あらすじ:
舞台国タンザニア
首都ダルエスサラームを出発しマラウィへと向かうデューク東城に、しかし鉄道からバスに乗り換える経由地、地方の町ムベヤでは狡猾なハイエナが口を開けて獲物が罠にかかるのを待ち構えていた...
無事にタンザニアを抜けてマラウィへ到着する事は出来るのか?
どうする!ゴルコサーティーワン!!
舞台マップ
第1章:タザラ
タンザニアには有名な鉄道がある。ダルエスサラームを出発しザンビアの地方の町カビリムボシへと伸びるこの鉄道は、その経路上に国立公園を通過しその際に多くの動物を見れる事からも別名サファリ列車の異名を取り、旅行者には大人気の鉄道であった。現地での通称はタザラ(日本ではタンザン鉄道として知られている)と呼ばれていた。
今回、この私の目的地はマラウィの首都リロングウェにダルエスサラームから出発して行く事であったが、そうなるとこの列車を見逃すわけにはいけない。鉄道はマラウィにこそ延びてはいないものの、ムベヤというタンザニア国内までこの鉄道で行き、そこからバスでマラウィへと向かえば済む事だ。サファリにわざわざ高い料金を払って現地ツアーを取ってまで行く気は無いが移動の途中についでに見れると言うお手軽さは正に「私の今までの旅のスタイルにジャストフィット」したものだろう...
ただ列車に乗っているだけで動物が見れて写真が撮れおまけに有名なタザラ鉄道に乗ったと自慢まで出来る!
そう考えて出国計画を緻密に練り上げる。ダルエスサラームには日本人経営の旅行代理店があり、そこの人が教えてくれた事にはタザラには急行と普通の2種類があり動物を見るなら普通列車が丁度いい時間帯に国立公園を通過するのでこちらがお勧めということだ。チケットを駅で購入する。勿論1等だ。4人寝台のコンパートメント、ベッドの指定は無いものの早く言ってベストポジションを確保すればいいだけだ。
そして私はワクワクしながら出発の日を待つ事となった...
第2章:サファリ最高??
出発は2005年5月16日、ダルエスサラームで宿泊していたYWCAは中央郵便局傍であり、ここを基点に多くのダラダラ(タンザニアの市内ミニバスの呼称)が走っているので利便な位置にあると言えよう。朝の8時にチェックアウトし、ダラダラ乗場へ向かう。タクシーを使う事も頭によぎったがこのダラダラなら200タンザニアシリング(約20円)なのにタクシーなら交渉によるが5000−10000タンザニアシリング(500円から1000円)かかってしまうので、時間に余裕があったこともありダラダラで行く事を決める。
タザラ駅に行くダラダラこそ簡単に掴まえたがここからがいけない、直行ルートでなく市内の色々なところに寄り道しながらだったので、タザラ駅に到着したのは0930、出発は1000だったのでダラダラ車内ではずっとドキマキし続けるというなんともゆとりの無い出発となってしまった。
中々精悍な顔付のタザラ鉄道
駅や鉄道は中国支援で建設。右のレールの枕木にはこんな文字が・・・
まあでも30分前には到着したので未だ時間はある。チケットを見せて自分のコンパートメントを探し、座席を確保する。取り敢えずは2段ベッドの下、進行方向に向かって座れるベストなポジションを手に入れることができた。
「よーし待ってろよ!動物たち!!」
思い通りの席が確保できた事もあいまって気持ちは軽快である。そうこうしてるうちに同じコンパートメントの同乗者がやってくる。私以外の3人はタンザニア人で1等を取るだけあってしっかりとした身なりをしている。タンザニアでは良く長距離バス内での睡眠薬強盗やスリ等が旅行者の問題となっていたが彼らの顔ぶれを見る限りは先ずはこの問題はクリアーだろう。
社内の様子、肝心のコンパートメントは撮り忘れてた。
列車はアフリカのお約束通りに若干は遅れたもののほぼ定刻通りに出発、順調にレールの上を走り始める。私はおもむろに持っている地図を取り出し国立公園の位置を確認する。旅行代理店でも聞いていた事だが午前中は休んで午後1200時から1500時くらいまでの間が尤も動物が見れるポイントを通過する事になるらしい。しかし、それにしてもこのタザラはいい列車だ、それに寝台はアフリカ初である。ベッドこそやや老朽化しているもののジブチで乗った国際列車と比較すると加藤あいと阿藤海ぐらいの開きはあるだろうか?とにかく快適の一言であった。
時間は十分に余裕があったので始めての寝台で毛布やシーツにくるまって車窓の景色を眺めながら自分の今回の選択の正しさとこの先の実りの多い旅を確信していた...
