旅・リセット論(ヴァレッタ:マルタ⇒カイロ:エジプト)

 エジプト


  


2006.03.23(木)

 深夜、マルタを離れて次の目的地へとフライトで向かう。

 目指す先はエジプト、またしてもアフリカだ。

 『う~ん、こんなに早く”あの”大陸を目にする事になるとは・・・』


 と、歎息してみた所でこれは予定の行動だ。

 そもそも今回のファースト・ミッションはカイロをスタートして時計回りにアフリカを一周しながら行ける限りの国を訪れる、というのが目的だった。

 そちらの方はソマリア本土とリビアのみを残し、他行ける所は全て行ってきたので当初の目的はほぼ完遂したと言ってもいいだろう。

 では何故わざわざマルタをかましたのか?

 チュニジアからエジプトまで直でフライトを取るよりマルタ経由が安かったということともう一つ、新たな理論を実証する為だった。

 その理論とは何か?

 常に論理的思考に身を固め、観光マシーン、コンピューターツーリストとまで呼ばれた私が編み出したのは「旅・リセット論」という新理論だった。


 これは一体どういう物か?

 考えて見てほしい、人に無関心な日本人の特性から見ればアフリカをダイレクトに周ってチュニジア⇒エジプトと空路を択ってしまうとアフリカから一歩も出ないままエジプトに入国する事になる、そうなればカイロに着いた時周りの私を見る目は「ただのアフリカ旅行者」がアフリカに着いたに過ぎない。

 これがリビアビザが取れなかったからというのはあるがマルタに一度寄港することによってマルタ⇒エジプトラインになりカイロの前はヴァレッタ、即ちヨーロッパからエジプトにやってきたエレガントなツーリストとする事が出来る。

 「マネー・ロンダリング」ならぬ『トラベル・ロンダリング』とでも言えばいいのだろうか?

 不浄な過去のアフリカ旅行をエレガントなマルタ紀行で一度リセットをかける。

 こうしておけば周囲の人間も『ほ~う、ヨーロッパからアフリカなんて大変ですね~!』と、私が過去アフリカを周っていた事なんて微塵も感じる事はないだろう。

 そしてアフリカに不慣れな私に色々と親切な手を差し伸べてくれそのうちひょっとしたら恋なんかに発展しちゃったりなんかしてぇ~・・・


 『ムフフッ!』


 いかんいかん、そうではない、そもそも私は生粋のヨーロッパ型のエレガント・ツーリストなのだ。


 ホームグランドであったマルタでの日々を終えまたしてもアフリカと考えると、流石に1周のけじめとはいいつつ内心忸怩たる思いがある事は否めない。(当時の記事は⇒「エレガント・ヨーロッパ・ツアー(カイロ:エジプト)」)

 だが、私にはまだ次の目的地があり、それはエジプト経由が一番効率的なのだ。

 エジプトに寄るのは必須だが希望では無い。そしてここには大勢の日本人旅行者もいる。それなら彼らに会った時「本来の私の姿」を見せる方法を取るべきだろう。

 その為の『旅・リセット論』なのだ!!

 

 フライトは朝の03:20時にカイロの国際空港に到着、思えば2004年の12月にこの地に降り立った時も深夜だった。

 当時はオン・アライバル(空港到着時)にビザを取った方が安いと言う事を知らず、日本で高い金をだしてエジプトのビザを取っての入国だったが、今回は1年以上というアフリカでの十分な経験があった。

 だが、チュニジアで暇だったのでついついビザを取ってしまい、空港到着時に「あっ!やっぱりこっちの方が安かった・・・」と気付くていたらく。進歩していない事この上ない出足だ。

 この失敗で「ここがアウェー」と言う事が思い知らされる。やっぱり私はヨーロッパ・エレガント・ツーリストが相応しい漢なのだった・・・



 そしてまた当時と同じく朝一番の市内行きのバスを空港で待つ。昔は日本から来た日本人観光客と朝まで待って一緒にカイロまでいったがマルタ発の便に乗っている日本人は私だけ、一人で朝まで明かす事になる。


空港内のターミナルを結ぶエアポートバスに空港にあるエジプトチックなオベリスク・モニュメント
 


始発のバス




 ファースト・ミッションを始めてから一年以上・・・アラビア文字は全く読めるようにはなっていないが数字くらいは何とかなる、タフリール広場に行くバスに乗り市内を目指す。

到着したタフリール広場のバス停



 当時と今と違う物は”経験”の差だ。

 最初に日本から来た時、カイロは日本よりも遅れた雑然とした大都市としか見ていなかったがアフリカでの経験はこのカイロをワン・グレードもツー・グレードも上の都市に見せていた。

