その言葉は私の中にある眠りかけた冒険心を揺り起こし、甘美な誘いをもって語り掛けて来た…
本来の私の気質から考えると、3K(きつい、汚い、危険)を避け、エレガントなヨーロッパツアーを続けていくつもりだったのだが、旅行している以上「世界一」という言葉の響きは「たとえ危険を伴っていても」達成を目指す必要があるだろう。
世界一への道程が「半端なく厳しい」物であるとは十分に承知している、例えば「エベレスト登頂」を挙げてみるとその厳しさの一端は思い知ることが出来よう。健康な人々が高地に向け年月を重ねてトレーニングを繰り返し、それでも全ての者がその位置に到達できる訳ではない。
「世界一…」
その言葉の甘美さとは裏腹にある、この先にある厳しい道中を私は考えていた…
しかしながら、私とてひるんでばかりはいられない。冒険嫌いと言ってはいても、今までの旅行で、「あのマルタに3泊」と言う厳しい経験を積み、ヨーロッパのついでに寄ったアフリカでは「トーゴ横断」、「ガンビア縦断」等、余人では成し得ないような偉業を達成してきた男である。
「世界一…」
「よーし、やってやろうじゃないか…」
私は心の中の葛藤を克服し、世界一への挑戦を始めることにした。
目的地は「ジェリコ(地球の歩き方にはエリコと記されているが現地で発音されることが多いこちらの表音で統一する・尚、ここはパレスチナ自治区)」
当然ながら準備は入念だった。イスラエルの首都、エルサレムについてすぐに「ベツレヘム日帰り」、「ラマーラ日帰り」(両地区はパレスチナ自治区)、そしてエルサレム旧市街観光、郊外観光と緻密な計算の元にトレーニングを重ねていた…
上記のトレーニング…、「ひょっとしてただ観光してただけなのでは」と疑いを持たれた方もいるのかもしれないが、「まあそんなことは置いといて」話を続けていこう。
そしていよいよ決行の日。
それはエルサレムとその近辺の観光も一通り終わったので、もうテルアビブに出発しようと思っていた日の朝だった。
たまたまガイドブックを開いたら
「実はジェリコが世界一の町」
だったと言うことに偶然気づく。
しかも
「日帰りが可能」
らしい。
こうなれば心は一つ、行くしかないだろう。
決して後付してるわけではないが、私のこの時までの状況を鑑みるに、今迄の旅は
「全てこの地を目指して来た」
と言ってもいいだろう…
朝の10時頃にホテルを出て、エルサレム旧市街北のダマスカスゲート近くのバス停からバスに乗り、途中で一度乗り換えてジェリコに到着…、所要は大体1時間30分…
到着と同時に私の中に達成感がこみ上げてくる…
「やった、やったぞ!!世界一の地にこの足をつけたんだ…」
こうしてバスを1回も乗り換えるという信じ難い困難の末に「世界一の地」に到着!
これは私が「プロフェッショナルだからこそ出来た冒険」であろう…
他のアマチュア共等ではこんな”こと”は出来ないだろう…
そして私は今、
「世界一、標高の低い町(-394m)ジェリコ」
その地に歴史的な足跡を刻むこととなった。
今後は
「世界一のプロフェッショナル(?世界一の場所に辿り着いた事のあるプロフェッショナル”の省略)」
として活動を続けていく事だろう…
写真はジェリコにあるケーブルカー乗場、
これに乗って山の中腹に到着してもそこは
海抜以下の地…うーむ…!!