出発後の景色
時計を見て気がつけば今は1500時、余りの心地良さが眠気を誘ったらしい、慌てて窓の外を眺めてから地図を開く。国立公園は通過したのか?動物を見過ごしてしまったらこの列車をわざわざ取った意味が無くなる。恐る恐る周りの人間に問いかけると彼らは笑顔でこう答えてきた。
「おー、いっぱい寝てたな。もう動物は終わっちゃったぜ...」
『え〜!!』
「何見たかなぁ〜、ゼブラだろう、アンテロープ、ガゼルやインパラの群れもいたなぁ〜、一杯見れたよ」
『本当にぃ〜、でもなんで起こしてくれなかったの!!』
「いやぁ、お前さんとっても気持ちよさそうに寝てたからなぁ。起こさない事にしたんだよ」
『・・・あっ!(絶句)』
やっぱりもう駄目だったらしい。
しかし外国人、それもいかにも旅行者用のバッグを持って乗っている私を見て彼らは私が動物を見たがっていると考えてくれなかったんだろうか??
これは親切だったのか?それとも嫌がらせだったのか?
寝たのは私のミスだがそれにしても冷たい・・・
わざわざ急行を諦めて普通列車を選んだのも動物を見たいがためだったのにぃ!!(悔)
しかし彼らは笑顔で「もうメインの所は終わったけど場合によっては象が見れるかも知れないぜ」
と私を励ましてくれた。
「よーし、アフリカで象は未だ見ていない。これに賭けよう!」
私はそう言い聞かせ、自分を慰める他は無くなってしまっていた。
夕食に食べたセットにレストラン車
車窓から・・・
そして日は明け、列車は順調に進む・・・
朝の景色。途中駅
朝食のセット
列車はもういよいよ私の最初の目的地であるムベヤに到着しようとしていた。
結局昨日国立公園の動物を見逃してから私が発見した動物はインパラ2頭のみ...、今回は完璧な計算に基づいて出発日時を調整し動物ポイントも事前に調べていたのに思う通りには事は運ばないものだ。今回の件は私にとっていい教訓となった
「サファリ列車に乗るときは動物ポイントで寝てはいけない」
と...!
次はこんなヘマはしない、しかし問題は「次」とやらはもうおそらく一生来る事が無い事だが...
列車は1000時にムベヤに到着、さあマラウィにでも行きましょうか!!
到着したムベヤ駅
第3章ムベヤという町
この町については若干の説明が必要だろう。ダルエスサラームからザンビア、もしくはマラウィに向かうものにとっては分岐点とも言える町でここから多くの路線バスが走っている。また町の規模こそ大きくないものの各国の人間が貿易などで交差するトレーダータウンといってもいいだろうか。
中々立派なムベヤ駅
またもう一つ有名なのはバス会社がほぼ全部ボッてくるということである。私のような明らかな外国人だけでなく現地人に対しても同様であるらしい。何でもバスのチケット会社には料金表が貼ってあるのだがそれが最初からボリプライスということで知られていた。
これがムベヤのバスターミナル
タンザニアのバス会社は基本的にどこでもボッてくることで旅行者に知れ渡っているのだが、ここはその最高峰、ボリ会社の聖地と言っていい側面も持っていた。
ここから私はバスのチケットを手に入れてマラウィ方面へ向かうのだが、さてここで皆はどう考えるだろうか?
多くの旅行者を見ているとボラレルのは絶対嫌だからといって現地人との喧々諤々の口論をした挙句に現地人料金を出して折り合いをつけていくのが常套手段ではあろうがそこはこの「プロフェショナル」、そんなせこい考え方にはとんと興味が無い、何よりも時間の無駄だし効率悪い事この上ないし気分も悪くなる、バックパッカーなる輩は1円、いや1銭の金の為にも手間も時間も惜しまないのかもしれないが。私は仮にも「プロフェッショナル」を名乗る旅行界唯一の存在である。そんな馬鹿みたいなアマチュアリズムはとんだお笑い種だ。
今回私の考えた作戦はこうである。
『どうせボリ会社だらけなら最初からボラせてやってその代わり目的地までいい席を確保して速攻で抜ける』
ということだ。
もちろん度を越したボリはさせる気も積もりも無い。ちょっと料金を上乗せしてやって当初の目的をスマートに果たす。効率的なことこの上ないしまあボリ金額はサービス料だ。これがプロの思考ってもんだろう...