 「この程度のアウェーならホームとさほど変わらない」

 そう思える程度には成長はしているようだった。

 でもそんなに嬉しくは無かった・・・


 そして私が向かったのは有名な日本人が数件はいった古ぼけたビルだった。

 次の目的地の情報の無い私には旅の情報を入手する最適の場所だ。

 最上階の有名な安宿は残念ながらフル。一つ階下にあるちょっと高め(でも500円はしない)の宿をとり早速情報ノートのある上の階に上がる。

 宿には行ってそこの人間に挨拶を交わす。

 『ヨーロッパから来たエレガントなツーリストのデュークです、これから中東へ向かおうと思っているのでノートを見せて貰っていいですかぁ。テヘッ!』

 若干の可愛らしさを加えつつ、如何にも初心者といわんばかりの雰囲気を醸し出す。


 中央アフリカ、首都バンギまでの道のりでつちかった女優顔負けの演技力、過去の経験が最大限に生かされる瞬間。

 完璧だ、これで私がヨーロッパ・エレガント・ツーリストである事は疑う余地もないだろう・・・



カイロ市内



 「あれっ?デュークさん??」

 へっ??

 あっ!

 そうだ!

 ここにはアスワンからワディ・ハルファまで一緒に行き、アディスで再会した「ゴッド」と呼ばれた旅行者やソマリランド行を共にし、ナイロビで一緒にグダグダした森田氏(仮名)等も既に居たんだった。


 情報を取りに行くと言う事は彼らと接触する事に他ならない。

 (まあでも直近はヨーロッパからだ・・・彼らも特に気にしないだろう・・・)


 森田氏に軽く挨拶する。

 『あの時は・・・“元ヨーロッパ”の植民地を巡った時には本当にお世話になりました、そしてヨーロッパから来たエレガントなデュークです』


 『・・・』


 『・・・・・・』


 『良しっ、これまた完璧な受け答えだ!!』


 あとはアイコンタクトを・・・


 「あっ、アフリカどうでした~!」


 『あうっ!』


 『さっ最初の質問がまさかそっちとは・・・・!!』

 いや、あの忌まわしい記憶よりも直近のヨーロッパを聞いてくれれば・・・

 「マリの日本人宿であった人がいるでしょう、デュークさんも聞いていたと思うけど彼があまり人の行かない西アフリカの情報ノートを作ってデュークさんの情報も利用しているのでちゃんと名前も書いてあるんですよ!!」


 『あっ!!』


 
カイロの夜
 

 


 『そうか・・・』


 『そんな事も頼まれて情報を送っていたっけ・・・』


 って事は・・・


 「アフリカを一周した人って事でこれからアフリカに行こうとしている間でちょっと有名になってますよ~」


 『・・・・』



 『・・・・・・』


 くそう・・・善意で送った情報を記名で残され、私がヨーロッパ・エレガント・ツーリストである事が疑われる素地を作られてしまっていたとは・・・恩を仇で返されるとはまさにこの事・・・・(注:この時情報ノートを作成した私の知人は明らかに真っ当なやり方でこのノートを作成していました・・・念の為・・・)


 そしてなんてこった・・・。


 明らかな”アウェー”戦の方で有名になっていたとは・・・


 本来は「ヨーロッパ・エレガント・ツーリスト」のはずなのにぃぃぃぃぃ~・・・・



 しかし動物の刷り込みと同じでこういった世界(旅行界)では最初に名が知られた地域の専門家のように思われてしまうのだ。


 『ちっ、折角アフリカの垢を落としてここにたどり着いたのに・・・既に変な名の売れ方がしていたとは・・・・』

 
 そのほかにも過去に知り合っていたゴッド氏にもあったが会話は『アフリカ』ばかり・・・

 彼らの知り合いの他の旅行者からの質問もやはり”アフリカ”ばかりだった・・・・



 『くぅぅぅぅぅ~』


 『ヨーロッパが本職のこのプロフェッショナルに誰もヨーロッパの事を聞いてくれない~・・・・』


 そしてエレガントさにプチ疑惑がついたいま、話しかけてくれる綺麗なレディーも誰もいないぃぃぃぃ~・・・・



 旧友との再会を終え少し落ち着いてから私は最初にこの地に降り立った時に初めて食事した場所に向かう事にした・・・



これがそのレストラン・・・




 そう・・・


 マクドナルド・・・


 当時と同じくフィレオフィッシュのセットを頼み、それを頬張る。

 食は気分で味が変わる、カイロで食べる久しぶりのマックは私の理論の敗北の味がした・・・


 そして私はプロフェッショナルとしてこう思った。


 『トラベル・ロンダリングは失敗だった・・・』


 そして


 『旅はリセットされていなかった』


 と・・・・







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