
いままで私が過去の経験で見た中よりも・・・
この一年アフリカで見かけ続けてきた様々な人種よりも・・・
そして「シャネルズよりも真っ黒な私自身の顔が・・・!!」
『こっこれは・・・』
黒人というが実際は黒では無く褐色と言った方がいいだろう。他の人種と比べると黒いと言った程度だ。
だが今鏡の中に写っているのは・・・・
「驚きの黒さ!スーパー・ファイン・ブラック!!」
といっていいほどのまごうとこなき黒人だった・・・
『・・・』
『・・・・・・』
『これって俺???』
だが見間違いではなかった・・・
今の私は「モア・ザン・ブラック」
そう、黒人以上のスーパー黒人である。
そして私はプロフェッショナルとしてこう確信した。
ブラックアフリカ滞在1年以上で・・・
どれだけ皮膚を焼いても黒人以上に黒くなる事が今まで無かったこのデューク・東城が・・・
この世界一長い鉄道一発で完ぺきな黒さを手に入れた。
と・・・
『・・・』
『・・・・・・』
『でも全く嬉しくない』
とも付け加えておこうか・・・