まあ時間も1000時と少し遅いので今日中にマラウィの首都リロングウェまでは無理にしても北部のカロンガという町までなら十分間に合うしそこで1泊して休養してから次に向かえばリロングウェにも日中に到着出来るので問題は無い。今回の計画はこれで決まりだ。
そんな事を考えながらムベヤ駅を降りると早速人が話しかけてくる。バスの客引きで地名を連呼している。私の目的地カロンガを連呼する客引きはいなかったがまあ何とかなりそうだ。そこで英語の出来る若い男が話しかけてくる。
「どこに行くんだい?」
『カロンガなんだけどバスはあるのかな?直行便だぜ』
「うーん、ちょっと分からないな。まあバスのオフィスにでも来てくれよ、そこで調べるからさ、まあ君が良かったらだぜ」
そう答えて彼はどっかに行ってしまった。
こいつはいい印象だ。客引きなんてのはこっちの行き先を聞いたらたとえそこに自分の会社が行かなくてもどっか別の会社を紹介してマージンを取りたがるのにコイツはその気配すらない。信用しても良さそうだ。
彼と別れてダラダラ乗り場に向かって歩きバス停行きのダラダラを待っているとさっきの若い男が戻って来る。客も捕まえたらしい。彼は私を見て
「バスは見つかったのかい?まだなら君も一緒に来ればいいよ」
といってくれる。
押し付けがましいところが無い所が気に入り、それに当ても無かったので取り合えず彼のオフィスとやらに行ってみる事にする。まあ彼の所が駄目でも他を当たればいいだけだ。
ダラダラにのって5分、こじんまりとしたバスターミナルに到着、彼は私をオフィスに案内してちょっと待つように言ってから少したって戻って来る。
「いやぁ、君の行くカロンガなんだけど朝の便はもう出てるから昼の便になるけどそれでいいかな?」
そいつは悪くない、後は料金だが...
『幾らかな??』
「7500タンザニアシリング(約750円)」
彼は答えてくる。
『ちっ・・・!』
今迄は善良そうに見えていた彼だがここで先ず馬脚を現した。このプロを前にそんなインチキ料金は通用しない。乗り継いでいっても合計4000タンザニアシリングがいいところだというのは既に情報として掴んでいる。まあとはいっても後は軽く交渉して料金を下げて払えばいいだろう。
『おいおい、あんた、俺が外国人だからって7500は高すぎるぜ、まあ6500なら出してやる。お前のサービス代込みだ。その代わり直行便だ。国境で乗換えなんて面倒だしな。まあこれでもお前さんには多い金額だぜ!』
彼は私の顔をみて、溜息混じりにこう答える。
「あんた全部お見通しだな、OK、それでいいよ、ちょっと待っててくれ、チケット出して直行便に乗れるようにしてやるよ」
どうだい?バックパッカーなんて碌でもない輩にはこんなスマートな大人の交渉は出来やしないだろう!!これでこの私が「プロフェッショナル」だって事はよくよく理解できたかな??
首尾よくチケットを入手して外のテーブルで煙草を吸って待っていると彼が笑顔で帰ってくる。
「おーい、カロンガ行が今から出るよ、ガイドも付けるから一緒にタクシーで乗り場に行ってくれ、料金はこっち持ちだから心配しなくていいよ」
まあこれも私の読み通りだ、タクシー代くらいは既にボラせてある。ここにももう帰ってこないしまあ快適にカロンガに行ければ万事オーケーだ。
タクシーに乗って5分ほど、別のバスのターミナルに行く、ガイドは私を案内して目的のバスに乗る。座席も前の方で窮屈さは無い。まあちょっと金を多く出しただけで全ての物事が快適に進んでいた。
バスは中型だったがこんな地方の町にデラックスバスを期待してもそれは無理って物だろう。座席に落ち着いてチケットを見せる。タンザニアも残り後僅かだった。
筈だったが・・・
係が私のチケットを見るなりこう一言
「このチケットは何?」
『へっ...!』
いやいや良く見てよ、『カロンガって書いてあるでしょう』
「このチケットはうちの物じゃないぜ、それにこれはソングウェ行(マラウィとの国境町)行だよ・・・」
『・・・』
『・・・・・・』
『やっやられた・・・!』
幸い私を案内したガイドがまだ残っていて別のスタッフと交渉していた。私はバスを飛び降りてそいつを掴まえて大声で怒鳴る
『おい、てめえぇ、お前のボスは嘘を俺につきやがったな、カロンガには行かないじゃねえか、どういうつりだ!!』
相手の反応は意外だった、彼は私がボスと話している時に確か近くにいた筈なのに「どうしたんだ」と驚いた顔をして私が経過を説明すると大声で私だけでなく周りの乗客に聞こえるように話し始めた。
「そうか!あんたあのボスに騙されたのか!あいつは悪い奴だ!!」
おいおい、そんなフリをしてる場合じゃないだろう、アンタも相棒だろうに...、そんな私の気持ちもお構い無しに尚も演技を続ける、
「あいつは外人のお前を騙した悪い奴だ、俺は奴を許さない。君にはキチンとカロンガにいけるようにこのバスのスタッフに取り計らうからそれで今回は許してくれ・・・」
なかなかにいい演技だ、主演は無理でも助演男優賞ぐらいならあげてもいいと思うくらいだ。
まあことがこうなったらにはカロンガに行くのはどうでもいい、ソングウェまでは2000タンザニアシリング(約200円)だ。200円くらいならチップとして上げても惜しくは無かったが計算すると2000のバスに6500も支払っているのはいいようにやられすぎだろう。お金を取り返す為に対決しなければ行けない...
