チェコ

通貨:100CZK(チェコ・コルナ)=約550円
※通貨は当時のレートをイメージし易いように凡その値に変換しています

 

2006.10.18(水)

 『近くにどこか良い所ない?』

 レセのお兄さんに聞いているのは別に如何わしい泡系のお店ではない、観光名所の事だ。

 「骸骨だらけの教会があるよ!

 『へぇ~、そんなのがあるんだ!面白そうだから行ってみるよ。』

 プラハ2日目、初日に詰めて観光しすぎた所為か?起きて準備が出来た頃にはもう10:30時を回っていた。

 『骸骨の教会か・・・』

 イメージが余り湧かない、ただちょっと変わった見物にはなりそうだ。

 東欧一美しい首都プラハでその近郊にちょっとオカルティックな場所がある。綺麗な物とゲテ物を対比して頂くというのも悪くはない。それに”吊り橋効果”というのがある、世界各国の旅行者が集まるこのホステルで上手く美女の連れ合いを見つければ、このお化け屋敷のような教会で私が当社比3倍程度頼もしく見えその後「ウフフっ!」ってな展開もあり得るだろう。

 と、辺りを見回すと・・・

 どうやら誰も居ない・・・

 みんなもう観光に出ているようだった・・・

 『ちょっとのんびりし過ぎた・・・』

 まあ良いだろう、不埒な考えを満たすために旅行している訳ではない。それにソロで観光なんていつもの事だ。たとえそれが髑髏の教会をたった一人で観光するとしてもだ! 取り急ぎ街の観光に連れ合いが探せないことが確定した今、一番大事なのは”観光効率”だ。プラハのような規模の都市では一分一秒が勝負、観光最大速度で可能な限り見るべきだ。そう、そもそも連れ合いなんか探して時間を無駄になんかしている場合ではないのだ!

 私はホステルを後にしてバス停へと向かった

バスはフローレンスバスターミナルという所から出ている

 

 髑髏教会、名は「セドレツ納骨堂」といい、クトナー・ホラという街の中にある。ここは世界遺産にもなっているので”世界遺産キラー(気軽にいけるかルート上にある時だけです)”と呼ばれる私には好都合だった。

クトナー・ホラ

そしてセドレツ納骨堂

2つある髑髏の塊の写真は似ているけど微妙に違う。間違えて結合して残してしまった訳ではない

人骨でシャンデリアもあった

 

 確かに凄い見物だった。ただ、これだけ沢山あるとおどろおどろしいという言葉より、圧巻だの壮観だのと言った言葉が似合うような気がするのは死者に対する冒涜なのだろうか?ただ、時間があれば立ち寄った方が良い場所であることは確かだ。そんな軽い事を考えていた。

 

 だが、この時私はまだ知らなかった・・・

 髑髏を甘く見た報いが後ほど私に襲い掛かってくるという事を・・・

 

 セドレツ納骨堂を後にクトナー・ホラの観光を続ける

クトナー・ホラ市街

聖バルボラ教会

クトナー・ホラ市街

 

 なんだかんだでクトナー・ホラを出てプラハに戻ったころには18時を過ぎていた・・・

 『さて・・・』

 昨日とは違う夜景をとメトロに乗ってTV塔を目指す

 

メトロとテレビ塔

 

 テレビ塔は残念ながら登れなかったがメトロにも乗れたことだしそれはそれでよいのだろう。

 一度ホステルに戻り、夕食はベルという台湾人と一緒にレストランで摂る。

ローストビーフ

 

 こうして出足の悪かった一日であったが、充実した一日を終えた眠りにつくことになった・・・

 

 筈だった・・・

 

 だが、それは「ホラー・ナイト」の始まりだったのだ!

 

 

 『zzz』

 

 『zzzzzz』

 

 (ギシッ、ギシッ、ギシッ)

 

 『ふぅあ~、なんの音だ・・・』

 

 寝ぼけまなこでドミの2段ベッドの下から音のする方向をちらっと見ると、やけに激しく動くベッドがある。微かに喘ぐ声もセット販売中だ。

 

 『?・・・!』

 

 『こんな所で”いたして”やがる・・・』

 

 何をやっているかは判明した、西洋人の2人がイチャイチャ以上メイクラブ未満のアクティビティー中だったのだ。彼らのベッドは私から一番遠い所にある。そして横をみると東洋系の男性が私と同様に寝ている。

 

 『う~ん・・・』

 

 こういった時、注意するなら気付いた瞬間に勢いでするのがベストだったが、寝ぼけていたのでそのタイミングを逃してしまっていた。となると起きていると気付かれるのも気まずいので後はじっと息を潜めて推移を温かく見守るぐらいしか手段はない。

 数分程度同じ様な音響効果が続いた後、舞台は次のステージに進んだようだった。男性の呻くような押し殺した声が聞こえると共に、何か、リズミカルにアイスキャンディーの様な物を口で吸ったり出したりする雑音が混ざり始めていたのだ。

 それにしてもこんな所で本番ではないにせよセクシャルなアクションを起こすなんてどんな神経だか良く分からない。動物的な行為は”秘め事”だから出来るのであって人に見られるかも?というのが快楽につながってるならそれはアブノーマルと言わざるを得ないだろう。

 そんな事を思いながらまんじりともせず時間の経過を待っていると、物語はいつしか佳境に入っていた。しばらく蕎麦をすするような音が規則的に聞こえ、それが少し激しくなったと感じたら「うっ!」という男性が果てた声が耳に入る。

 

 『やれやれ、終わったみたいだな・・・』

 

 これでまた落ち着いて眠れる・・・

 

 と、思った刹那、耳にしたのは男性の

 

 「アイムソーリー

 

 という思いがけない言葉だったのだ!

 

 もちろん私やもう一人寝ていた東洋人に向かって言った訳ではない。イチャイチャしていた女性に対してだ。

 

 『???』

 

 考えてみよう、ドミトリーの一角で、明らかに合意の上、オーラルな方向性でいたして満足して逝った筈なのになぜ謝罪が必要になったのだろうか?

 本当はコンサート本番までやるつもりが、リハーサルだけで終わってしまったとでもいうのだろうか?

 それに対する女性の答えは沈黙だけだった・・・

 

 『・・・・・・』

 

 そして彼らは後始末を終え、またドミは平穏を取り戻す。

 

 そして私も眠りに・・・・

 

 『・・・』

 

 『きっ、気になる~・・・』

 

 私にはどうしても「一体何故アイムソーリーなのか?」、その謎が頭から離れなかった・・・

 そしてその事は私に熟睡を許さず、この後ベッドの上でまんじりともしない夜を明かすこととなったのだ・・・

 

  まるで種の明かされないホラー・ストーリー、敢えて思い当たる節があるとしたら、これはきっと昼間見た髑髏の呪いに違いないだろう・・・

 

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