白々しい“名演技”を続ける彼に冷たくこう言い放つ。
『今からさっきの所に戻るぜ、お前のボスから金は返してもらう。もし返さないなら警察にでも一緒に行くからな』
と。
しかし彼の答えは流石だった!
「分かった、一緒にボスのところに言って君の金を取り戻すのを手伝う!」
こいつもいい芝居だ、全て知った上で私の味方を装ってしてボスに責任を擦り付ける。自分は何も知らなかった善人と言う訳だ。
まあでも仕方ない。ボスに会うまではこいつも一緒だ!!
それにしても・・・
『スマートに効率良く抜けるために多少料金を上乗せして支払う』という初期のプランは台無しだ。最初から全て疑って喧々諤々の口論をして怒りに任せて移動してた方がよっぽどマシだった。
どうだい、バックパッカーならこんなミスなんて出来まい。こういったミスは「プロフェッショナル」な私だからこそ出来たミスなんだぜ、ご理解いただけたかな...(涙)
戻ってきたターミナルの付近
第4章ボスとの対決
名演技を見せた助演男優賞のガイドと一緒にさっきのチケットオフィスに戻る事にする。行きはタクシーだったが帰りはダラダラだ。この段階で既に旅の快適さともお別れしていた。まあ男優は金がタクシーで使ってもう無いと言っていたし料金は向こう持ちだからいいだろう。
私は暴力は嫌いだ。というよりもそもそも「チキン天下一」を自負する私に腕力に訴えるなどという野蛮な選択肢は無かった。しかし今回ばかりはそうも言ってられない。向こうの対応次第ではこちらもどう出るか分からない、一匹の修羅となって戦わなければならないだろう。そう考えるようになるまで腸は煮えくり返っていた。
見た目はのどかだが人間は腐っているムベヤのバスターミナル
バス停に到着してチケットオフィスに飛び込む、いよいよ対決だ!!
『???』
『あれっ??誰もいない・・・』
オフィスはもぬけの殻、ここを出てから30分もかかっていない。
ガイドは私にこう語りかける。
「うちのボスはもう逃げて1−2週間は帰ってこない、良くお客を騙した後は逃げてしまうんだ・・・」
『???』
『お前知ってたら先にそれを言いやがれよ・・・!!』
相変わらずの名アシストだ、俺がタンザニア人ならコイツを間違いなく部下に雇ってもいい。だが残念ながら俺の国籍は違ったものだし、何よりももう一度生まれ変われてもこんな国は願い下げだ。
まあそうは言ってもコイツに絡んでもしょうがない。金はボスが握っている。ここはちょっと考える時間も必要だ。まあ悪態でもついてやろうか?そして彼にこうなったらムベヤに泊り込んで警察に訴えてなおかつ毎日このチケットオフィスの前に来て『ここはチケットオフィスはインチキです』とでも言い続けてやろうか??
ガイドにそんな事を伝えるとガイドも困った顔をする。警察はまずいらしいし営業妨害されるのも嫌みたいだ。しかしボスを悪者にした割には別にこのオフィスを辞めるとは一言も言ってこないのはやはり確信犯の共犯者だろう。
私がバス停に到着して2時間くらい立った頃だろうか?流石にガイドも痺れを切らし始めてこう提案してきた。
「ボスから君の移動費で5000タンザニアシリング預かったんだ。タクシーに1000タンザニアシリング使ったから4000なら君に戻せる。こんな所で待っててもしょうがないからこれでカロンガに行ってくれないか??」
『・・・』
『なんだ、お前金を持ってたのか・・・!!』
『おいっ・・・そういうことははじめに言ってくれよ・・・』
そんな事は最初に言ってくれてればさっきのバス停で取り返して今頃はもう国境に到着していたはずだ。ガイドもやっぱりタンザニアン!ボスと同じ穴のムジナだ。人を騙して金を巻き上げた挙句、それをそのまま懐に入れたまま俺が去っていくのを待つつもりだったのに違いない。俺がしつこくここでボスを待つものだからもうヤバイと思い始めて自分の儲けを諦めたのだろう。
でもまあこれならこれでしょうがない、ボスと対決し一矢報いる事はかなわなかったが幾らか金は返ってくる。もうこれ以上待つの飽きていたので彼の提案を受け入れることにした。そして今度も彼に案内させ、ソングウェ(ボーダー行)のバス停に向かい、そして今度こそこのムベヤを後にする事となった。
しかし・・・このムベヤではいいようにやられてしまった。お金はボラレルだけボラレて物事は全く進展しないばかりか時間の浪費も甚だしい。
どうだい?こんな間の抜けた騙され方は並のバックパッカー程度では決してありえないだろう!!この私が「プロ」を名乗ることの凄さがこれで分かっていただけた事だろう・・・(涙)、しかしこの「プロフェッショナル」の裏をかいてくるとは・・・(涙)
第5章そしてその後
さっそくソングウェ行の中型バスを掴まえて飛び乗る。2台あったが前のウインドーにエクスプレスと書いてある方を選んだ。外見上は中々やりそうなこの中型は実際に走ると逆の意味で凄まじい物であった。出発は1400時、ここから通常1時間で着く距離なのだがこの中型バスは平均時速はおそらく時速10Kmは出ていない、時折チャリに抜かされている程の遅さであった。同乗した現地人すらビックリして口を開けたままになっていた。こうなってくるとこの速度で壊れる事もなく止まらずに走り続けている方が不思議なくらいであった。
道道中の景色
そして世界でも有数の遅さを誇ったエクスプレスバス、このエクスプレスの表示さえなければ...(涙)
ソングウェには1600時に到着、バスから降りると同時に路上両替商が寄ってくる。マラウィ側に正規の両替商がいることを既に友人から聞いていたので断っても一向に離れようとしない。
これがボーダー
「マラウィ側に両替商なんてないぜ」
と、勝手な事を抜かしてくる。
イミグレに入って出国手続きを終え、またマラウィボーダーへ向かう途中にどんどん人が増えてきて最大で10人ぐらいのこの路上両替商に囲まれる事になってしまった。余りにもしつこいので日本語と英語で怒鳴りつけてみたらその中の一人が
「ははーん、ここはお前が初めての土地だからビビッて俺たちと両替しようとしないんだな!」
等と言い出す始末である。考えても見て欲しい。嫌だからどっか行けと言い続ける人間に付きまとい続ける奴が碌な者であった例は無い筈だ。私が真っ直ぐ前に進もうとしても一人追い払うたびに別の人間が私の前に立ち塞がる。怒鳴っても無視しても効果無しだ。こんな奴らを変わり番に追っ払うのは疲れてしまって仕方が無い。流石に追っ払うのももういい加減面倒くさくなって途方に暮れ始めているとタンザニアの国境警備の兵士がやってきて鞭をふるって私の周りの人間をその鞭で叩きながら追い払い、これでようやくマラウィに入国。案の定さっきはないと言われていた正規の両替商はキチンと営業している。その両替率も路上両替商たちの示したそれよりも1割以上は良かった事は言うまでも無い事だろう。
1830時にようやくマラウィに入国、幸運な事にリロングウェ行きの深夜バス、それも大型のキレイなものが待ち構えていてチケットも難なく入手する事が出来た。
2100時にバスは出発、翌朝はリロングウェだ、まあ騙されたり色々あったりしたが当初の計画は結果的にはこれで帳尻が合うだろう。しかしそれにしても・・・
リロングウェ行バス
ムベヤのチケットオフィス、噂通り、いや噂以上の強敵であった。こ旅人を罠にかけるこの熟練した手法はハイエナのように狡猾であったといってもいいだろう・・・
私はこの町の事を忘れない、失った2500タンザニアシリング(約250円)のほろ苦い思い出とともにこの狡猾なハイエナの住むムベヤという町の事を・・・